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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第六部第三章 シスター・ウォーズ ~エピソードⅠ 謎のモノリス~
552/814

第552話 どエルフさんと交渉決裂

 結論から言えば。

 女エルフたちは第二王女との連携交渉に失敗した。


「その女エルフがエリィの義姉である限り――いえ、仲間に居る限り、私は貴方たちと手を取り合うつもりはないわ。白百合女王国にエルフの助力は不要。すっぱりと縁を切ることが、エリィに手を貸す条件よ」


「そんなローラ!! お義姉ねえさまは、私やお母さまを救ってくれた恩人でもあるんですよ!! いくらエルフが嫌いだからって、そんな言いぐさは!!」


「とにかく、これは譲れない交渉条件。エリィ。貴方がそこのエルフにどうやって懐柔されたかは知らないけれど、妹として進言するわ、そんな奴を信用しちゃダメ」


 喧嘩別れ。

 女エルフが目覚めるより早く、交渉は早々に決裂。


 第二王女は第一王女を置いて再び街の人々を助けるべく姿を消した。


 参りましたねとごちる法王にワンコ教授。

 それから女エルフが目を覚まし、事態の結末を知ることになるのは、四半刻の時が経ってからになるのだった。


 街の外れの宿舎。

 そこの一室に部屋を取り、どうしたものかなと顔を見合わせる男騎士パーティ。

 その時、どんと女エルフが床を叩いた。


「なんなのよ、あのエルフに対する敵愾心は。エルフに家でも燃やされたの。カミーラといい、どうして白百合女王国の奴らは、エルフに対して不寛容なのよ」


 理不尽な仕打ちに怒りを覚えるのは当然。

 女エルフの嘆きは、しごくまっとう、当然と言っていいものだった。


 いきなり顔を合わせるなり唾を吐きかけられる。

 あげく、自分の存在を理由に協力を拒まれたのだから仕方ない。

 更に、かつて彼女たちの母親に受けた仕打ちもまた彼女の心を逆なでする。


 エルフ差別主義者だった、エリィの母――女傑カミーラ。

 しかし、そうなるに至った理由は、彼女の伴侶である先王シャルルに遡る。

 彼のエルフへの懸想ともとれる行動が、結果としてカミーラの心を歪め、ペペロペの下着という悪魔の道具へと走らせた。


 しかし、悲しい理由はあったとはいえ――エルフという種族としてはとんだとばっちり、いい迷惑なことには変わりない。


 血の繋がりはない。

 さらに反目もしていた。

 だというのに、どうしてこうもエルフを敵視するのか。

 第一王女は一転して、エルフに対して寛容だというのに。


「ごめんなさいお義姉ねえさま。あらかじめちゃんと説明しておくべきでした」


「血は繋がってないのになんなのアレは。本当は仲がいいんじゃないの、カミーラとローラって。少なくとも、エルフに対する憎しみで手を取り合えるでしょ」


「いや、それはその、なんとも言えないといいますか――」


 もごもごと口ごもる第一王女。

 その歯切れの悪い返しに、なにかあるなと察するのは、ワンコ教授たち。

 唯一、エルフ迫害の憂き目にあって、憤慨する女エルフを除いて、誰もが第一王女のその態度に何かを察した。


 その察しが、第一王女への無言の説明要求に繋がる。

 観念するように目を閉じた彼女は、そのですねぇと第二王女がエルフを嫌う理由について語り始めた。


「もともと、ローラはエルフについてはそこまで非寛容ではなかったんです。むしろ、私と同じで、エルフに好意的だったというか。幼い頃は一緒に、赤毛のエルフの伝承を読んだりして過ごしていたんです」


「だぞ」


「それがまた、どうしてこんなことに」


「……それは。お母さまが露骨にエルフを忌避するようになったのと時を同じくしていまして」


「なにそれ!! またあのオババのせいだっていうの!!」


 女エルフがここぞとばかりに叫ぶ。

 何から何まで女帝の勘違いから始まった白百合女王国のエルフ排斥の流れ。

 その流れが未だに続くことに、そんな叫びをあげたくなるのも無理もない。


 だが。


「違うんです!! むしろ、お母さまのエルフ嫌いに、ローラは反対していたんです!! それが原因でお母さまと仲たがいしたと言ってもよくて!!」


「はぁ? ちょっと待ってよ。なら、どうして、エルフを嫌いになるのよ」


「だから、その。お母さまと不仲になった原因として、エルフを嫌っているというか。あとその、私があまりにエルフの話をし過ぎたせいもあるというか」


「……それって」


「……だぞ」


「……うわぁ、あるのね、そういう話って」


「とにかく、ある日を境にしてぱったりと、エルフを憎むようになったんですよ」


 なんだそれはと女エルフたちが閉口する。

 同時に、第二王女がここまで早く、白百合女王国の平和のために立ち上がった理由についても思い至った。


 とどのつまり第二王女は。


「反抗期の子供みたいな人なんですね」


「だぞ。なかなか分かりやすい娘なんだぞ」


「私もさんざん言われてきた口だけれど、これはなんていうか、そう言うより他に例えようがないわね」


 ツンデレ乙。

 女エルフたちの頭に、第二王女について同じ感想が過るのだった。

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