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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第一部第四章 狂気のエルフ専門店
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第51話 どエルフさんと抱き枕

「はい、それじゃ、灯り消すわよ」

「分かったんだぞ」

「あぁ、問題ない」


 壁に据えつけられている魔法ランプ。

 かぶさっているカバーの縁をすっと撫でて、部屋の灯りを女エルフが消す。


 月明かりが差し込んでくる出窓。

 そこからの光を頼りにワンコ教授が待つベットへと向かうと、女エルフは布団の中へともぐりこんだ。


「こうやって人と一緒に寝るのは久しぶりだぞ」

「いい歳した大人がちょっと恥ずかしいわね」


 はっ、と、暗闇の中で、何かに気づいた顔をしたワンコ教授。


「こ、これは違うんだぞ!! ベッドがないから仕方なくなんだぞ!!」


 なんて、今更な言い訳をする。

 はいはい仕方なくだね、と、言いながら女エルフはワンコ教授に手を回した。

 むっ、と、反射的に抵抗はしたが、それをワンコ教授は受け止める。


 布団の中、二人は母と娘のように、抱き合うようにして目を閉じた。


「むぅ、なんだか本当に子供になったみたいで、恥ずかしいんだぞ」

「あははは、なに言っちゃってるの」

「もっとも、僕のお母様はモーラより柔らかかったけど」

「悪うござんしたね、包容力がなくって」


 もそもそと布団の中で丸くなる狗族の娘。

 人に抱かれて眠ることで安心したのだろうか、少し女エルフが目を離した隙に、彼女はすっかりと寝息を立てていた。


 すよすより。

 可愛らしい寝息が女エルフの鼻先をくすぐる。


 たまらないわね、と、軽く犬耳をつついてあげると、ワンコ教授はくすぐったそうに顔をあからめたのだった。


「だ、駄目だわ。可愛すぎる。ぎゅってしたい」


 と、その時、空気が凍る音を確かに聞いた。

 暗闇の中、隣のベッドに目を凝らすと、そこには。


 暗闇の中に瞳を輝かせて、そして、戦慄の表情を浮べた、男戦士の顔があった。


「モーラさん、どうしたんだ、そんな邪悪な微笑を浮べて――。はっ、まさか、君は男も女も両方いける、バイエルフだったのか!?」


 女エルフが黙る。

 沈黙する。


 いつもだったら、違うに決まっているでしょう、と、すぐにツッコミを返す彼女であったが、今日はただただ黙って男戦士の顔を眺めていた。


 しばらくして。


「ぐぅ」


 目を見開いた男戦士の鼻から、ちょうちんが出てきた。


「寝言か――」


 男戦士はたびたび、夢の中でも女エルフをどエルフ扱いすることがある。

 最初はそのたびにツッコミを入れていたかのじょであったが、流石にもう慣れてしまったのだった。


「あぁ、そんな小さい子までいけるなんて。君は、この世のすべてのエロを識る、バイエルフローリだというのか!!」

「勝手にいってなさいよ、もう」


 そういって、宣言どおり女エルフは腕の中のワンコ教授を抱きとめたのだった。


「あぁん、やわっこい、もふい、幸せ――」

「ううん、お母様、くすぐったいんだぞぉ」

「流石だなどエルフさん、さすがだ」


 かくして冒険者三人の夜は更けていくのだった。

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