第5話 どエルフさんと葉っぱ
「ぐわぁあああっ!!」
「ティト!? このっ、大サソリ、火炎魔法を喰らえ!!」
ぎぃ、と、呻いて倒れる大サソリ。
しかしその尻尾は深く男戦士の脇腹に突き刺さっている。
その場に仰向けに倒れた男戦士に、しっかりしてと、エルフの娘は歩み寄った。
「ティト!! ティト!! しっかりして、気を強く持つのよ!!」
「だ、大丈夫だ、モーラさん。こんなのかすり傷だ」
「こんな時までそんなボケいいから。ちょっと待っていて」
もそり、と、エルフは自分の胸倉に手を入れる。
そうして彼女は服の内側から一枚の葉っぱを取り出した。
毒消し草である。
すぐにそれをエルフの娘は口に含むと、噛み砕き自分の唾液と混ぜ合わせる。
ぺっと吐き出したそれを左手で受け止めると、彼女は男戦士の腹に刺さった、大サソリの尾に手をかけた。
「抜くわよ、ティト」
「あ、あぁ――いや、ちょっと待った!!」
「なに、こんなときに!? 早くしないと全身に毒が回って」
「エルフ族は、下着の代わりに葉っぱをつけて暮らしていると、昔聞いたことがある。それは本当なのか」
「こんなときに何言ってんの!? 怒るわよ!!」
もう既に怒髪天をつく勢いで怒っているが、エルフ娘は青い顔した戦士に言う。
すると、負けじと戦士が声を荒げた。
「大事な話だ!! だって、モーラさん、もしそうなら、君は今、ノーブラ!!」
「そんなの最初からつけてないわよ!! 貧乳なめんな!!」
なんだって、と、ショック死しそうな顔をする男戦士。
小さい小さいとは思っていたが、まさか、人間年齢で三十路を越えたエルフが、ノーブラだとは。
「葉っぱどころか隠す文化さえないとは。流石だなどエルフさん、さすがだ」
「しょーもないこと言ってないで、ほら、早く」
「いや、待て、ということはだ。つまり、それはパンティという可能性も。パンティを口で含んで咀嚼するって、それはちょっと――流石に性癖が特殊す」
「アンタ、ホント、死にたいの!?」