第465話 殺人メイドと大剣使い+α
メイド殺法。
そう、メイド殺法である。
古来、メイドとは高貴な身分に仕える身の女性のことである。しかしながら勘違いしてはいけない。彼女たちは奴隷女の系譜を連綿と受け継ぐ者でもなければ、決して雇い主との性的な関係の暗喩ではない。
そう、メイドとはご職業なのである。
社会に出て働く女性が選ぶ選択肢の一つであり、決して色物稼業ではない。まして風営法に取り締まられるようなものでも絶対にない。
そもそも彼らは高給取りで、本物の金持ちにそこそこの御給金を貰い、部屋の掃除から洗濯・料理に育児などなどを執り行う、家事全般のスペシャリストなのだ。
そして時にはメイド内で仕事を分担し、効率的に家事を行う。
職業的家事集団なのである。
そう、主婦が家事のプロと思われがちだがそれは誤解。
本当の家事のプロとは――古来メイドなのである。
更には、メイドの中には高貴なる身分の者が行儀見習いで、縁戚にあたる家にメイドとして厄介になるというものもある。
その辺り、メイドを作中で出す際には、よくよく吟味しなければならない。
それはもう、世に溢れかえっているメイドモノを超えるためには、絶対に避けて通ることもできなければ、押さえておかなければならない大切なツボであった。
アキバでにゃんにゃん言っているのが、メイドではないのだ。
あれはアンミ〇――女給の文化なのだ。
「きゃるーん!! メイド殺法、オムレツ爆散の術!! ぴぴるぽぴるぷ、チキンライスになっちゃえー!!」
「ぐっ、ぐわぁーっ!!」
しかし、この作中ででてくるキサラはこの通りである。
アンミ〇――秋葉系のメイドである。
森〇風ではない、アキバ系のメイドである。
更に言わせて貰おう。
きゃるーんとか言っている時点で、お察しであるが――。
キャン〇ィソフトである。
カスタムメイ〇、きゃんきゃん〇ニー、Piaキャ〇ットへようこそである。
なんと恐ろしいことである。このご時世にPC88、まさかのPC98ネタである。駿河屋で投げ売りされている奴である。ギリギリWindowsに移植されているが、楽しめるか微妙な感じのネタの奴である。
そんな時代という名の暴力を振りかざし、戦場を駆け巡る殺人メイド。
暗い瞳をこちらに向けて迫ってくる彼女に、中央連邦大陸共和国の騎士たちは戦慄した。なぜこんなメイドがいるのか、なぜメイドがこんなに強いのか、なぜメイド一人を止めることができないのか。
なぜか。
答えは自明の理。
「ふふっ!! 全ての不条理に鉄槌を!! キサラがこの狂いに狂った世界観に、メイド仕置きをかましてやるゾ!!」
そう、近年のメイド文化のぶっ壊れ感である。
メイド=強キャラという、メイド文化のぶっ壊れ感が、彼女に謎のぱうわぁーを与えていたのである。
はたしてそんなメイド文化のぶっ壊れが、誰の手によって引き起こされかは定かではない。やはりブラ〇ラ、もしかして月〇、まさかの花〇京、もしくはタマモ〇ャット。なんにしても、もはや、メイドはメイドにしてメイドにあらず。
メイドが出て来たら強敵と思え。
そんな感じで、世間のイメージが固まってしまったのが悪かった。
故にこの殺人メイドのキサラは強キャラであった。
まごうことなき、本作中でも屈指の実力を持つぶっ壊れチートキャラであった。
だいたいはたきで叩いて、相手の内臓が飛び散る辺りから、その辺りはお察しの実力であった。そして、そんなメイド殺法の相手を雑兵ができる訳がなかった。
一点突破。
陣中を一人駆け抜けていく殺人メイド。
たった一人のふざけた脳みそお花畑女を、止めることさえできない情けない中央大陸連邦共和国騎士団。
悔しさに歯を噛み締める彼らの頭上に。
「にょほほほ!! メイド!! 殺人メイドとはこれまた古めかしい!! まだそのような物がこの世に残っていたとは、四半世紀の名残よのう!!」
「うぬぅっ!! 何奴!!」
殺人メイドキサラの顔が一瞬濃い劇画調になる。
まるでそれが彼女の本性とばかりにである。
そんな小ネタは置いといて。
とにかく、その声は突然に戦場の空から現れた。
そう、彼女のトレードマークである、高笑いと共に。
くるり宙を舞う小さな体。振り乱したるは金髪の髪。幼い顔に幼い胸。いかにものじゃロリここに見参。そう、彼女こそはハンスの相棒にして、類まれなる詐術と人望を持ち合わせた稀代の毒婦。
「にょほほほっ!! 大法力のヤミ!! ここに見参じゃ!! 殺人メイド、これ以上お主の好きにはさせぬぞ!!」
「はわわ、見るからに児ポ法にひっかかりそうな絵柄のお嬢ちゃん!! 迷惑だから、業界の安心安全健全化のために、キサラが排除させていただきます!!」
「ふっ、やれるものならばやってみるのじゃ!! 妾の大法力舐めるでない――」
と、そんな意気込む金髪少女を、脇に退けて前に出る影。
巨大な剣を背中に背負い、じろりと殺人メイドを睨みつけたのは、緑のマントをはためかせた巨躯の男。
そいつは、そう。
驚くほどに緑だった。
大剣使い、ここに見参。
真打登場である。
「どいていろヤミ。こいつはお前のペテンでどうにかできる相手じゃない」
「のじゃ!! ペテンではないのじゃ!! 失礼な奴じゃのう、ハンス!!」
「いいから。お前に何かあったら寝覚めが悪い」
そう言って身をかがめて背中の大剣を抜き放つ。煌めく白刃と共に、気迫の吐息を吐き出して大剣使いは、ちぐはぐな関係のパートナーの前に盾のように立った。
少し、嬉しそうに顔を歪める金髪少女。
そんな姿を鼻で笑う大剣使い。
「あらあら、そんな大きなお友達をかどわかして。いけないんですよ、このゲームに出てくるキャラクターは18歳以上ですって、いくら書いても、許されないものがこの世の中にはあるんですから。ノーロリータ、ドントロリータ、アイキャントロリータ、イエスメイド」
「……黙れ!! 俺は、ショタ、だぁっ!!」
気合一閃。
大剣使いの太刀が殺人メイドに躍りかかった。
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