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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第五部第七章 魔法少女ウワキツモーラ ツライ!!
452/814

第452話 どエルフさんとガッ〇崎しげる

「勝負は一本勝負。前と同じく無制限バーリートゥード魔法少女勝負とする。打撃、寝技、投げ、魔法、なんでもアリ。命を燃やして全力全開、ハイメ〇粒子砲を撃ち合って戦ってください!!」


「分かったわ!!」


「腕が鳴るわね!!」


 レフリーに扮した魔法少女リリィ。

 彼女の前でルール説明を受けた、アラスリエルフと異世界漂流者ドリフターの少女は、睨み合うと対角線上のコーナーに分かれた。

 コーナーに待っているのはセコンドの男戦士。彼に頷くと、女エルフは一度大きく深呼吸したのだった。


 対角線上の向こう側――少女サイドにはセコンドはいない。

 それはそうだろう。彼女はこの世界に迷い込んだ異世界漂流者ドリフターなのだから。リングの上の孤独な戦いに、どういう心持で挑もうとしているのか。

 優しい女エルフは、これから戦いだというのに、そんなことに思いを馳せた。


 しかし――。


「……案外、楽しんでいるのかもしれない」


 自分の視線に不敵な笑みを返す異世界漂流者ドリフターの少女に戦慄する。

 かつて街で見せたあの暴力的な雰囲気を感じさせて、彼女は不敵に女エルフを眺めて来るのだった。


 さて――。


「いよいよ魔法少女勝負始まりましたねケティさん」


「だぞ!! 今回も熱い戦いに期待なんだぞ!!」


「モーラさんは今回のコスチュームはどうするつもりなんですかね。前回と同じように安全安心ふりふりタイプを選ぶ感じでしょうか」


「だぞ、それが固いと思うんだぞ。というか、そもそも、デリケートタイプなんて、防御力の期待できな装備をする意味が分からないんだぞ」


「けど、視覚的な攻撃力は――まぁ、それはケティさんに言っても分かりませんか」


「だぞ?」


「お姉さま!! エリィは!! エリィはたとえお姉さまがアラスリ貧乳でも、デリケートタイプを選ぶのはアリだと思います!! むしろ、そういうのを無理して着ている感じがマニアにバカ受けしそうで――いいと思います!!」


 解説席でやんややんやと女修道士シスターたちが騒ぐ中、女エルフが目の前に出された魔法のコンソールを叩く。指先がはじいたのはやはり前回と同じ、安心安全ふりふりタイプであった。


 すぐさま彼女を光が取り巻く。一瞬にして今着ているローブが分解されたかと思えば、次の瞬間には脛まで隠すスカートに、黒いセーラー、そして鉄仮面という、前回と同じ衣装に彼女はメイクアップしていた。


 エルフ鉄仮面。


「お前ら、許さんぜよ!!」


 スケベエ刑事こと、少女鉄仮面は、そのトレードマークである鉄仮面をキャストオフすると、何故持っているのかよく分からないヨーヨーを構えてキメた。

 何をどう許さないのかは分からないが、とりあえず、すごい気迫であることは、誰の目にも明らかだった。


 対して、異世界漂流者ドリフターの少女。

 彼女もまた目の前に表示された魔法コンソールをタップして、魔法少女勝負用のコスチュームを選択した。


 しかし――。


 明らかに彼女が押したのは、女エルフたちが予想したモノと違っていた。


 再構築される服は魔法少女とは程遠いモノ――。

 黒い艶やかなセンターフックのレザードレスに、膝丈まであるこれまた漆黒のブーツ。そしてファーが付いたロングコート。目深に被ったフードの下からは、獣のような猛々しい目が光っている。


 違う、違う、何かが違う。

 魔法少女にしても異質。

 安全安心フリフリタイプにしても異質。

 デリケートタイプにしても異質。


 その、明らかに魔法少女の枠から外れた感じのコスチュームを前にして、女エルフはもちろん解説席のワンコ教授たちも息をのんだ。

 一人――魔法少女勝負の手練れである、生粋の魔法少女だけが、目を見開いて叫んでいた。


「ば、馬鹿な!! 復讐者アベンジャーだと!!」


復讐者アベンジャー!?」


「だぞ!? なんなんだぞ、その厨二病っぽい響きの呼び方は!!」


 食いつく女エルフとワンコ教授。

 青ざめた顔で、長らく魔法少女勝負にその身を捧げてきた魔法少女リリィは、ごくりと喉を鳴らして、女エルフに向かって告げた。


復讐者アヴェンジャー。運命に翻弄された魔法少女がその彷徨の果てにたどり着いた無我の境地。すべての魔法少女に仇成すもの。すべての魔法少女に抗うもの。魔法少女の運命を、魔法少女の身でありながら否定し、円環の理に逆らう焔の如き修羅の魔法少女――それが、特殊魔法少女クラス復讐者アヴェンジャー!!」


「そう、私こそ、魔法少女の運命に抗う存在!! 反逆の魔法少女!! そして!! 私がこれをキャストオフすることで――!!」


「なにぃっ!? まさか!? こっちも仕込んでいたというのか――!!」


 はちきれる、レザードレスにファー付きのコート。舞い散る布の中から現れたのは、ピッチピッチの白い肌に、燃えるの炎のような赤い水着。さらに、いつの間にか脱色された白い髪、そして、飢えた狼のような激しい瞳。


 レザーブーツを踏み鳴らして、リングに立った異世界漂流者ドリフターの少女は、すっかり変わり果てたその姿で、背中に黒い炎を上げて高笑いを上げた。


「残念だったわね!! こっちも魔法少女勝負に向けて、万全を期して用意させてもらったわ!! 復讐者アヴェンジャーイベント限定グラ(水着)により強化された今の私は――すべてを破壊し、食らいつくす、狂戦士バーサーカー!!」


狂戦士バーサーカー!!」


狂戦士ベルセルク!!」


狂戦士(ガッ〇崎しげる)!!」


 男戦士たちパーティが驚愕する。

 そんな中、さぁ、始めましょう魔法少女勝負をと、異世界漂流者の少女は、不敵に笑う。


 その背中で、黒炎が龍のように踊っていた。

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