第4話 どエルフさんと烏賊
海岸沿いの洞窟を探索中、イカ型モンスターと遭遇した戦士とエルフ娘。
「なにあの白くてヌルヌルした変な生き物」
「ばけものイカだ。海のイカが巨大化したモンスターで、触手で攻撃してくる」
「イカ? 触手? なにそれ?」
森育ちのエルフ娘は、イカに関する知識がない。
とにかく、あのヌラヌラしたのに、気をつけろ、と、戦士は言うと、すぐにイカ型モンスターに切りかかった。
火炎魔法を繰り出してイカモンスターを焼くエルフ。
と、その背後に、物陰からイカモンスターが忍び寄る。
「ひゃぁん!!」
「モーラさん!?」
「いやぁ、なにこれ、ヌルヌルしたのが絡みついて、身動きが――」
イカモンスターの触手が、エルフの身体を羽交い締めにする。
哀れエルフ、このまま、触手の餌食になるか、と、思ったその時だ。
「あ、痛!! イタッ!! ちょっ、イタタタ!!」
「なにこれ、凄いこれ肌に吸い付いて!! 痛い痛い!!」
「ちぎれる、ちぎれるから、やめてちょっと!! アダーッ!!」
エルフ娘が叫んだのは、陵辱に悶える乙女の悲鳴ではなかった。
生きの良いイカに吸い付かれた、釣り人、あるいは、料理人の、面白おかしいコメントであった。
「ティト、はやく、取って取って、これ、取って!!」
「バカ!! モーラさん、バカぁっ!!」
「うぇえぇ!?」
「触手ネチョ展開で、どうしてそんな台詞が出てくるの!! いつものどエルフさん魂は、いったいどこにおいてきたの!!」
「そんなもの最初から持ってないわよ――」
『#&!@*?##*!!!*@%$!??』
「うわ、なんか、モンスターが叫んでる」
「モーラさんの反応がまるでなってないから、ばけものイカまで怒ってるんだ」
「怒ってる?」
「こいつらは、女冒険者の悶える表情が、三度の飯より大好きだというのに――いったいどうしてくれるんだい、この、半端どエルフさん!!」
「いや、どうもしないわよ」
「というか、早く取って、ほんと痛いから。はやく!!」