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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第一部第三章 獣人娘と砂漠の遺跡
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第34話 どエルフさんと蜃気楼

「砂漠の中を移動する魔法遺跡ねぇ」

「月の暦に従って動く流動砂に乗って移動してるんだぞ。長らく噂だと思われていたんだけれど、つい数年前、僕がフィールドワークでその存在を確認したんだぞ」

「地味にすごいんですね、このワンちゃん」


 えらいえらいと、女修道士シスターが獣人娘の頭を撫でる。

 子ども扱いするんじゃないぞと、それを振り払うと、彼女は白衣の袖をまくって腕を組んだ。


 ワンコ教授との出会いから一晩あけて。

 再び砂漠へと戻ってきた男戦士一行は、件の遺跡を知っているワンコ教授の案内で、その中ほどへと進んでいた。


 ランドマークの人面に見える大岩を前にして、四人は立ち尽くす。


 見えたぞ、と、犬教授が弾んだ声をあげると、吹き荒れる砂の中にうっすらと、土色をした街の姿が現れた。

 蜃気楼ではない。その証拠に、じわりじわりとこちらに近づいてきているそれは、しっかりとした輪郭を伴っていた。


 漂流古代都市ロラン。

 それは男戦士たちの前に立つ、たれ耳獣人娘がつけた、その都市の名であった。


「本当に現れたわ」

「正直、砂漠を流浪する魔法都市なんて、話半分なところもあったんだが」

「どうだ、僕が説明したとおりだっただろう。ふふん」


 自慢げに胸を張る犬娘。

 悲しいかな、その胸がエルフ娘よりマシなくらいしかないのが、なんとも哀れである。


「とすると、学園の教授って話も本当なのね」

「信じていなかったのか!? 酷いぞ!! この容姿から溢れ出てくる僕の知性が分からないのか!?」

「まぁまぁ、落ち着いてください、ケティちゃんさん」

「ちゃんをつけるな!! まったくお前ら、本当に礼儀をしらない奴らだな!!」


 また狗族の娘の頭を撫でる女修道士。

 今度は女エルフまでそれに混じっている。

 うがぁとそれを両手で振り払うと、狗族の娘は牙を剥いて二人をにらんだ。


 さて、そんな感じで獣人たちと、女たちが戯れる中、ふと、男戦士が難しい顔をした。


 どうせまたろくでもないことを考えているんだろうな。

 とは、女エルフ。


「移動する都市か。古代人も考えたものだな」

「蛮族の侵入を防ぐにはこの上ない仕掛けよね。一つどころにとどまらず、その時砂漠のどこにあるのか分からないから攻めようがない」


「ないようで、じつはある、しかしながら限りなくない。ふっ、まるで誰かのことのようだな」

「おっと、誰のことかな?」

「モーラさん、君のその蜃気楼のようなそれも、敵の目を欺くためなのかい?」

「蜃気楼じゃないから。ちゃんとあるから」


 どこのことかって。

 言わせんなよ、恥ずかしい。(主にどエルフさんが)

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