第30話 どエルフさんと召喚獣
【前回のあらすじ】
砂漠を抜けたところにあった峡谷で、謎の声に足を止められた男戦士と女エルフの一行。
「朝は三本足、昼は二本足、夜は四本足の動物とはなんだ」
という問いに、パーティーで一番アダルトな女修道士が返した答えは愛に飢えた豚野郎――もとい人間であった。
はたして女修道士の導き出した答えはあっているのか。
静寂を切り裂いて、今、姿なき者の声が谷に響く。
◇ ◇ ◇ ◇
「人間ではないわ!! 馬鹿もの!!」
「ほら違うじゃない、コーネリア」
「なんだ違うのか。そうだとばっかり思ったんだが」
おかしいですね、と、首を傾げるコーネリア。
そんな彼女に忍び寄る陰。
それは峡谷にできた割れ目から、すっと蜃気楼のように伸びてきた――赤い色をした二本足に立つ獣。
その眼、その腕、その足は、レザーのマスクによって戒められている。
口には銀色をした玉が咥えられていた。
「オアァウ・オォウ・オオオウ・モオオオウウァウゥアアア!!!」
「なんか出てきたぁっ!?」
「火の精霊王だって!? なるほど、そう名乗るだけあって、なんていうまがまがしい姿なんだ!!」
まがまがしいというか、なんというか。
言葉と目のやり場に困るエルフ娘。
そんな彼女と男戦士をよそに、イフゥ・リートは、女修道士へと近づいた。
「アアォウ・オォウァウ・ウモボウオ」
「いえそんな、たまたまですよ」
「ウウモォ・オアウモアアアアアウ!!」
あら、いいんですか、と、女修道士。
精霊王の加護を受けることなど、そうそうできるものではない。
受けない手はない――のだが。
「やめておいた方がいいんじゃない、そんなの」
「なにを言っているんだモーラさん。相手は精霊王様なんだぞ」
「火って言うか、被(虐)の精霊王っていうか」
なによりビジュアルが、と、言葉を濁したエルフ娘。
そんな彼女をよそに、女修道士はすんなりと、火の精霊王の加護を受け入れたのだった。
【コーネリアは、召喚獣『イフゥ・リート』と契約した】




