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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第四部第一章 決戦! 暗黒大陸!
289/814

第289話 どエルフさんと帰還

「まぁ、エルフ喫茶が上手く行くことは分かった。これで、店主から受けた依頼は無事に完遂という訳だな」


「その代わりに厄介な仕事を引き受けちゃったけれどね」


 厄介な、とは、間違いなく、暗黒大陸との対決についてのことである。


 女エルフの辛辣な口ぶりに、うぅむ、と、唸る男戦士。

 しかし、すぐにそれを女エルフがフォローした。


「大丈夫。私も望んでのことよ。ティト。貴方の判断に着いて行くわ」


「私もです。ティトさん、一緒に中央大陸の――ひいては、魔神を倒すために頑張りましょう」


「だぞ!!」


 力強いパーティの返答に、男戦士が少し瞳を潤める。

 いい仲間を持ったなという感じに、手の甲でその涙を拭った彼は、あぁ、と、頷いて彼女たちを見渡したのだった。


 さて――。


「それでは、話も無事に終わったことだし。せっかくだから、また、【ドーン!!】で、君たちの本拠地としている街まで送ってさしあげよう」


「お、本当か?」


「珍しく気が利くじゃないのよ。神様」


 幸運の神の申し出に男戦士たちが喜色ばんだのは仕方がない。


 なんと言っても、ここまで来るのに相当な苦労をした彼らである。

 それを一瞬で、目的地まで戻れると聞けば、言葉尻が弾むのは仕方なかった。


 だが、申し出に反して、幸運の神の表情は硬い。


「というより、一刻も早く中央大陸に戻った方が良いでしょう。既に、暗黒大陸は動き出しているのですから」


 彼なりに危機感があってそれは申し出ている、ということらしかった。

 改めて、神から引き受けてしまったミッションの重大さに、男戦士パーティが沈黙する。


 それを察して、幸運の神が場を和ますように笑った。


「大丈夫です。私は、ティト氏たちを信頼していますから。きっと、暗黒大陸に渦巻く野望を打ち砕いてくれるでしょう」


「……任せてください」


「それが成った暁には、そうですね――エルフ喫茶でひとつ、打ち上げにティーパーティでもしようではありませんか」


 ホーッホッホッホ、と、笑う幸運の神。

 妙に信頼されてしまったものだな、と、いう感じ。

 面映ゆそうに男戦士が鼻頭を指先で擦り上げた。


 ふと、その視線が男戦士の腰に結わえられている魔剣に注がれる。


「エロスも、よろしく彼らを導いてあげてくださいね」


「……ったく、しょうがねえ。死んでもこんな目に会うとは、ほんとツイてねえぜ」


 やはり二人の間にしか、通じない何かを感じさせて喋る魔剣と幸運の神。

 結局、その違和感について聞き出す間もないまま、幸運の神がその指先を、女エルフの方に向けたのだった。


「では、皆さんに神の祝福があらんことを。おっと、しまった、私が神でしたね」


 ドーン!!


 その掛け声が、再び、北限の谷へと響き渡ったのだった。


◇ ◇ ◇ ◇


「あ、いたたた……」


「まさか、道具屋の中に直接転送されるとは……」


「皆さん、大丈夫ですか? 特にケティさん?」


「大丈夫なんだぞぉ」


 四人――そこに加えて、大剣使いと金髪少女は、久しぶりに行きつけの道具屋の中に居た。海も、山も、森も、そして壁も飛び越えて、一気に店の中へと転移した彼らは、僅かに開けているカウンターの前のスペースに、折り重なって転移した。


 ワンコ教授と金髪少女が最後になるようになったのは、幸運の神なりに配慮してくれたということだろうか。

 なんにしても、男戦士たちは全員無事に、道具屋へと帰還を果たしたのだった。


 しかし――。


「妙だな、店主の姿が見えない」


「ほんとね。いつもだったら、カウンターで、意味もなく突っ立っているのに」


 もしや、何かあったのだろうか、と、心配して辺りを見渡す男戦士と女エルフ。

 そんな彼らの耳に、どたどたと、慌ただしい足音が届いた。


 すぐに道具屋の扉を開いて入って来たのは店主。


 だが――。


「なんですのぉ!? いったい、俺私おれわたし様の店で大きな音がしましたけれどぉ!?」


 その姿は、緑色のドレス姿に、金色の長髪のカツラ、そして、張りぼてにより伸ばされた長い耳という、異様な姿であった。


 エルフ、に、見えなくもない。


 見えなくもないが。


「「――お前がどうしたぁっ!!」」


 思わず、男戦士と女エルフがツッコんでしまう。

 それも仕方のない姿であった。


 一部を挟んで、久しぶりの登場だというのに、このはっちゃけぶり。

 流石だな店主、さすがだ、で、ある。

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