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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第三部第五章 大法力のヤミ
241/814

第241話 どエルフさんとソソの血族

 魔性少年の問いかけに、また食堂にしばしの沈黙が訪れた。


 タターミが敷き詰められたそこには、彼ら以外の宿泊客もいる。

 だが、全員が全員、金髪少女と魔性少年のやり取りに食い入っているようだった。


 そんな周囲の期待に応えねばならないと思ったのか、早々に沈黙を破ったのは金髪少女のほうだ。


「ふふふっ、ふはははっ!! なんという論理の飛躍!! お主、いくらなんでもその推測は、突拍子がないと思わぬのか!!」


「……そうは思いません」


「なぜじゃ?」


「貴方は六階の探索を失敗して、すぐに次の冒険者を雇おうとしていました。それは、五階に居るカンウを確実に突破することができるという確信があるからです」


「……ふむ。しかし、【ソソの血族】は、わらわではなく取り巻きの者かもしれぬぞ」


「それならば、もっと特別扱いされる取り巻きが居るでしょう。見たところ、貴方の取り巻きの方たちは、そのような特別な待遇を受けている者は見られません」


「なるほど、実に見事な推理である。感心したぞえ」


 そして観念したぞえ、と、金髪少女は破顔した。


 にょほほほほと食堂に少女の笑い声が喧しく響き渡る。

 腹の底から吐き出すような、そんな笑いを上げて。

 彼女は、それから、ふぅと息を吐くと、もう一度、魔性少年の方に視線を向けた。


「確かに、わらわは【ソソの血族】の血を引く者。第二十三代目宗主ソリュウ――より枝分かれした分家筋ではあるが、間違いなく大英雄【ソソ】の血を引いている者である」


「やはり!!」


 一人、合点する魔性少年。


 そんな彼をよそに、男戦士も、女エルフも、そして魔性少年の相棒である大剣使いも、さっぱりという顔をしていた。


 唯一、ワンコ教授だけが、知っている的な顔をして、だぞ、とつぶやいた。


「――大英雄【ソソ】!! まさか、その血を引く者がいたとは!!」


「知っているんですか、ケティさん!!」


 女修道士シスターが、なんだか濃い顔で言った。


「うむ!!」


 いつもなら、だぞ、で返すワンコ教授も、今回だけはなんか濃い顔だった。


【キーワード 大英雄ソソ: かつて中央大陸の動乱期に兵を挙げて、最終的にはその大乱を納めて大陸を統一したという伝説の英雄。なんというか人の使い方が異常に上手い、あと人材発掘能力がバケモノめいている。組織のトップに立たせたら天下無双と言われた人。その後、中央大陸は再度の騒乱を経て今の共和制へと移行していくことになり、その血脈は失われてしまったことになっている――のだが、共和制に移行して幾百年と経過しているので、もういいかなという感じにソソの血縁者であると公言する人物が最近はちらほら現れている。ちなみに、『カンウ持ちリュウさん、トニー持ちソソさん』『もしも騎士団のマネージャーがソソだったら』の著者は、ソソ宗家の三十五代目を自称している。だが、真偽のほどは不明である】


「そんな人物の血を引いているのか、あの少女は」


「……けど、だから何、って感じよねえ。正直なところ」


 いいえ違います、と、魔性少年がケティの解説のあとに絶妙の合いの手を入れた。

 ここからは、どうやら彼に引き継いだほうが、話が早いらしい。


「ショーク国建国の英雄、カンウですが、彼はその昔、その大英雄ソソに一時的とはいえ仕えていたことがあるのです」


「えぇっ!?」


「それにより、ショーク国は大陸での覇権を争う戦いで、ソソの命を奪う絶好の機会を得ながらも彼を取り逃がしているんですよ」


「どういうことなんだぞ」


 それについてはわらわが答えようぞと、金髪少女。

 彼女は少しもない胸をつんと張り上げると、自慢げに鼻を天に向けた。


「曰く、一度でも君臣の契りを交わした相手、斬るには忍びない。命を取る絶好の機会なれど、我はソソに受けた恩を忘れじ。高祖への忠節とは別として、ソソの血族には手をかけぬと誓おう――そう言って、カンウはソソを逃がしたのじゃ」


「なんと!!」


「ということは――!!」


「カンウの自律人形オートマタもそれを忠実に守っているということですか!?」


「その通りなのじゃ!!」


 金髪少女がここ一番のキメ顔を見せた。


わらわが居る限り、カンウは手も足も出せぬということ!! 他の自律人形オートマタに襲われることはあるかも知れぬが、カンウのように強制排出するような、特殊な力を持ったものはないない!!」


「なんてことだ」


「そんなえこひいきが許されるというの」


「当然なのじゃ!! にょほほほ!! これが特権階級、持たざる者と持つ者の違いという奴なのじゃ、にょほほほ!!」


 腹の立つ感じで笑う金髪少女。

 しかし、腹を立ててどうにかなるものでもない。


 男戦士たちの目的は、あくまでバビブの塔の攻略である。

 そのために、必要な手段であるのならば――と、思った矢先のことであった。


「という訳じゃ。どうじゃお主ら、わらわと組む気はないかえ」


 その提案は、意外にも、高飛車な少女の方から振られたのだった。

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