第189話 ど戦士さんとハイパー必殺技
先に動いたのは男戦士であった。
正眼の構えから突きを仮面の戦士の鼻先に向かって突き入れる。まさしくそれは、突風の如く。つむじ風を起こして突き入れらたそれは、常人の目にはまるで捉えぬことのできない神速の妙技であった。
しかし――これを仮面の戦士は避けてみせた。
やはり侮れぬはこの男。戦士技能レベル5。数字にしてみせれば2段階の差を縮めたのは、顔につけている仮面の力か。はたまた男戦士にはない魔法技能か。
とにかく、男戦士の先手は読まれた。
「甘いぜ!! 悪いが、首はもらったぞ、エルフ馬鹿の片割れ!!」
「――バカはお前だ。《《武器の特性を持った瞬間瞬時に把握する》》、それくらいのことができなくて、何が戦士か」
「なに!?」
「この武器の特性は風。刀身よりそよぎ出る魔力の旋風が、どうやら、お前には感じとれなかったみたいだな」
言うや、仮面の戦士の赤い外套が緑色の閃光によって引き裂かれた。
まさしくそれは遅れて男戦士の太刀筋より発せられた魔力の旋風。
仮面の戦士の魔法剣が炎を吹き出すように、エルフソードは風を巻き起こして、相手を引き裂く無数の刃を発生させる代物でであった。
男戦士は熟練の戦士としての勘、そして本能でもってそれを感じ取った。
かわされるのを承知で、その一撃を放ったのだ。
「ぐわあああああっ!!!」
赤い外套がまるで火花のように切り裂かれて宙を舞った。
エルフソードの一撃により、露わになるその隠されていた姿。
「――うそ」
「――なんですか、あれは!?」
仮面の戦士が外套の下に、フルプレートメイルを着込んでいることは、薄々と男戦士たちも気が付いていた。それだけに、あえて、刃先による攻撃ではなく、峰による打撃を送ったりしていたのだが――。
はたして、現れたのは彼らの予想に反して、フルプレートメイルではなかった。
それは鋼の鎧ではなく拘束具。
幾つもの節を持ち、革のベルトと蝶番でつなぎ留められた、異様なものであった。
そんな動きづらそうな鎧をつけてなぜ戦うのか。
一瞬、男戦士の思考が停止する。
しかし、その逡巡のスキが生み出す結果を、知らぬ男戦士ではない。
「どういう経緯でそんな鎧を着ているのか、詳しいことは聞かない――だが、これで終わりだ!!」
地面に向かって大きくエルフソードを振った男戦士。その体が、鎧をつけたまま、ふわりと宙へと浮き上がったかと思えば、彼はいつもの得意の体勢を空中で作り上げていた。
男戦士の体を舞い上がらせ、滞空時間を延ばす風が上空に向かって吹く。
そんな中、彼は、その必殺技の名を叫んだ。
「喰らえっ!! ハイパー・バイスラッシュ!!」
「――ここにきてこの語彙力の無さ!!」
「――流石ですティトさん、さすがです!!」
シリアスパート。今回はつっこむところはないだろう。
そう安堵して彼らの戦いを見守っていた女エルフと女修道士が頭を抱えた。
もっと、格好いい言い方があるだろう。
仕方ない、なんといっても、男戦士の知力は1――人間種族のキャラメイクでファンブルしてもなるはずのない値――なのだから。




