第182話 どエルフさんと変換魔法
「くっ、ふはぁっ!! あぶ、危なかった!! もう少しであまりの衝撃に死んでしまうところだった!!」
「ティト!? よかった、なんとか堪え切れたのね!!」
「あぁ、熟女属性があるおかげで、なんとかなったらしい。ただ、あまり直視し続けるのは危険だ。飲み込まれてしまう」
女エルフの陰に隠れるようにして女王陛下と相対する男戦士。
老女の裸は、彼にとってあんまりにも刺激が強すぎるらしい。
しかし、上着も着ずに下着一枚で玉座に座るとは。よっぽどそのスケベ下着に魅入られてしまっているらしい。
「この下着をつけた妾は無敵じゃ。ふははっ、魔女ペペロペの力という奴かのう」
「やはり、その下着はペペロペの遺物!!」
「疲労腰痛肩こり、油っぽいものを食べたあとの胃もたれから、食べ過ぎた時の胃痛胸焼けに長く効いてくれるわ!!」
「――うぅん、なんと微妙な効果。やっぱ違うかもしれない」
言ってる場合ですか、と、女修道士が珍しく冷静にツッコミを入れる。
教会の敵、ぺぺロペの登場に、彼女もまたテンパっているのだろう。
下着姿の老婆がこちらに向かって胸を張る。
「まずは見るがよい、魔女の破壊の力を――秘奥!! セクスィービィーム!!」
黒いセクシィパンティと、セクシィブラジャーに暗黒の力が集まる。
それはそのまま、ブラとパンティの形を伴ったまま男戦士たちの方へと飛ぶと、大理石でできた城の床に大きな穴をあけた。
こんがりと、それでいてしっとりと、かといってアダルティな感じを損なうことなく、床にぶち抜かれたパンティとブラジャーの穴。
あんまりに非現実なその光景に、男戦士たち一行は顎を外して驚いた。
「ほほほ!! どうだ見たか、魔女ペペロペのこの非現実的な力を!!」
「非現実っていうかこれは――なんというか世界観が違うというか」
「モーラさん、これ、ちょっと本当にまずいのではありませんか?」
「分かってるわよそんなの――」
果たして、こんな攻撃をしかけてくるオババに対抗する手段なぞあるのか。誰もがそう思って、不安な顔をした時だ。
女エルフがひとり、パーティの前へと歩み出た。
手にしたのは彼女の魔法杖。
凶悪な暗黒の力を身にまとっている女王を前に、一歩も引かぬ毅然とした表情を彼女は見せた。
秘策があると言って見せただけのことはある流石の貫禄であった。
「ほほうエルフの小娘、邪魔をするというのか」
「えぇ、悪いけれど、させてもらうわ」
「魔女ペペロペ。暗黒神の巫女たる最悪の魔女の名を、お前とて知らぬ訳ではないだろう。それでも立ち向かうというのか」
「――知ってるわ。よく知ってる。だからこそ、私はこの魔法を編み上げたのよ!!」
白い光が女エルフの杖の先へと集中する。
それは光にしてはあまりにはっきりと白く、そして、遠目に見ても粘質なものだと見て取れた。
そうまさしく、杖の先に集まったのは白い液体。
「――これはまさか!!」
「魔女ペペロペの穢れを浄化するために、私が編み出した究極の浄化魔法――呪いの変換!!」
「呪いの変換!!」
「略してスペル○!!」
「略すなぁ!!」
だって見た目的にも、名前的にもぴったりじゃないですか、と、女修道士。
ちっちゃい子供もいるんだから、不用意な発言はよしなさいなとたしなめる女エルフに、しぶしぶ、女修道士は頭を下げるのであった。
「いや、しかし、不用意にそういうものを連想させる魔法と、名前を付けるモーラさんも悪い」
「自然にそういうのに落ち着いちゃうんですかね、どエルフだけに」
「流石だなどエルフさん、さすがだ」
「最終決戦って段階で、なにのんきこいてんのよアンタたちは!! というか、真面目にやんなさいよね、このバカァーッ!!」




