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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第二部第七章 紅の仮面騎士
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第173話 どドワーフさんとエルフメイト

「出会った当時、シャルルは赤毛のエルフを探していてな」


「赤毛のエルフだと?」


「聞いたことがある。この中央大陸に居たとされる道化師のエルフ。数々の王や人間をだましたが、ただの一度も人を泣かしたことがない、笑顔と幸福のエルフ」


「そう、そいつにどうしても、奴は会いたかったんだと。それでまぁ、いろいろあって意気投合してな。一緒にパーティを組むことになったんだ」


 シャルルこと、女王国の先王はあまり優秀な冒険者ではなかったらしい。

 剣の腕前はそこそこ、魔法についても使えないことはないが段取りが悪い。トラップにはよく引っかかるし、生傷がいつもたえないような、そんな男だったそうな。

 しかし、その笑顔にはどこか不思議な魅力があり、ドワーフはそんな彼を、頼りないながらも一番の相棒として重宝したんだそうな。


 結論から言うと、彼の旅は失敗に終わった。

 赤毛のエルフとその伝説は、かなり古い時代の者であるらしく、彼は大陸のどこを探しても見つけることはできなかった。


「あいつが二十八になった頃だったかな、急に、国に帰るからパーティを解消したいと言い出した。それで、俺は初めて知ったんだよ、奴が――白百合女王国の姫さん、今の女王陛下の許嫁だったってことをな」


「なんと」


「身分を隠して冒険をしていたのか。しかし、王についてのそんな話、聞いたことは」


「男の歴史については、あの国は語らないだろう。だから、意外と自由なんだとよ。ようやく女王陛下が結婚できるくらいに成長したから、急いで戻って来いと使者が来たと、アイツはあっけらかんと俺に言ったよ」


 ぐははと笑う男ドワーフの表情は、どこか寂しそうだった。

 それは実際、彼にとって寝耳に水な話だったのだろう。


 十年もともに冒険をした相棒の突然の告白と別離。

 そして、今日、彼らの娘がこうしていることを考えれば、彼がその要求をのんだことは間違いなさそうだった。


 しかし――。


「可哀想だったのはそのあとだ。相性が悪かったのか、それとも、何か悪い呪いにでもあてられちまっていたのかね。あいつらの間には、娘が生まれることがなかった」


「――そういえば、エリザベート第一王女は若かったな」


「ようやく娘ができたのは、結婚してから三十年後のことだ。待望の一人娘だったが、結局、アイツは娘が十歳になるより前に、若いころの無理がたたったのかぽっくりと逝っちまいやがった」


「そんなことが」


「王妃との間に、何かがあるのは分かってたよ。シャルルが死んですぐに、あいつは第二王女・第三王女と、まるであてつけのように種の分からない娘を産んだ」


 夫婦あるいは男女の仲というのは分からないものである。

 加えて、国の元首ともなると、惚れた腫れたというような単純な心理関係に留まらないのだろう。


 ヒメエルフ・ド・チャシコスキーという、エルフ名――エルフを愛する者が、その決意と性的嗜好を込めて名乗る魂の名前――も、またそれを表しているように思えた。


「そんなだからだろう。もしもこの国が乱れた時には、俺の手で正してくれと、アイツは俺を病床に呼んで頼んだんだ」


「ドエルフスキー!!」


「するとアンタは!!」


「今回ばかりはエルフのためじゃねえ。同じエルフを愛した仲間のために、俺はこの拳を振り上げに来たって訳よ」


 つまるところ、彼はヨシヲと志を同じくするものであった。

 女王の横暴をいさめ、再び、この国に秩序を求めるためにやって来た――革命家。


 思わぬ強力な味方の登場に、ヨシヲも、そして男戦士も思わず息巻いた。


「なぁに、エルフを愛する者――エルフメイトの誓いは絶対だ。そうだろティト」


「あぁ、その通りだ、ドエルフスキー!!」


「赤毛のエルフが大好きだった、姫エルフにこよなく焦がれた、そんなあいつが愛した国のためだ。このドエルフスキー、老骨に鞭打つつもりではせ参じたということだ」


 あとは任せな若いの、そう声を上げると、森の中にぎぃぎぃと声が響く。

 いつの間に集まったのだろうか、それは、彼が子分としている、ゴブリンたちの鳴き声であった。


 今や、人間たちに放棄された革命軍のアジトには、ドエルフスキーたち、エルフさらいの一団がひしめいていた。

 小ぶりな体躯の彼らだが、その戦闘能力は男戦士もよく知るところ。

 彼らが革命に力を貸してくれるなら、心強いことこの上ない。


「さぁ、あのアバズレババアに、エルフのよさと、男のよさを、たっぷりと教えてやろうじゃねえか!!」


 むふぅと、団子鼻を膨らませて吐き出した鼻息に、ドワーフ特有の豊かな髭が揺れる。おう、と、ヨシヲの掛け声に合わせて、ゴブリン、ダークエルフ、ハーフオーク、そしてエルフバカの男戦士の声が重なったのだった。

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