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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第二部第六章 青い伝説のヨシヲ
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第166話 ど戦士さんと紅い戦士

 一方、そのころ。


 パンツ一枚にひんむかれて、十字架に両手を荒縄で縛り付けられた男戦士とヨシヲは、集まってきた群衆たちを前にようやく目を覚ました。


 気が付けば、裸になって磔にされ、町の人たちから嘲笑の視線を向けられている。

 困惑の表情を浮かべる男戦士。しかして、状況判断能力だけは人並みにある彼は、そのアホな頭で、自分たちが革命に失敗したこと、その結果として今にも処刑されようとしていることを悟ったのだった。


 無念。そう呟いて彼は顔を歪ませる。

 まさかこのような形で命を散らすとは思っていなかったのだろう。


「――女装していれば、クッコロする最大のチャンスだというのに!! どうして!!」


 否、こんな時でも男戦士アホ男戦士アホであった。


「おい、ティト、そんな顔をするな。革命の戦士がそのような顔をすれば、ほかの戦士たちの士気に関わる」


「――ヨシヲ」


「ブルー・ディスティニー」


「――ブルー・ディスティニー・ヨシヲ。お前も捕まったのか。まぁ、そうだろうな」


 右隣で磔にされているのは、一緒に王城を駆けあがっていた男。

 まさかのパンツまで青色をした魔法戦士、ヨシヲであった。


 絶体絶命、まさしく逃げ話という状況にあって、堂々とした態度を崩さない彼。まさしく最後のその時まで、革命にその命をささげようという姿に、男戦士はこんな状況だが改めて感心した。

 なかなかできることではない。


「すまなかったなティト。こんなことに巻き込んでしまって」


「何を言う。俺が自らの意思で進んで関わったのだ。お前が謝ることではない」


「ふっ、やはり俺の目に狂いはなかった。お前こそは、戦士の中の戦士――ところで」


 ふとヨシヲが視線を群衆の方へと向けた。

 木で作られた柵によって広場は閉鎖され、男戦士たちへと近づけぬようになっている。ここ、白百合女王国の城下町に住まう人間たちでひしめきあっているそこにまぎれて、少し、風貌の妙な男たちの姿があった。


 明らかに商工業に従事していない――冒険者あるいは盗賊稼業に身をやつしているという感じの、荒っぽい顔つきをした男たちだ。顔に傷、あるいは、目立たぬようにマントの下に鎧を着こんで、こちらをじっと眺めている。


 ヨシヲが率いている、革命軍「ホモホモヘブン」のメンバーたちである。

 なんとも男臭い感じの彼ら。もう少し、身を隠したらどうなのだろうと、他人事ながら男戦士は心配になった。


 そんな中、柵の手前に立っている二人の男を見るように、ヨシヲが目くばせした。


 一人は、それまでの荒々しい気配を持った男たちと違って、柔和な顔つきをした初老の男。やせっぽっち、髪の薄い頭部をした、緑の服を着た男だ。


 もう一人は、赤い外套を被り、銀色の面をつけた男だ。

 こちらについてはなにやら、戦士として並々ならない気配を男戦士は感じた。

 

 そう、自分と同じ匂いを、男戦士はその赤い外套の男に感じとったのだ。


「緑の服の男がサンチョ。ホモホモヘブンの副リーダーだ。見た目の通り腕は立たないが頭は回る。レジスタンスのブレーンと言っていい男だ」


「隣の赤い外套の男は?」


「――エド。南の国からやってきた流れ者で、自分から、革命には力が必要だろうと、剣の腕を売り込んできた」


 典型的な傭兵である。

 レジスタンスはこそもそも、その国に暮らす者たちにより結成されることも多いが、その手の争いごとに居場所を求めてやってくるこの手の類の男も多い。


 しかし――それにしては妙に身なりが小奇麗だ。

 そういう稼業に身をやつすということは、それなりに金に窮しているものだ。争い事が常にあるとは限らない。普通、手垢のついて汚い、使えるかどうかもわからないような、鎧や剣などを無理くり使うような、そんな輩が大半なのだが。


 外套の下から見えるその鎧は、明らかに上等なものだ。彼の体に合わせて特注で作ったといっても過言ではない。しかも、レザーではなくフルプレートメイル。

 これの意味するところを考えると――傭兵というその出自に少し疑いが出てくる。


 それは、ヨシヲも同じ思いだったのだろう。


「正直、危険な男だ、俺もあまりよくは思っていない」


 男戦士の物言わぬ顔に、そんな言葉をかけた。


 なんにせよ、この処刑の場に、レジスタンスのメンバーが潜伏しているということが、まずはなによりの吉報である。


「処刑の話を聞きつけて集まってくれたのだ」


「急な話だというのに、なかなか統率力があるようだな」


「あとは、たぶんだが、サンチョがなんとかしてくれるはずだ――うん?」


 そう言った矢先だ。

 彼がなんとかしてくれると言った男が、急にこちらに背中を向けた。同時にその手を上げる。


 その合図に合わせて、さきほどまでまばらに確認できた怪しい顔が、一斉に人ごみの中に隠れて見えなくなってしまった。

 何か仕掛けるつもりなのか――いや、それにしては妙だ。


 ただ一人、サンチョの隣に立っていた男、赤い外套のエドだけが、その場に残っている。


「どういうことだ、これは」


「わからん。サンチョのことだ、何か、考えが――」


「悪いな大将。俺たちは、穏健派のアンタの生ぬるいやり方にはついていけないんだ。捕まったのが運の尽きだったな、悪いが、勝手にくたばってくんな」


 群衆たちがざわめく中、そのざわめきを引き裂くように叫んだのは――赤い外套と銀色の仮面をつけた男。

 エドであった。

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