第144話 どエルフさんと使い魔
「私もそろそろ使い魔を買おうかしら」
「えっ、もう、ティトさんという大きなモンスターを飼っているのに?」
次の冒険に備えて市場を歩いていた男戦士たち一行。
その一角にある愛玩動物の売り場を通った際に、何気なく呟いたエルフの言葉を、いつも通り、女修道士がしっかりとフォローした。
彼女のそういう危ない言葉を、どんな時でも聞き逃さない、聞き洩らさない。
その執念はいったいどこから来るのかと、ほとほと呆れるしかない女エルフ。その前で、女修道士はわくわくと顔をほころばせていた。
「飼ってないわよ、飼える気しないし、あんなの」
「またまたご冗談を。よく躾けてあるじゃないですか。お手、おすわり、おちん○ん」
「ワン、ワンワン、キューン、キュオーン、キュンキューン」
「やらんでいいわい!! あと、なんでズボンを下ろそうとしてんのよ!!」
自分のズボンに手をかけて、え、ここでやるの、本当に、と、羞恥に顔を染め身悶えている男戦士。そんな彼の頭を容赦なく、女エルフは杖で叩いたのだった。
それはもちろん、お○んちんだからだろう。
女修道士の命令に合わせて、ポーズをとっただけなのに、酷い。
とまぁ、そんな男戦士の物言わぬ視線を無視して、女エルフは市場にずらりと並んでいる、ペットたちを眺めてため息をついた。
猫、犬、うさぎにこうもり、亀、そして梟。
大陸の津々浦々から集められた動物たちを前にしては、物珍しさについ足が止まってしまうのも無理はない。
その中、一番手前に置かれている、檻の中にいる黒猫に歩み寄った女エルフは、楽しそうに鼻唄をかなでながら、上下左右とそれを観察しはじめた。
つられてワンコ教授もその猫を眺めはじめる。
「やれやれ、本当にモーラさんは、そういう動物の類に弱いな」
「だって、可愛いじゃないの。おーよしよし」
「だぞぉ。モーラでなくても、気になるのは仕方ないんだぞ」
動物を眺めてほほえましい顔をする女エルフとワンコ教授。
その二人の笑顔にほだされて、つい、男戦士の顔も一緒に緩んでいた。
と、そんな彼らを前にで、一人浮かない顔をしたのは女修道士だ。どうして、ペットたちとの触れ合いに、そんな愁いを帯びた顔をするのか。
「どうかしたのかコーネリアさん」
いつもはっちゃけている女修道士のしおらしい顔に、思わず、男戦士は彼女にその表情の理由を尋ねた。
いえ、その、と、らしくない歯切れの悪さを見せる彼女に、つい、女エルフたちも気になって視線を向ける。
「どうしたのよ、気になるじゃない」
「隠し事とはらしくないんだぞ、コーネリア」
「言いたくないのなら構わないが、俺達は仲間だ、何かあれば頼ってくれて構わないんだぞ、コーネリアさん」
仲間たちの頼もしい言葉に、少しだけだがその顔から憂いが消える。
彼女は少しはにかんで、それからもっそりとその唇を動かした。
「いえ、なんだか黒猫というのは、モーラさんには似合わないなと、そう思ったので」
似合わない、と、これまた女修道士の口にも似合わない言葉に、思わず女エルフが首を傾げた。隣に立っていたワンコ教授も一緒だ。
「え、あら、そう?」
「だぞ、黒猫と言ったら、魔女ってイメージなんだぞ」
限りなく、魔法使いの相棒としてはもってこい。
そのはずなのだが、どうして、イメージと違うと感じるのか。
女修道士に問いかけるような視線を投げた女エルフ。その返答という感じに、つっと修道士はその視線を、黒猫の隣の檻にいる犬へと向けた。
「――せめて、犬くらいの大きさじゃないと、満足できないんじゃないかな、と」
「なんの話よ」
「それに、猫のそれは先が針状になっているといいますし」
「だからなんの話よ」
「場合によっては馬なんていうのもいいかもしれませんね。大丈夫、きっとモーラさんなら、乗りこなせるし乗られこなせますよ!!」
「だからなんの話よ」
「えっ、だから、オナ○ーに使う魔の話じゃないですか」
「使わんわ!! そんな用途に使い魔使わんわ!! 魔法使いをなんだと思ってるのよあんたは!!」




