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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第二部第四章 騒乱の森と男戦士の謎
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第130話 どエルフさんとタトゥーの謎

 流石に、戦士ファイター技能7の男戦士である。

 戦い慣れたといっても、数の利で攻め立てるばかりの武装オークの集団など、ものの敵ではない。


 瞬く間に彼らの身体を切り刻み、緑と赤色の肉塊へと変えていく男戦士。


 その姿はまさしく鬼。

 頭二つも違うであろう屈強なオークたちが、そのあまりに無残な光景に、膝を笑わせてその場にへたり込む。

 血に塗れた男戦士はそんな相手にも容赦なく剣を振るうと、その首をね飛ばしたのだった。


 横を転がる仲間の首に、女オークが顔を青ざめさせる。


「くそっ!! どうしてこんな男一人に!!」


「動かない方がいいわよ。ティトだけじゃないんだからね、こっちは!!」


 そう言って、女エルフが魔法の杖を女オークの首へと向ける。

 杖の先には既に炎が立ち昇っている。少しでも、おかしな反応を見せれば、彼女の魔法が女オークの身体を焦がすことになるだろう。


 完全に形勢は逆転していた。


 おそらくちょこまかと動かれると一番厄介だろう女オーク。

 男戦士が起こした混乱の中、虎視眈々と彼女を拘束するべく、すかさず女エルフは杖を拾って、反撃に転じてみせたのだった。


「――くそっ、殺しやがれ」


「そうはいかないわ。この中で、貴方が一番話が通じやすそうだからね」


 ちょっと眠っていてもらうわよ、そう告げると、女エルフは催眠魔法を女オークへと向かって発したのだった。

 すぐ、小麦色の髪を揺らすと、女オークはその場にまえのめりになって倒れ込んだ。


◇ ◇ ◇ ◇


 死屍累々、オークたちの死体が折り重なった獣道より少し離れた場所。

 小川で体にこびりついた血糊ちのりを落としながら、ふぅ、と、男戦士が息をついた。


 その近くには、彼の服を魔法で洗っている女エルフだ。


「まったくもう。はらはらさせないでよね、ティト」


「すまない。俺としたことが、まだまだ修行が足りないな」


「私の応急処置が効いたのかしらね。なんにせよ、そこまで動けたらもう大丈夫ね」


「あぁ、もう、()()()()さ!!」


「アンタほんと、生きてたからよかったけど、そういのやめなさいよ!!」


 そういうのって、と、分かっていない顔をする男戦士。


 おそらく、ピンピン、と言おうとして、にごってしまったのだろう。

 男戦士の馬鹿さ加減には、女エルフもよくよく知っている。


 真っ裸になり、落ち着いたそれをぷらぷらと、恥ずかしげもなく揺らす男戦士を前に、零れ落ちるようにため息を吐いた女エルフは、なんでもないわと呟いた。


 ぎゅっと、男戦士の着ていた服が、女エルフの魔法によって宙に浮く。

 そのままぎゅうと雑巾のようにしぼられると、ふるりふるりと辺りに水をまき散らして、その場で回転し始めた。


 いつも、男戦士には内緒で使っていた、洗濯の魔法である。


「こんな便利なものがあるなら、早く言ってくれよ」


「言ったらアンタの洗濯しなくちゃいけないじゃない。いやよそんな男くさいの」


「ひどいなぁ、モーラさんは」


 先に乾かしておいたパンツを男戦士に投げつける。

 綿でできたゆったりとしたそれに足を通すと、男戦士はよいせと川から上がった。


 すぐに、彼が向かったのは女エルフの方だ。

 何も言わず、男戦士は彼女の隣に座り込むと、そっとその肩に手を回した。


 女エルフの頬が少し紅みを帯びる。


「ちょっと、手元が狂うんですけど」


「ありがとうモーラさん。君のおかげで、俺は命拾いをしたよ」


「――パートナーだからね、当然のことをしたまでよ」


 とは言ったものの。

 まさかここまで順調に、男戦士が復活するとは、女エルフも思っていなかった。


 あくまで、延命のための一時処置。

 彼を生きながらえさせ、その命を繋ぐためならば、どんなはずかしめもうけよう。

 そう覚悟してやったことだった。


 それがこんな思わぬ結果を生んでいることに、正直、彼女自身も困惑を覚えていた。


「こんな簡単に、毒って抜けるものなのかしら」


「あぁ、これなら今度から、毎回、モーラさんに(毒を)抜いてもらおうかな」


「はい、目的語を抜くな!!」


「気持ちよかったからな。いっぱい(毒が)出たんだろうな」


「やめいやめいやめい!!」


 げしげし、と、男戦士の脇腹に肘鉄をくらわす女エルフ。

 ふと、ちらりと見た脇腹に、女エルフはちょっとした違和感を覚えた。


 前に宿屋で二人部屋に泊まった時にも見た。

 紫色をした、ユニコーンの角を模したような、奇怪なタトゥー。


 それがそこにはあった。

 前よりもはっきりと色味を増して。

 そして、その模様を少し大きくして。


 ついぞ視線がそれを捉えてしまったのは仕方ない。

 そしてそんな女エルフの視線に、男エルフがさっと脇腹を隠したのも。


 やだ、ちょっと、隠すようなことでもないじゃない、と、女エルフがいつもの茶化すような感じで語りかけたその時。


「モーラさん。すまない。今見たものは、忘れてくれないか」


「――へ?」


 男戦士がいつになく険しい顔で、そう、女エルフに言った。

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