真夜中のアトリエで
三題噺もどき―よんじゅう。
お題:芸術家・真夜中・折り紙
真夜中―
森の奥のアトリエで、僕はひとり、作業を行っていた。
「遊ぼー!」
―いや、一人ではなかった。
今は、この子と2人でアトリエにいる。
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どこにでもいるような、しがない芸術家である僕は、いつものように、真夜中、アトリエに向かう途中、彼女を拾ったのだ。
(拾ったというか、着いてきたんだけどね…)
それから、彼女の両親を探そうと、色々と聞いてはみたのだが、頑なにそれを嫌がるので、最後にはこちら側が折れてしまった。
なんとなく、こちらが聞くことを、ためらってしまうようなしぐさが随所に見られたこともある。
それからは、本人の自由にさせている。
そして、
(今日は、一緒に遊ぼうと……)
基本的に森を駆け回ったり、1人であそんだりしているので、こういうことは、かなりレアなケースなのだ。
ついてきたとはいえ、猫のように気まぐれなのだ。
(まあ、行き詰まってたし、いいか)
―そういうのをなんとなく、この子は感じているのかもしれない。
前回も、同じように僕が行き詰まっている時だった気がする。
「ねぇー遊ぼー!!」
―ま、単純に遊びたいだけなのだろうけど。
「はいはい。何するの……?」
「んーとね、今日はね、折り紙!」
彼女が指さした先には。
どこかから引っ張り出してきたのか、床中に色とりどりの折り紙が所狭しと散らかっていた。
(こりゃ、片付けるの大変だな……)
そんなことを考えながら、彼女に腕を引かれ、折り紙の山の中にぽっかり空いた空間に連れていかれる。
「それで、何を作るの?」
よっこらせ―と座りながら聞いてみる。
座るも何もという所だけど。
―足なんて、ないし。
「えっとね、つるを作るの!」
「鶴か……千羽鶴でも作るの?」
「せんばづる……だと思う。」
―なんかたくさんつるが繋がっているやつ!
うん、それを千羽鶴というのだが。
「……誰かにあげるの?」
「うん!おにーさんにあげる!」
思いもよらぬ返事が来た。
「僕に?」
「うん、早くおにーさんの病気が治りますようにって!いつも顔色悪いもんね〜!」
向日葵のような、眩しすぎるぐらいの笑顔で答えた。
こういう無邪気なところは、とても子供らしい。
「そっか、ありがと……でも、そろそろ寝る時間だから、作るのは、明日にしよう。」
「ん〜はーい。」
ん。こういう聞き訳がいい所は、なんとなく子供っぽくないのだ。
もうすぐ、日が昇ってくる。
「おやすみ」
「また、明日」
夜の、このアトリエで。