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俺が好きな人が末永さんであると言う事は、絶対に島崎さん達にバレないようにしなければ……
じゃないと、何が待ち受けてるか分からない。
もしかしたら、島崎さん達のせいで末永さんとの関係が悪くなってしまうかもしれない。
それだけは絶対に嫌だ。
図図しいかも知れないけど、末永さんを陰ながら静かに見たい。
だから島崎さん達には邪魔をさせない。
「それで、末永のこと好きなの」
原田さんがニヤニヤしている。
今、島崎さん達は俺が末永さんのことをが好きだと言う事を確信している。
だから、下手な嘘は通用しない。
けれど、そんな窮地は打破できるかも知れない。
俺は無表情で、彼女達にこう言う。
「いいえ、僕は決して末永さんのことが好きではありません」
下手に動揺したりして、感情を出したら、島崎さん達にバレる危険がある。
だから、無表情で対抗すれば感情から、末永さんが好きだということはバレない。
けれど、島崎さん達は図太い。
「だけど、末永を見てニヤニヤしていたじゃん!」
その小林さんの反応に対して俺は時計を見る。
時刻は11時半。
もう少しで4限目が始まる。
そして……
「この4限目が終わればお昼休みですね」
「だから、なんなの!」
「今日、食堂では1ヶ月に一回しかでない幻のメニュー。ビーフシチューが数量限定で出てくる日なんですよ」
「それがなんなのよ……」
「僕はそれが楽しみです。だから、時計を見て早く来ないかと思いながら、ニヤニヤしていただけです」
我ながら完璧だ。
無の表情をし、一切感情を出さなかった。
しかも、運も俺の見方。
本当に今日はビーフシチューが出てくる日だ。
まぁ、本当は興味はないけどこれで、原田さんは欺くことが出来た。
しかし、肝心な島崎さんと小林さん達はじっと疑ってくる。
やっぱり……
小林さんと島崎さんが見てくる間、俺の心臓はバクバクだった。
だけど……
「ふん~、それは悪かったね……」
一番、意外な人物だった。
まさか、あの島崎さんが俺の主張を信じてくれるとは……
「ちょっと!優菜!キモオタク君は絶対に末永のこと好きだって!」
「だから、どうしたの?」
「だ、だから、もっと追及とかと……」
「別に本人が好きじゃな言っている以上、追及する必要はないんじゃないの」
「まぁ、そうだけど……」
「ねぇ、キモオタ。あんたは末永のこと好きじゃないもんね……」
「うん……」
「そう、ならキモオタには用はない」
最後、不気味に笑みを浮かべたように見えた島崎さん。
それがどういう意味なのかは分からないが、ひとまず島崎さん達の追及から逃れることに成功するのであった。
けれど、今の俺は知らなかった。
この日から地獄のような?……天国のような?……生活が待ち受けているとは……
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