85
社交辞令で行ったと思っていたことが、本当に現実になってしまうとは……目の前にいる紗夜さんとご飯を食べるとは……
「もしかして、パスタ嫌いでした?」
「ううん、そんな事はないよ」
「良かった。ここ、私のおおすめのところだったんですよ……隠れ家的なところで、あまり人は入らなくて、私にとってはとても過ごしやすいんですよ……」
確かに周りを見渡せば、あまり人はいない。ここに来た道中も、裏道みたいなところを使って、常連さんじゃなければ迷いそうなところにお店もある。紗夜さんが言うように隠れ家的なお店だ。良く紗夜さんも見つけられたもんだ。街並みから離れた場所にあるため、店の外も静かだ。
ごはんを食べ終わった。さて、ここからどうするのだろうか?
「まだ、時間も早いし、どこか行く?」なんて俺から誘った方がいいのだろうか?だけど、今日はご飯だけの約束しかしてないからこのまま別れるのが良いのだろうか?
「白金君。良かったら、この後、適当にショッピングしませんか?」
「紗夜さんが良ければ、是非!」
という事で紗夜さんとショッピングすることに……
横を歩く、紗夜さん。緊張しているのだろう。紗夜さんは、何も喋りかけてこない。何か会話してあげよう……そういえば、紗夜さんの苗字を聞いていなかった。
「そういえば、紗夜さん苗字てなんていうのですか?」
「そういえば、ちゃんと自己紹介していませんでしたね……では、改めて自己紹介させてもらいます。私の名前は、桜宮 紗夜と申します」
「えっと、白金 結城です。改めてよろしくお願いします!」
「はい!こちらこそよろしくお願いしますね!」
紗夜さんは、にっこり笑った。いつもは、どこか恥ずかしそうな姿をして、笑っている時もどこか、無理しているように感じだが、笑う時はこんなにも笑うのか……
こうして、紗夜さんといろんなところを回った。
ときには、雑貨店に行っては、色んな便利グッズを見たり、ときには、紗夜さんと服を見に行って、紗夜さんの試着した服をみた。
「どうですか?似合っていますか?」
「似合っています!」
そして、ときには紗夜さんと本屋さんに行き色んな本を見ていた。正直、ラノベ小説や漫画コーナーに行きたいけど、紗夜さんはそう言う本には興味ないのかも知らない。なぜなら、大人向けの小説コーナーで、目をキラキラ輝かせている姿を目の当たり、したら、言いたくても言えないではないか……
「白金君は、普段本は読みますか?」
「まぁ、まぁ、読むかな」
「そうなんですね。白金さんはどんな本が好みですか?」
「えっと……」
「「ラノベ小説か、漫画を読みます!」」と正直に言うべきだろうか?それとも、紗夜さんに合わせて、「僕もこう言う小説を読みます」」と言うべきだろうか?迷う……だけど、紗夜さんは、きっと、正直に言っても、変な目で見てこないだろう。むしろ嘘をつかれる方が嫌に決まっている。
「俺は、ラノベ小説家とか漫画を読みます!」
紗夜さんは固まる。目を瞬きしたまま口をポカと開けている。一体、どう思っているのだろうか?やっぱり、うわー気持ち悪……とか思っているのだろうか?やっぱり言うべきじゃあ!
「私も大好きです!」
「えっ?」
「私は、転生系が好きで特に……」
紗夜さんは長々と喋る。オタク特徴の早口言葉で、淡々とその作品の良さを伝えてくれる。もちろん、俺も知っているラノベだから、その良さを知っているが、それにしてもよく喋る……だけど、聞いていて不快にならない。むしろもっと喋りたい。
「ご、ごめんない!つ、つい!」
「いや、いいんです!それよりも、もっとその小説について、語りましょう!俺もその小説好きなんです!」
「はい!」
場所を変えて、俺達はその小説を語り合った。あの作品は、面白いなど、あの作品の作画はすごく良かったや、本を飛び越えて、今期のアニメの話もした。まさか、ここまで、気が合う人と出会えたなんてほぼ奇跡だ。そして、気づいた頃には日が落ち始めていた。
「今日は、ありがとうございました!白金さんとたくさんお話ができて、物凄く楽しかったです!」
「また、機会があれば一緒に、ご飯でも行きながら、語り合いましょう!」
「はい!是非よろしくお願いしますね!」
こうして、紗夜さんとは別れた。異性と居て、こんなにも楽しかった時間は初めてだ。また、紗夜さんと会って、いっぱい、アニメについて、しゃべりたいなぁ……そう思いながら、俺は今日、紗夜さんと語り尽くした小説を見ていた。
読んでくれてありがとうございます!
次回もよろしくお願いします!