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恵理のクラスがやっているメイド喫茶も行ってしまった。さて、次は、どこへ行こう。
面白そうなところはないかと、恵理から貰ったパンフレットをちょろちょろと見ながら、歩き回る。パンフレットを見ると、中は基本、室内向けの屋台という感じで外は、ご飯を食べれる屋台が出ているようだ。
時刻は、午前11時前。朝ごはんもまともに食べられなかったから、ご飯を食べに行きますか……
俺は一階まで降り、外の屋台を見た。すると、夏木達がいた。
「柊さん〜夏木ちゃん〜このコロッケ美味しいですよ〜」
「はぁ……双葉さん先ほどから飲食ばかり食べていると、太りますよ」
「だけど、美味しくて、つい欲に負けてしまうんですよー」
「うんうん!その気持ち、わかる!わかる!」
「はぁ……全く……」
「あれ?夏木ちゃんのお兄さんー」
三人は俺を見る。双葉さんはにっこり笑い手を振るい、柊さんは怒っているのかな?と思うくらい、睨みつけてくる。そして、夏木はにっこり笑っている。もしかして、まだ怒っているのだろうか?
「恵理ちゃんのメイド姿はどうだった?」
「すごく、可愛かった……」
「そっか、それは良かったね!」
どうやら、夏木の機嫌は直っている様子だ。
「夏木、ごめんな……」
「ううん、こっちこそごめんね!だけど、周りに迷惑になる事はしちゃいけないからね!」
「うん!」
こうして、俺と夏木は仲直りした。
「仲直りしたところで、夏木ちゃんのお兄さんも私達と一緒に回りませんか?ねぇ、いいよね!二人とも」
「私も、構いませんよ」
「私もおにぃと回ることに賛成!」
双葉さんの提案に、柊さんと夏木が賛同してくれた。きっとこの三人で、回れたら楽しいだろうな……だけど、この輪の中に入っていけないような気がする。
「いいよ。三人で楽しんでくれ俺は一人でぶらぶらしたいし」
「そっか、なら私達だけで、回るね」
俺は夏木達と別れた。振り返ると、三人は楽しそうに喋りながら歩いている。三人とも楽しんで何よりだ。さて、俺は、先ほどからいい匂いが漂う焼きそば屋に行こう。焼きそばを買い、ついでに、近くにあった、たこ焼き屋さんで、たこ焼き八個入りを買い、近くのベンチでひとり食べた。たこ焼き、焼きそばは、熱々だけど、とても美味しい。焼きそばは、野菜とかの具材の食感まで楽しめるし、たこ焼きの中のタコも、しっかりしている。
さて、お腹がいっぱいになったところで、色んなところに回ってみるか!俺は、パンフレットを見る。……さて、どれに行こうか……お化け屋敷に、射的、時間帯によっては、ファッションショーや映えを意識した、光アートやバルーンアートなどなどがある。
「あ、あのすみません!」
声がした方へ見ると、あの時助けたあの子が……名前は紗夜さん。学校で制作しただろう、スローガンが入った黒のTシャツを着ているところからして、今は休憩時間という事だろう。そして、たまたま俺と会ったのかな?……
「もしかして、あの時に助けてくれた白金さんですよね?」
「はい、そうですけど……」
「あのときは、ありがとうございました!」
「いいですよ、気にしないでください」
「あのそれでなんですけど……良かったら何かお礼をさせて貰いませんか?!」
「いいよ。そんなつもりで助けた訳ではないし」
「いいえ!せっかく助けてもらったので、何かお礼をさせてください!」
そんなに言われたら「駄目」なんて言えないではないか……
「なら……」
「本当にこんなお願いでいいんですか?」
「うん、これで大丈夫」
紗夜さんには、おすすめスポットに連れて行ってもらう事にした。これで、どこに行こうか迷わず、行ける。紗夜さんは、下を俯きながら、恥ずかしそうに俺の横を歩く。
「あの!ここは映えスポットですよ!是非、行きましょう!」
手を伸ばして、差ししました場所は、3年B組が出しているバルーンアート。気になったところだったので、是非とも入ってみよう。
「紗夜さん、一緒に行きましょう!」
「えーわたしですか!」
「もしかして、嫌でした?」
「そんな事はないです!だけど、私なんかが、白金さんと一緒歩いていいんですかね?」
「もちろんいいですよ!」
私なんかがと言っているが、むしろ俺なんかが紗夜さんの横を歩いていいのだろうか?そう思うほど、紗夜さんは美少女だ。恵理に匹敵するほど、紗夜さんは可愛い。そんな紗夜さんとバルーンアートを見る。動物だろうと思われるアートから、可愛いキャラクターのアートなどなど、沢山ある中、リア充向けだろう。大きなハート型のバルーンアートもある。
「あの!白金さんが良かったらなんですが、私と写真を撮っていただきませんか!」
「別に構いませんよ」
紗夜さんは自分のスマホを取り出し、俺と一緒に写真を撮る。撮り終わると、紗夜さんはにっこり微笑んだ。
「あの、写真を送りたいので、連絡先を教えて欲しいのですが……」
「別に構いませんよ」
俺と紗夜さんは連絡先を交換した。
「ありがとうございます。後で、写真送りますね!」
満面な笑みを浮かべた紗夜さん。その姿に一瞬、ドキッとした。その後も、紗夜さんにはいろんなおすすめスポットを案内してくれた。お陰様で、どこに行こうか迷う事なく、色んなところを回れた。そろそろ紗夜も、一人で回りたいだろう。休憩時間にも限界があるし
「紗夜さん」
「はい、なんでしょうか?」
「今日はありがとう。もう、いいよ。そろそろ戻らないと行けなくなる時間でしょ?」
「そうですね……あと、25分と言ったところですね……」
「なら、あとは自分が行きたいところに行きなよ」
「なら、そうさせてもらいます……」
すると、紗夜さんは俺の手を掴んだ。
「私、白金さんと行きたいところがあります!」
と言われて、紗夜さんに連れてかれた場所は、最初に行ったメイド喫茶だ。
「私、どうしても、ここのパンケーキを食べたくて……実は、ここのパンケーキは、あるつてで、超有名なケーキ屋さんが監修しているんですよ……だから、是非、白金さんと食べて見たいです!」
紗夜さんが食べたいと言うんだ。是非とも食べようて言うか、恵理はそんな事一言も教えてくれなかったし!その腹いせもかねて……
「よし、じゃあ、一緒に食べよう」
――数分後――
「それで、またご来店ですかー。それはそれはありがとうございますー」
恵理は、満面な笑みを浮かべ俺達の接客をしてくれる。他にも可愛い生徒はたくさんいるはずなのに、どうして恵理に当たってしまうんだ。
恵理以外に変えて貰えないだろうか、恵理なんだか怒っているような気がするが……
「あの、このはちみつとクリームたっぷりパンケーキを一つください……」
「かしこまりました……」
注文を受けた恵理は、行ってしまった。
流石に接客中は怒る事は無かったが、絶対恵理は怒っている。
「お待たせしましたーはちみつとクリームたっぷりパンケーキでーす」
パンケーキが来た。名前の通り、生クリームがたっぷりとかかり、はちみつもたくさんかかっている。はちみつとパンケーキのいい匂いが漂う。早く食べたい。
「じゃあ、半分に切りますね」
紗夜さんがパンケーキを切り、仲良く半分ずつ食べた。
「やっぱり〜噂通り美味しいですね」
「うん。おいしいね!」
紗夜さんが、言わなければ、このメニューには、出会いなかっただろう。この俺達が食べている真横で見ている恵理のせいで……
「いい加減、持ち場に戻ったらどうなの?」
「いやだ……」
「恵理さん。周りに迷惑がかかると思うから、戻った方がいいと思うよ」
「分かったわ戻るわ……」
珍しく、恵理は戻っていく。いつもなら、子供のように駄々をこねて、「もう少しだけ居させて!」なんて言うくせに、今日はすんなりと行ってしまった。恵理の背中を見ていると、恵理は、振り返った。そして、美味しそうにパンケーキを紗夜さんと俺たちに向けて無表情で、中指を立てるのであった。俺の後ろは壁だからいいものの、他のお客さんがいたら、大問題だ。しっかり接客をしろよ……とか思いながら、紗夜さんと仲良く、パンケーキを食べるのであった。
「あの、今日はありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう」
「あの!……」
「見つけた」
後ろを振り帰ると。夏木達がいた。
「おにぃ、私達もう、疲れたから帰るけど?」
スマホの時間をみると、時間は午後一時を回る。かれこれ長い時間文化祭を楽しんだし、そろそろ帰っても良い頃かもしれないな。それに紗夜さんも休憩時間も終わるころだと思うし、そういえば、紗夜さんが何か言いたそうだったなぁ……
「それで、紗夜さん……あれ?」
「さっきの人なら、二人が話しているときに、どこかへ行ってしまいましたよ」
「そうなんだ」
「追いかけなくて、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
休憩時間も終わってしまうから、急いで持ち場に戻ってしまっただろう。
紗夜さんは何か言いたかったと思うけど、また連絡で聞くなりすればいいだろう。
こうして、楽しい文化祭は終わった。そして、その日の夜。恵理から連絡が来ていた。
「今日の文化祭はどうだった?」
「すごく、楽しかった!」
「なら、今度は、結城達の文化祭にお邪魔させてもらうから!」
「是非!」
なんて、やりとりをしていたら、通知オンとともに、紗夜さんから連絡が来ていた。
紗夜さんのトークルームを開くと、今日撮った写真が送られている。そして、すぐに
「あの!今日は、ありがとうございました!白金君といろんなところに行けて、楽しかったです!それで、なんですけど……また今度!ご飯でも行きませんか!?」
紗夜さん。すごくグイグイくるな……
だけど、こう言うのはお世辞で言ってるだけだろう。紗夜さんと適当に会話を合わせて……
「うんいいよ。俺も、また紗夜さんとご飯行きたいなーと思っていたし」
「でしたら!空いている日に行きましょう!」
なんだかんだで、やりとりが続き。来週の日曜日に夜ご飯を食べに行くことになってしまった。てっきりお世辞で言っているかと思っていたが……まぁ、いいや、楽しみだな……
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