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ある日の休みのこと
バイトが終わり、俺は家に帰っていた。
だんだんと夏も終わり、辺りが暗くなるのも早くなってきた。季節というものは実に早いもんだ。つい最近までは、夕暮れも暑かったのに、今は、過ごしやすい、そう季節の変わり目を感じながら、歩き続けて、家の前までやってきた。さて、今日の夕飯は何かな?俺は、家に入った。すると、俺はある事に気づいた。誰かのスニーカーがある。もしかして、夏木のお友達でもいるのだろうか?夏木の友達である双葉さんか柊さんのどちらかだろうか?双葉さんはともか、柊さんは「話しかけてくるな」的なオーラがあって、苦手なんだよな……(〇インでは、そんなことはありません)
「お疲れ!おにぃ!」
「お疲れ様!結城!」
リビングに入ると、夏木と幼馴染の恵理が仲良く料理をしている。夏木はともかく、なぜ恵理がいるのだ。折角の夏木との時間を邪魔しに来たのか!?
「なぜ、恵理がいる?……」
「結城に渡したいものがあるから来たの!」
渡したいもの?一体なんだ。恵理に何かを貸したわけでもないし、俺の誕生日でもないし……
恵理は、リビングの机に置いていた紙切れを俺に渡した。
「今度の土曜日に私の学校で文化祭があるの!その、良かったら来てくれるかな?!」
と俺の手を取り、俺の手を優しく握る恵理。やられた……これで「その日はぐうたらしたいから無理」とか、ふざけた理由で断れば、もれなく俺の手は強く握られるだろう。それを踏まえて、恵理を刺激しない言い訳をしなければ……恵理が「じゃあ、仕方がないね!」で終われる嘘と言えば……
「ごめん。この日バイトなんだ。いやー折角の誘いだったけど、ごめんな!」
こういう日に限って俺は休みだ。けれど、恵理の文化祭なんて行ってられない。折角の休日だ。とことん休みを満喫するつもりだ。それに次の日の日曜日は、午前中からバイトだ。そのため、次の日の事も考えて、あまり遊びすぎないようにしなければ
「あれ?おにぃ?確か土曜日休みじゃなかった?」
「えっ?どういうこと?」
恵理が俺を睨みつけ、俺の手の皮をつまみ始める。だんだんと痛みは増していく。これじゃあ、俺の手の皮が剥けてしまうかも!
「あの、恵理さん。痛いです……」
「なら、さっきの嘘、弁論しなさいよ」
「分かった。分かったからそれだけはやめてくれ!」
「はぁ……仕方がないわね」
と言われて、とりあえず痛みからは解放された。さて、ここから恵理に説明しなければ……恵理は俺を睨みつけ、夏木は満面な笑みで料理をしている。恵理はともかく、夏木のあの笑顔が不気味で怖い。また、嘘をついたら、絶対に見破られるだろう。
「二人とも、丁度ハンバーグが出来たから、食べながら、おにぃの主張を聞こう」
という事で、恵理を含めた3人で夕食を取る事になった。せっかく夏木が作ってくれたハンバーグなのに、いつもより不味く感じるのは気のせいなのだろうか?それとも、目の前で機嫌を悪くしている人物がいるからだろうか?
「それで、どうして嘘ついたの?」
「土曜日は普通に休みたかった……」
「はぁ?それだけで嘘をついたの!?」
「だって、そう言ったら、「なら結城は暇だから強制ね!」みたいなこと言うんだろう!」
「はぁ!?そんなこと言うわけ!ないとも言い切れない……」
そこは「いうわけないでしょ!」といって欲しかった。そうすれば、嘘をつくな!とか言えたのに、なんか調子狂うな……
「はぁ?なんだよそれ」
「だって、結城に見に来て欲しかったんだもん、私の姿」
「一体、文化祭は何やるの?」
「メイド喫茶」
「メイド喫茶?もしかして、女子生徒が、メイドの姿になってやるやつ!?」
「そうそう、それ!」
「へぇー恵理ちゃんの学校はそんな出し物があるんだ。いいなぁ〜。私も高校生になったら、メイド喫茶やってみたいなー」
もし、夏木の学校でメイド喫茶をやったら、俺は必ず行くだろう。夏木のメイド姿で、「お帰りなさいませご主人様!」なんて言われたら、尊死してしまうけど……この目で、夏木のメイド姿を目に焼き付けなければ!
「ふふふ、だけど、夏木ちゃん。メイド喫茶は、意外と人気のある出し物だから、いつも争奪戦なのよ……だから、この狭き門を潜り抜けるのは、大変なのよ!」
「えーそうなの!」
「だから、この狭き門を潜り抜けた、私達を見に来てくれない?勿論、夏木ちゃんも連れてきてもいいし、夏木ちゃんの友達も連れてきていいから!」
「あの、俺の友達は?」
「男子ならともかく、女子は連れてこないでくれる?私が、頑張っているなか、結城が他の女の子とイチャイチャしているのすごくムカつくから」
なんとも自己中心的な理由。独占欲が強くて、恐ろしい女性だ。
「あと!必ず、メガネをしてくる事!いかにも陰キャ感を出してきなさいよね!結城が眼鏡を外してきたら、学科中が大騒ぎになりかねないからね!」
「はぁ……」
大袈裟ずぎる……別に眼鏡を取ったところで、特に問題はないと思うけど……
まぁ、バイトの時みたいにずっと動いているわけでもないから、眼鏡はしていくんだけど。ていうか、話の流れ的に行くことになっているんだけど、これってもう、断れないやつだよね……
夕飯を食べ終わり、恵理は立ち上がると、俺に向けてこう言った。
「じゃあ、今度の土曜日!楽しみに待っているから!必ずきてね!」
という事で、今度の土曜日に恵理の高校へ行くことになってしまった。初めて恵理の高校へ行く。確か恵理の学校は女子校であったような……
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