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「あの、島崎さん。俺とペアーを解散しませんか?」
俺なんか、力不足でただの重りだ。
初日からそのことに気づかされた俺は、島崎さんにそう提案した。
まだ時間は早い、早いうちに解散して、俺よりもいいペアーを見つけて、是非体育祭で活躍してほしいものだ。
それなのに……
「嫌だ……そんなの私嫌だ!私!白金じゃなければ、駄目だから!」
「だけど、俺みたいな重りなんかよりも他の人組んだ方が島崎さん的にもいいんじゃ……」
「そんな事はない!だから、私は白金としか組まない!そうじゃなければ、私、体育祭に出ないから!」
どうして?どうしてそこまで言うのだ島崎さん。
慰めならいらない。
それに島崎さん自身一番わかっているはずだ。
「白金なんて、ただの邪魔だ。これじゃあ、私の力が発揮出来ないじゃないか」と……
「どうして、俺と組むんですか?」
「それは……」
島崎さんは、立ち上がる。
そして、俺と……
「私は、白金の事が好きで、誰かに取られるのが嫌だから。そんな身勝手な理由じゃ駄目?」
「……」
ここまでされてしまったら、解散してほしいとは言えない。
それどころか、無様な姿を見せられなくなったではないか
「島崎さんの気持ちよーく分かりました。俺、頑張ります!」
「じゃあ、改めてよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
もう、解散しようとは言わない。
今年の体育祭も手を抜こうと考えたが、今回は頑張ってみよう。
島崎さんに「この人と組んで良かった」と心の底から思えるほど、努力をしよう。
そう決意をした俺の練習は始まった。
まずは、体力作りから。
無理のない範囲で筋トレを行う。
家に帰って、スクワットとか、家で出来ることを
そして、食事も出来るだけタンパク質なものを多く取れるようなメニューを夏木にお願いしている。
「ごめんな、夏木。こんなわがままお願いして」
「ううん、おにぃをサポート出来て私、嬉しいよ。それよりもおにぃ!沢山食べて、頑張って!」
「うん頑張るよ!」
夏木が一生懸命作ってくれた料理を頬張る。
基礎体力を作るうえで、夏木の料理はとても重要な役割を果たしてくれる。
少しでも夏木の感謝を伝えるため、出されたものは残さず、すべて食べた。
――ある日の休日――
「朝早くからごめんなさい」
「大丈夫。私は平気だよ」
俺は、今、島崎さんと一緒にいる。
今から、島崎さんと一緒に町内一周ランニングをやる。
正直、ノンストップで町内一周出来るか、自信がないがとりあえず頑張ってみよう。
「じゃあ、白金のペースに合わせるから。最後まで一緒に頑張ろう」
俺と島崎さんは一緒に走る。
静かな街中、ほとんど音がない中、俺と島崎さんの荒い息が聞こえる。
「白金、大丈夫?」
「うん、俺は大丈夫だよ」
島崎さんはひたすら、俺のペースに合わせてくれている。
「もう少しでゴールだよ」
「うん」
これなら、完走出来るかも知れない。
しかし、目の前に心臓破りの坂が現れた。
これを登れば、ゴールまであと少しなのだが……
すると、島崎さんが俺の背中を叩く。
「白金、頑張れ」
「うん」
俺と島崎さんは登った。
途中もう、駄目かと思いそうにもなるが、隣で頑張っている島崎さんの姿を見ると諦め訳行かないという自分が、奮い立たせてくれる。
そして、俺は町内1週ランニングを完走させることが出来た。
しかし、もうへとへとだ。
「すごいじゃん白金」
「これも、島崎さんのおかげですよ」
「私は、別に何もしてないよ」
「そんなことは無いですよ」
あの時、島崎さんが、俺と「やりたい」と言ってくれたから、今の自分がいる。島崎さんには感謝しかない。
「今日はありがとうございました」
「また、機会があったら一緒に走ろうね!」
こうして、早朝ランニングは終わった。
その後、俺は島崎さんの力になるため、基礎体力作りを始め、色んな練習を頑張った。
短時間で、見違えるほど、体力とかがつくわけではないが、少しでも練習をすれば、島崎さんの力になれるはず……そう信じながらひたすら練習に打ち込むのであった。
読んでくれてありがとうございました!
今年もよろしくお願いします!




