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ある日のこと。
今日は新学期開けて、初めての土日休み。
夏休み明けから数日行っただけだが、疲れた。
今日は土曜日だから、ゆっくり休んで、また月曜日に備えよう。
うん?……
なんだか違和感があるのだが……
なんか、鼻がむず痒く、手元には柔らかい何が……
なんだろう。なんか、いけないものを触った時の感覚に似ているが……
とにかく、いつもの寝心地よりも、違和感を感じる俺は、目を開けた。
すると、誰かの黒い後ろ髪が視界に入る。
これが、むず痒い原因だったようだ!
で、もしかしてこの手元のやつは!
「もう、朝……」
ごそっと動き、起きあがろうとする恵理。
タイミングが最悪!
起きるな!恵理!
眠れ!眠れ!
そんな俺の願いは虚しくちり、恵理は俺の手を触る。
きっと違和感を感じていたのだろう。
「結城のエッチ……」
と言った後、恵理は何事もなく起きる。
「おい、ちょっと待て恵理」
「な、なんでしょう?」
胸に気を取られて、完全に忘れていた。
なぜ、この女が俺の家にいるのだ?
いつから、人の布団に入り込んでいたのだ!
これは聴取が必要だ。
「恵理、なぜお前がかここにいる?」
「あーそれはですねー……」
目の前に恵理を正座させ、事情聴取。
洗いざらい吐いてもらおう。
すると……
「おはよう!おにぃ!」
「おはよう、夏木」
今日今日も、素敵な夏木さん。
その可愛い笑顔が眩しい!
「おはよう!恵理お姉ちゃん!」
「おぉー!我が可愛い妹よ!おはよう」
と夏木と恵理は抱きつく。
何とも微笑ましい光景だ。
これが姉妹愛と言うやつなのだろうか……
うん?恵理お姉ちゃん?
我が妹?
この二人は朝から何をしているのだ?
「おにぃ、朝ごはん出来ているから、一緒に食べよう」
と夏木に言われるがまま、朝ごはんを俺の隣にいる邪魔者と食べることに。
「それで、恵理はなぜここに?」
「恵理ちゃんは今日から、この家のお姉さんになるの」
「はぁ!?」
恵理がお姉さん!
何かの聞き間違えだろうか?
「あっ、結城!机にヨーグルトこぼしているよ!」
驚きのあまり、つい落としってしまったヨーグルトを恵理が拭く。
そして、しっかり、「「こぼさず食べなきゃ駄目でしょ!」」と俺を叱りつける。
これではお姉さんよりも、俺のお母さん的な感じだ。
ていうか、なぜ、恵理に怒られなければならないのだ。
別にヨーグルトをこぼしただけなのに!
全く!朝から不愉快だ!
「ちょっとおにぃ!ごはん食べないの?」
「もう、おなか一杯」
俺は席を立ち、自分の部屋に戻る事にした。
しかし、その前に恵理が立つ。
「駄目、あと少しなんだから食べなさい!」
「じゃあ、恵理が食べれば」
「恵理じゃありません!お姉ちゃんでしょ!?」
「ふざけんな!誰が恵理なんかをお姉ちゃんなんて呼ぶか!」
「呼びなさい。さぁ、お姉ちゃん!」
「恵理お姉ちゃん!ほら、おにぃも!」
「いくら、夏木のお願いでも無理だ!」
俺は自分の部屋に戻り、もうひと眠りをすることに……
そして、何もせずただただ午前中が過ぎたしまった頃に、奴がきた。
「いい加減!起きなさい!」
布団をめくり取られた俺は、目を覚ました。
視界には、機嫌が悪そうな恵理が
もう、その顔を見るだけでうんざりだ。
いい加減この茶番にもうんざりだ。
「こら!起きなさい!」
「うるさい!俺の邪魔をするな!」
「まぁ!お姉ちゃんに対して、反抗!まさか!反抗期!これはお仕置きが必要ね!」
「いい加減にしてくれ!もう!帰ってくれ!恵理にはうんざりだ!」
「なら、もう、私を見捨てたりしない?……」
「えっ?」
「だから!私を見捨てないか?って聞いているの!ほらこの前、私を見捨てて学校に行ったじゃん!私、凄ーく傷ついたからね!」
と俺を怒る恵理。
まさか、あんな事で、ここまで怒っているとは……
恵理の気持ちなんて考えずに、恵理を置いていったのは反省すべきだった。
だが、恵理も悪い。毎日毎日と、「学校一緒に行こう!」と誘ってくる。
恵理にとっては良い事かも知れないが、俺にとってはいい迷惑だ。
そうだ!この機会に……
「なら、ルールを決めよう」
「ルール?」
「これから、俺は恵理を見捨てない。もちろん学校も一緒に行ってやる。ただし、恵理が俺に朝、接触してくるのは、週に2回だけ」
「どうしてよ!なんで私がそんなルールに縛られなければ、ならないのよ!」
「はっきり言って、お前と登校するのが嫌だからだ」
「何よそれ……私の事が嫌いって言うことなの」
「そうじゃない。ただ……お前みたいな美少女の横を歩くのはその目立つから……その、俺みたいな陰キャにはきついと言うか……」
どうせ、笑うんだろ!
ほら笑えよ!
「……」
あれ?恵理が黙っているんだけど
なんか怒せてしまったのだろうか?
「……結城は、なんの前触れもなくそういうこと言ってくるよね……」
恵理の顔がなんか、赤いような……
「恵理、大丈夫?」
「「ふん!もう!嫌い」」と恵理は何故か、嫌われてしまった。
そして、恵理は俺の部屋を出るなり、身支度を済ませ、家を出て行ってしまった。
まるで、台風みたいなやつだ。
――次の日――
「おはよう恵理」
「おはよう」
なんだか、恵理は機嫌が良くなさそうだ。
適当な会話をして機嫌を直してもらおう。
そうとなれば、昨日のことは触れないようにしなければ
「私、結城の約束守ることにしたから」
「えっ?」
「だから、昨日の約束!守るから!」
と腕を組みそっぽ向く恵理。
恵理からすれば、毎日、俺と登校したいと思うが、そこを我慢して約束を守ってくれる。一体、恵理に何があったかは知らないが……
「ありがとう恵理」
「そんなこと言っても何もないから」
恵理は終始機嫌が良く無かった。
しかし、他の日に会ってみれば、いつも通りに機嫌は戻っていた。
「おはよう結城!」
「おはよう恵理」
恵理は腕に絡みつくとこう言った。
「ねぇ、ねぇ、ゆうきー。今日の私、可愛い?」
「はいはい、可愛いですよー……」
機嫌は直ったものの、ここ最近、俺と学校に行くたびに聞かれるようになるのであった……
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