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――船の外にて――
「突然、呼び出してすみません先輩」
「別に大丈夫だよ。それより話ってなにかな?」
後藤さんはもじもじと恥ずかしいがる姿を見せる。
何だろう?後藤さんが言いたいことが分かるような気がするが……
「あの、話って言うのはですね……そ、その……」
その?……
「わ、私とお付き合いして貰いませんか!?」
やっぱり告白か……
うすうす、俺を好意に思っていたが、一体、こんな俺のどこが良いのだろうか?不思議で仕方がない。
「ごめんなさい。それは無理です」
悪いが後藤さんの告白は受けるつもりはない。
恵理、末永さんの時と同じように後藤さんも振る。
これも今の生活を維持するためだ。
目立たず、静かな生活を送る。
それが俺の理想だ。
「そうですか……そうですよね……私なんて先輩と釣り合わないですよね……」
落ち込む後藤さん。
なんか、俺が悪いようなことをした気分で心が痛む。
俺は、後藤さんを励ます。
「それは、間違えですよ……後藤さんは可愛い。むしろ俺の方が後藤さんと釣り合わない。だから、もっといい人を見つけてほしい」
「私は、先輩が一番いい人で……だから!」
「俺なんて、全然いい人ではないですよ……普段はだらしがないし、幼馴染にはいい様に利用されては、振り回されたり、クラスメイトとはうまくなじめず、毎日ぼっちで本ばかり読んで、挙句の果てには、クラスメイトの女子からいじられる始末。全くどうしようもない男ですよ」
俺は、この場を去ろうとした。
すると、後藤さんが俺の腕を掴んだ気がした。
なんか、温かく柔らかい手が俺の腕を握っているような感覚だが、気のせいだろう!
俺は、歩みを進める。
「逃げたって逃がしませんよ」
前に進まない!
それどころか、明らかに握る力が強くなっている!
「こっち見てください……」
俺は、後藤さんを見る。
「先輩。先輩の悪いところはよーく分かりました。ですが、私は、先輩の良いところを知っています。だから、先輩には自分の良いところをもっと知ってもらって、自信をつけさせます!そしたら、私と付き合って貰えますよね?」
「それは……」
後藤さんが近づいてきた。
「先輩、言いましたよね?私と釣り合わないから、付き合えないと……」
「まぁ、言いましたね……」
なんとも言えない威圧が!
「なら、先輩が私の横を歩けるように自信を持たせます。だから、自信を持ったら私と付き合ってくださいね?」
威圧的な態度から一転、満面な笑みで俺の手を握る後藤さん。
だけど握る手は強い。
「う、うん。努力するよ……」
もしかして、後藤さんは地雷系だったりしないよな……
なんか、雰囲気的にそんな感じがするのだが……
そんな俺を置いて、後藤さんは「じゃあ、この告白の返事は保留ですね!」と言って後藤さんは去ってしまった。
ぽつり一人残された俺は思った。
なんか、ややこしい事になってしまったぞ!
こうして、楽しいバーベキューも終わり、いつも通りの生活が戻ってきた。
しかし、また一つ、新たな問題も発生するのであった
「先輩、私は先輩のことしっかり見てますから」
「う、うん……」
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