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55 突然の呼び出し

――7月下旬――


――バイト先にて――


バイトが終わりに、俺達は天野店長に呼び出されていた。


要件は不明で、ただ、バイト終わりに、今日いる従業員全員集合との事だ。


「全員呼び出されるとは、一体、何の用ですかね?」


「もしかして、白金君が天野店長を怒らせる事をしてしまったとか」


葵さんの顔を見る限り、葵先輩は冗談で言っているはずだろう。


俺は軽いノリで返す。


「冗談はやめてくださいよ!」


「果たして私は、冗談で言っているでしょうか?ねぇ、神崎君」


「そうですね!葵さんが冗談で言うなんて!ねぇ、葵さん!」


なんか、二人のせいで、一気に不安が押し寄せてきた。



俺は、今日までの仕事ぶりを振り返る。


忙しい日もあったりして、時にはミスをしそうになったり、イライラすることもあった。


だが、表向きは、笑顔で接客、もちろん、一緒に働く従業員も愛想良くした。


ミスも指差し呼称を生かして、ミスは未然に防げた。


だから、天野店長を怒らせたことはないはずだ


うん、大丈夫だ……


「先輩……」


声がした方を見ると、隣にいた後藤さんが顔を真っ青にしている。


葵先輩が変な事を言ったから、間に受けてしまった後輩がいるではないか


「後藤さん大丈夫?」


「ど、どうしよう……私、天野店長を怒らせるような事をしてしまったかもしれません……」


後藤さんの話を聞くと、以前にお客様の注文を間違えたとの事だ。


なんだ、そんなことか……


顔を真っ青にするから、もっとヤバい事をやらかしたかと思った。


注文ミスなんて、誰だって一度はある事だ。そんな事で、天野店長が怒るなら、俺は、今まで、たくさん天野店長に怒られている。後藤さんは心配しすぎだ。


「心配しなくても大丈夫ですよ。注文間違えは、誰だって一度くらいはあるものですから」


「そうそう、間違えは誰でもあるから心配しなくてもいいよ!」


「そうですかね?」


「そうだよ。俺なんて、何回もあるよ。だから、深く考えなくても大丈夫だよ」


「そうそう、白金君なんて、研修中、何回も間違えて、もう一苦労したから」


「本当だ。一体、白金のミスで、俺達がどれほどカバーしたのやら」


「ほんと、二人には申し訳ございません……」


葵先輩と神崎先輩に深々く謝罪をした俺。


こうやってミスは、周囲の人に迷惑をかける。 


だがら、ミスはしてはいけないもんだ。


最初はそう思っていた。


だけど、ミスはしていけないものではない。


ミスという経験があったから今がある。


「小春ちゃん。白金君みたいに、沢山ミスをするのは、勘弁してほしいけど、ミスを恐れて、挑戦しないのは駄目だからね!ミスはいずれ、大きな経験になるからね!」


「わかりました!」


新人の頃、俺も葵先輩から言われたのを思い出す。


これがきっかけで、ミスと言うものの見方が変わった。


これも、葵先輩のお陰だ。



さっきとは違い、後藤さんは、晴れ晴れしている顔つきをしている。


「どうしましょう!先輩」


今度は今にも泣きそうな原田さんがやってきた。


「どうしましょう!私、天野店長を怒らせてしまってかもしれません!」


距離が近い気がするが、まぁ、とりあえず、話しを聞こう。


あと、少しだけ原田さんには離れて貰わなくては、さっきから後藤さんが、「何なんですか?あの人は」と言わんばかりに原田さんを睨んでいる。


「何をやらかしたのですか?」


「私、一度だけ、社員用冷蔵庫から、お菓子を盗んで……いや、あれは間違えて食べてしまったですよ!もしかして、あれって天野店長のやつではないかと……」


もしかして、それって……


「その、食べてしまったお菓子て……プリンですか?」


「えっ、そうですけど……どうしてそれを……ま、まさか!」


「それ、俺のです」


「なんだ、先輩のですか!良かった!」


「良かった!」ではない……あれは、忙しい日の、休み時間を使って食べようと大事に取っていたプリンだ。


原田さんは知らないだろうが、あのプリンが消え、ゴミ箱に捨てられているのを見つけた時、俺は膝をついて泣きそうなくらいだったからな


「あの、原田さん。プリン返してくれますよね?」


「えっ、も勿論ですよ」


「食べ物の恨みは怖いですからね」


「わ、分かりました……」


こうやって威圧的にすれば、きっと返してくれるだろう。


そんなこんなで、会話をしていると天野店長が履く、ヒールの音が聞こえてきた。



「急に呼び出して、すまない」


天野店長が、社員の前に立つと、皆の気が引き締まっているように感じた。


これが上に立つ人の威厳と言うとものだろうか



ふと、とある日の事を思い出す。


「白金きゅん~一緒に飲もうよ~」


「白金きゅん~どうちたのでちゅか~あっ、もしかして構ってほちいのですね!」


「よしよしいいこでちゅね」


いやいや、あれは幻覚だ。


あの日は、何も無かった。 


決して、天野店長が酒で酔った勢いで、俺に甘えてきたなんて言う事はなかった。


これが天野店長だ。


「さて、早速、本題に入らせてもらうが、今年の8月のお盆の時期に、バーベキューパーティーを開催しようと思う。実は、この店も、今年で、50周年を迎える事ができた。これも、お前達社員とお客様のお陰だ。そこで社長の提案により、今年だけのお盆中3日間を休業日とすることになった。そこで、私の提案で、1日だけ船を貸し切って、バーベキューパーティをしようと思う。今から渡す紙に詳細は記載されている。勿論、参加は自由だ」


従業員に渡された紙を見る。


内容はこうだ。


8月14日、午前10時~午後21時まで


午前8時にここに集合し、店で手配したバスで移動。

船に乗り、海の景色とプールを楽しみながら、バーベキュー

午後21時に集合場所で解散とする 以上


と記載されている。


なんとも、すごい豪華な内容だ。


綺麗な海を背景にバーベキュー。おまけにプールがあるとか、もう豪華客船ではないのだろうか!


俺は今、ある事を思い出した。


天野店長の家は規格外の金持ちだ。


家は、漫画で出てくるような豪邸。


篠崎さんを始めたした執事にメイドもいる。

そして、天野店長は、何台ものスポーツカーを所有している。


この船でのパーティーは豪華客船……


しかも、天野家が船を所有しているとか……


普通はありえないことだが、天野店長と言う事もあり、ありえもなく話だ。


想像するだけで、期待が膨らむバーベキューパーティー。


「先ほども言ったが、これは参加自由だ。バーベキューに参加するのも良し、3日間を自由に過ごすのもよしだ。後は皆に任せるぞ」


と言い残し、天野店長は去っていた。


とりあえず、説教ではなくて良かった。


さて、天野店長が主催するパーティーには興味があるから行ってみたいが、折角の3日の休み、羽でも伸ばして、ぐうたら家で過ごしたい……


「先輩!このパーティ一緒に行きましょうよ!」


と目をキラキラと輝かせる原田さん。


原田さんはすかさず、俺の手を取る。


「ねぇ!行きましょうよ!」

「う、うん……行こうか」


後藤さんがなんか、じっと見てくるから、その手をどかしてくれ!


ぎゅうと握りしめる原田さん。気のせいかも知れないが、もしや確信犯……


「先輩、パーティ楽しみですね」


「そ、そうだね……」


後藤さんが近づいてくるぞ!

もしかして、俺、殴られる!?


「白金先輩、私もパーティに参加しますから!」


と原田さんとは逆の手を握りしめる後藤さん。


二人は、互いに見合う。


「あらあら、後藤先輩。別に無理して来なくても大丈夫ですよ……」


「別に無理なんてしてませんし、そう言う原田さんこそ、無理しなくてもいいんですよ!あと、先輩が困っているんので、離れたらどうですか?」


二人に対して、俺は困っている!


二人とも離れてくれ!


二人は気づいていないのかも知れないが、最初の時よりも力が入って痛い……


互いに睨み合う中、ある人が来た。


「お、今日もモテモテですね~白金君」


と葵先輩が囃し立てる。


こっちの身も知らず……いいもんだ。


「先輩!一緒にパーティーへ行きましょうね!」


「分かった一緒に行こう!」


こうして、俺は、天野店長主催のバーベキューパーティーに参加することになった。


さて、どんなパーティーが開かれるか楽しみだ!





呼んでくれてありがとうございます!

次回も宜しくお願いします!

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