誕生日パーティ本番
どうしよう……
こんな大事な日にこんなミスをしてしまうとは……
俺の頭の中は真っ白だ。
「どうしたの?結城」
「間違えた……」
「もしかして、ケーキの日程を……」
「うん……」
こんな大事な日に、俺は何をしているのだ。
みんなが、ここまでしてくれたのに、それを台無しに……
俺は自分が嫌になり、今にも泣きそうな気分だ。
「ドンマイ、白金君。ミスはあるものだから、仕方がないよ!それに、まだ時間はあるから、なんとかできるよ!」
「そうそう。いじけてないで、何か行動に移すのよ!」
「さぁ、立ち上がって!」
と二人が手を差し伸べて、俺は立ち上がった。
多分、この二人の励ましがなかったら立ち上がっていなく、いじけていたかもしれない。
手を差し伸べてくれて、ありがとう、恵理、末永さん
その後、俺達はこの後のことを考えた。
せっかくの誕生日だから、俺達で、手作りケーキを作ろうと言う案が出たが、材料は足りないし、時間がないとのことで、なくなり、他にもいろんな案が出てきたが、納得いく案はなく、結果、恵理と俺でケーキの買い出しに行く事になり、末永さんには留守番を任せる事になった。
「後のことよろしくお願いします」
「任せて!」
いつも心強い末永さんだが、今日は人一倍心強い。
「さぁ、行くわよ!」
俺と恵理はケーキを買いに行く。
ーー街中にてーー
「なんか、あの時のことを思い出すね」
「そうだな」
ふとそんな事を言った恵理だが、なんだ、あのときの事って……
全く覚えてないんだけど……
「あの時は、本当に大変だったよね」
「そうだな……」
一人で盛り上がってきている恵理を他所に俺は、心の中でこう思う。
「だから、なんだよあの時て言うのは!」
全く、身に覚えのない話を聞きながら歩いていると、どこかで見たことがある人物に遭遇した。
「あれ?おにぃ達何しているの?」
夏木だ!
俺の計画では、この時間も、買い物をしているはずだが!
突然現れた夏木に俺は動揺する。
「あっ、えっと、ちょっと買い物!」
「恵里ちゃんと?」
首をかしげる夏木。
完全に夏木は、不審がっている。
「あぁ!私達たまたま会ったのよ!ねぇ、結城!」
「そうそう!」
ナイスフォロー恵理!
背中を強く叩いたのは、マイナスだが、今のフォローは満点だ!
「ふーん、そっか。二人とも楽しんできてね。あっ、おにぃ、恵里ちゃんに迷惑かけちゃだめだからね!じぁ、私は先に帰るから」
えっ、今、帰ると言ったよな!?
衝撃発言に俺と恵理は互いに見た。
恵理は慌てて夏木を引き止める。
「ちょ、ちょっと待った!夏木ちゃん。良かったら久しぶりに私とショッピングでもしない?」
「でも、恵理ちゃんはおにぃと買い物するんでしょ?」
「あぁ!今、夏木ちゃんと買い物したい気分なんだよね!こうして会う機会もあまりないし!」
「どうかな?」と、かなり強引に夏木をショッピングに誘う恵理。
演技力はともかく、良いぞ!恵理!このまま夏木を誘い出してくれ!
「恵理ちゃんがそこまで言うなら……」
と恵理は、夏木を誘う事に成功!
ありがとう恵理!
と思ったが、夏木はどこか不安な表情を見せる。
「でもやっぱり、私、帰ろうかな?」
「えっ、どうして?」
「その……家の事が心配で……」
俺を申し訳なさそうに見る夏木。もしかして、俺、信頼してない……
もし、そうだとしたら、物凄く悲しい……
俺の思いを察したのだろう。夏木はこう言った。
「別に、おにぃがしっかりやってないていうわけではないよ」
「なら、俺を信じてくれ!」
こののまま夏木に帰られたら、すべてが水の泡になってしまう。
それに恵理も俺を睨んで「結城!私が何とかしたんだから!あんたもなんとかしなさいよ!」と言わんばかりに睨んでくる。
だから、何としてでも夏木を家に帰らせないようにしなければ
俺は、夏木をじっと見つめる。
可愛い顔をじっと見つめる。
夏木の目には迷いを感じる……
だけど、俺は夏木の顔を見る。
「分かった。恵理ちゃんとショッピングに行ってきます!」
こうして、夏木は恵理と買い物に出かけるのであった。
楽しそうに会話する二人の背中を見送り、俺は、急いで夏木の誕生日ケーキを買いに行く。
とりあえず、夏木が好きなショートケーキを1ホール買って、ケーキを崩さないように急いで帰った。
「お待たせ!末永さん」
「待っていましたよ」
そこに現れたのは、末永さんではなく、双葉さんと柊さん。
どうやら、俺が留守している間にやってきたようだ。
「さぁ、夏木ちゃんが帰って来る前に早く準備をしましょう!」
こうして、末永さん、双葉さん、柊さんの協力の元、残っていた準備に取り掛かる。
料理の味見を双葉さんにしてもらい、机に食器などを末永さんにやってもらい、料理で使った物の洗い物を柊さんにしてもらい。最後に料理やケーキを並べるのをみんなでやった。
「恵理、今どの辺?」
「もう少しで、家に着く」
「分かった」
恵理の連絡で俺達は、夏木を驚かせるため、ケーキのロウソクに火をともし、ここに居る人にクラッカーを渡す。そして、家の明かりを消す。
夏木が帰ってきた。
「ただいま?」
「お誕生日おめでとう!」
何だかんだで、夏木の誕生日パーティーを成功させた俺達。
これもここに居るメンバーのお陰だ。
「夏木ちゃん、お誕生日おめでとう!これ、結城が企画したんだよ」
「おにぃが……」
と恵理に言われると、夏木は涙を流し始めた。
「どうしたの夏木ちゃん!」
と慌てる双葉さん。
そんな双葉さんに、夏木は笑い首を振る。
「私、嬉しいよ。こうして、皆にお祝いされて、今まで生きて中で一番かも。みんなありがとう!」
と涙を拭きとり、満面な笑みをこぼした夏木。
最初は、不安だらけから始まった、夏木の誕生日パーティ企画。
最後の最後まで問題だらけで、パーティが開けなくなるではないかと思った時もあったが、こうして、無事夏木の誕生日パーティーが開けて良かった。
夏木の笑顔を見て、心の底から思えた。
こうして、俺達は夏木の誕生日を祝った。
「夏木誕生日おめでとう。これ、俺からプレゼント」
「ありがとう。早速だけど、中身開けてもいいかな?」
「うん」
「これって……エプロン」
誕生日プレゼントを知った夏木は驚いた。
「覚えてくれていたんだね」
「もちろん」
「そっか嬉しい。ねぇ、着てみてもいいかな?」
「いいよ」
夏木は、エプロンを試着する。
「どうかな?似合う?」
「とても似合うよ」
やっぱり俺が見込んだ通り。桃色のエプロンは、とても夏木に似合っている。
このエプロンを選んで正解だった。だけど、心残りが一つ。
プレゼント選びの時に、末永さんが持ってきた黒のエプロン。
あれと猫耳を生やした夏木姿も見てみたかった!
なんて、思いながらも夏木の喜ぶ姿を見ていた。
「あの、白金さん。私から提案ですが、皆さんで記念写真でも撮りませんか?」
「いいね!」
と柊さんの名案で、皆んなで記念写真を撮った。
「これ、皆さんに送りたいので、白金さん。連絡先を教えて貰えませんでしょうか?」
「分かりました」
俺は、柊さんと連絡を交換した。
そして、柊さんからもらった写真を他の人にも送った。
これで、一生忘れない思い出が、また一つ増えた。
こうして、夏木の誕生日パーティは無事成功。
夏木はみんなから祝福された。
「夏木ちゃん!これ私からのプレゼント!」
「ありがとうございます!」
「私からも、これ。良かったら使ってね」
「もちろん使わせてもらいます!」
「じゃあ、私のプレゼント。改めてお誕生日おめでとーう!夏木ちゃん」
「ありがとう!璃子ちゃん~」
と双葉さんを抱きしめた夏木。
そんな双葉さんを指をくわえて羨む、柊さん。
普段は不愛想なイメージだが、意外な一面を見てしまった。
俺の視線に気づいたのだろう、柊さんは普段通りに戻り、俺を睨みつけてきた。
俺は視線をそらし見てないふりをした。
あれは見なかったことにしよう。
ーー楽しい時間は圧倒間にすぎて、お開きの時間ーー
「片付けまで、手伝ってもらってごめんね」
「いいよ、楽しかったし」
「そうそう!」
皆を見ると、誰一人嫌な顔をしていない。
皆、心の底から思ってくれているのだろう。
「みんな今日はありがとう」
「こちらこそ、ありがとう!」
こうして、夏木の誕生日パーティーは大成功で終わりを告げた。
ーーその後ーー
「ありがとう。おにぃ。おかげで忘れられない思い出が出来たよ」
後ろから優しく抱きしめてきた夏木に俺はこう言った。
「どういたしまして」
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