53 誕生日当日
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本当にありがとうございます!
――夏木の誕生日当日――
ついにこの日が来た。
午前中
「末永さん上手いですね」
「そっかな?私は、白金君の方こそ、上手だと思うよ」
「えっ、そうですか!」
と飾りつけの装飾品を作っていた俺達は、互いに褒めあった。
そして……
「そっちの方、大丈夫ですか?」
「ちょっと、手伝って欲しいかも」
「分かりました!」
「あっ、白金君そっちの方、つけてくれるかな?」
「分かりました」
「白金君、椅子が動かないように押さえてくれるかな?」
「お安い御用です!」
俺達は今、サプライズパーティーを開くため、末永さんと、恵理に手伝いに来てもらっている。
末永さんには、飾り付けを、恵理には料理をやってもらっている。
そして、夏木には今、外に出て貰っている。
――朝――
「お誕生日おめでとう夏木。これ、ほんの少しだけど良かったら、このお金を使って、好きな物でも買ってきなよ」
と言い、俺は夏木に3万円を渡す。
これは、今まで、バイトをしてきたお金である。
今日の為に使うつもりでいた一部のお金である。
「えっ、こんなに貰えないよ。これ、おにぃが必死に働いたお金でしょ?」
「そうだよ。だけど、これは夏木の為に稼いだお金だから。だからこそ受け取って欲しい」
「うん、分かった。じぁ、ありがたく使わせて貰います!」
と言い、夏木は、綺麗な歯をみせ、満面な笑みを浮かべた。
その笑顔を見ると、今までの努力が報われた。
あぁ……今まで頑張って良かった……
と心の底から思えた。
その後、夏木はデパートに行き、今頃は自分の欲しいものを探している頃だろう。
――現在――
「白金君、こっちの飾りつけは終わったよ」
「うん、ありがとう」
飾りつけは無事に終わり、あとは料理だ。
料理は、パーティの定番メニューから、夏木が好きな物などを作ってもらっている。
「ごめんな、恵理。お前に料理を任せてしまって」
「別に構わないけど……」
俺の足を踏みつけると恵理はこう言った。
「末永さんとイチャイチャするのは、やめて貰えるかしら……とっても不愉快」
「別にイチャイチャなんてしてない!」
至って真面目に、末永さんと飾り付けをしたつもりだ。
これはとんだ濡れ衣だ!
「へぇーそれにしても、嬉しそうに末永さんとやっていたよね。末永さんが作った装飾品に対して、褒めるし、末永さんが、椅子を押さえてほしい、なんて言われたときは、末永さんのお尻に夢中だったよね?」
「別に、褒めるくらいは良いだろう……」
「なら、異性のお尻をニヤニヤしながら見ていた件はどうなのよ……」
「べ、別に、見てないし……」
「嘘は良くないな〜」
と言うと、恵理は、スマホを取り出す。
そして、ニヤリと笑いながら、俺に写真を見せる。
「これ、末永さんが見たらどんな反応をするのかな〜。もしかしたら、末永さんの事だし、結城に幻滅してしまうかもよ〜」
俺は恵理のスマホを取ろうとした。
こんな写真、末永さんに見られたら、終わりだ。
だが、ものの見事に、回避されてしまった。
なので……
「あの、その写真消して貰いませんでしょうか?恵理様……」
「そ・れ・な・ら」
あぁ!俺の馬鹿!また、恵理の言いなりになるとは!
また、しょうもない要求をしてくるだろ!
「今度、私の誕生日パーティを開いて貰おうかしら」
なんだ、そんな要求か……そんな事なら、お安い御用……恵理のパーティも開いて見せる!ていうか、恵理にも日頃お世話になっているから、開くつもりではいたが……
「あぁいいよ」
「えっ!本当!」
目を丸くし、驚く恵理。
そんなに予想外の回答だったのか……
そう思いながらも、恵理に俺はこう答えた。
「本当だよ。恵理にも、日頃お世話になっているからな」
「結城……」
恵理はさりげなく俺の方に近づいてきた。
なので、俺は恵理から離れた。
良い感じの雰囲気だからと言って、俺が恵理に流されるほど馬鹿ではない。
恵理は頬を膨らませ睨むが、俺には関係ない。
それよりも、今は料理に集中だ。
「ほら、恵理。料理に集中しろ」
「うるさい、結城こそちゃんとやりなさいよ」
「言われたくても」
その後俺達は黙々と料理に取り掛かる。
一切余計な会話はない。
そして、その姿を黙って見始めた末永さん。
「結城、それ取って」
「分かった」
「恵理、それ取って」
「分かったわ」
すると、末永さんが笑った。
「なんか、二人は熟年夫婦みたいですね」
「えっ、そうですか?」
あはは、面白い事を言いますね末永さん。
俺と恵理が、熟年夫婦!
どうしたらそう見えるのですか!
「なんか、二人の阿吽の呼吸を見ていると、そう見えてしまってしまうよ」
「俺達は、夫婦じゃなくて、ただの幼馴染だからですよ」
「そっか、そう言えばそうだったね……なら、白金君と長い時間を過ごしたら、私も、いつか、こんなふうになれるのかな?」
すると、末永さんは固まった。
そして、顔を真っ赤にし「今のは特別な意味はないよ!」と慌てた姿を見せた。
末永さんが慌て出したところが、気になった俺はすかさず問い詰めようと考えた。だが、それは一瞬の考えで、今は気にしないようにした方がいいかもしれない。
なにせ、さっきの発言で、明らかに機嫌を悪くした人が約一名、俺を睨みつけてくるからな……
俺は特に何も言ってないのだが……
さて、料理に集中だ。
「ほら、恵理も手を動かして」
「分かったよ」
そう言った恵理は、素直に手を動かしてくれた。
機嫌を悪くして、ナイフでも突きつけてくると思った。
はぁ……良かった
「さて、私も手伝おうかな!」
服をまくりやる気満々な姿を見せる末永さん。
末永さんに手伝って貰えるのは、嬉しいが……
「末永さんは、ゆっくりしていてください。ほら、飾り付けとかで疲れたでしょ?」
「いやいや、そんな事はないよ。それに、皆んなでやったほうが早いしね!」
と言うと、末永さんは俺の横にやってきた。
なんだか、末永さんと俺の距離が、近いような気がするが気のせいだろうか?
そんな事を思いながらも、俺達は料理に励む。
数分後
「白金君、これ、味見して見て」
「あっうん」
「はい、あーん」
茶々とアボカドサラダと、ドレッシングを作った末永さん。
俺に味見をさせようとしてくれるのは嬉しいのだが……
「えっと……こう言うは恵理とかの方がいいと思うけど……」
「駄目。白金君に味見して欲しいの」
と上目遣いで、可愛く言った末永さん。
可愛すぎる!
多分、末永さんと二人っきりだったら、一撃で、言いなりだろう。
だけど、この場には恵理がいる。それも機嫌が悪い
恵理は料理をしながら、「なんですって!」とキレる恵理。そんな恵理にお構いかく、ぐいぐいと「味見して下さい」と料理をすすめてくる。
「さぁ!食べて下さい!」
グイグイと勧められた結果、俺は、末永さんが作ってくれたサラダを食べた。
サラダは、普通に美味しいが、特にサラダにかかっている洋風のドレッシングは物凄く美味しい。
「うん、美味しい!」
「でしょ!」
と喜ぶ、末永さんとは対称的に、恵理は怒り爆発だ。
「なにさぁ!末永さんの料理ごときで!どうせ、大したことないでしょ!」
と恵理は末永さんの料理を侮辱しつつ、料理をする。
「恵理、口を開けてみろ」
「はぁ?何よ!」
俺は恵理の口に末永さん特製のサラダを食べさせた。
「うわ……なにこれ、美味しい……」
「そうだろ」
是非とも、このドレッシングのレシピを聞きたいほどの美味しさだ。
「夏木ちゃん喜んでくれるかな?」
「きっと喜んでくれると思いますよ」
「ならいいけど……」
不安そうな表情を見せる、末永さん。
だが、絶対に大丈夫だろう。
こうして、俺達3人は料理を作り、無事、夏木が戻ってくるまでに、料理を仕上げるのであった。
ここまでは、とても順調だ。
だが……まだ、あれが来ない……
そろそろ来ても良い頃だが……
「そういえば、誕生日ケーキはどうしたのよ?」
「そろそろ、宅配便で来るからだと思うけど……」
俺はケーキが届く伝票を確認した。
今日の為に日時と時間を指定したので、この時間にはくると思うが……
「結城……」
俺の手は、ブルブルと震えた。
や、やばいどうしよう……
到着日を間違えた……
俺は今、頭の中が真っ白になった。
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