52 パーティー
柊さんのパーティに参加した俺は、つくづく柊さんの次元の違いを知ることになる。
まず会場を見ると、沢山のご飯がバイキング式で並んでいる。
しかも、出張で板前さんがいるし、目の前でお肉を焼いている所もある。
こんなの、漫画の世界だけだと思っていたのに、まさか、現実に見る日が来るとは思っていなかった。
そして、ステージ上の上にある、たくさんのプレゼントボックス……
まさかあれらは……
「こちらにある料理はすべてタダです。皆さん、沢山食べてください。そして、ステージ上にあるのは、すべて、私から夏木さんの誕生日プレゼントです。私ながら、夏木さんが欲しそうなものを選んでみました」
「これ、本当に全部貰っても良いの?」
「はい。日頃の感謝です」
「恐るべし、柊家……」
と息をのむ、双葉さん。
双葉さんが息をのむのも納得できる。
日頃の感謝だけで、こんなにもプレゼントを貰えるとは……
鶴の恩返しより凄い状況ではないだろうか?
何回も言うが、柊さんのパーティはレベルが違いすぎる。
明日は俺が夏木のためにパーティーを開くと言うのに、これでは俺のパーティがしょぼくなるではないか!
ーー白金が想像する次の日のパーティーー
「夏木、誕生日おめでとう……」
「何、このしょうもないパーティー……」
「ごめん……流石に柊さんみたいなパーティは……」
「はぁ……おにぃの私に対する思いはこんなもんなんんだ……はぁ……私おにぃには幻滅したよ……」
的な事になったら、もう、俺は生きていけないよ!
あぁ!どうしよう!
なんて、事を思っていると俺の前に手を振りながら、双葉さんの顔が出てきた。
「あの、大丈夫ですか?お兄さん」
とお皿にたくさん盛られた料理を食べる双葉さんの姿を見て現実に戻さた。
て言うか、いつの間にそんなたくさんの料理を!
夏木の方を見ると、夏木は、柊さんとステージ上にあがり、プレゼントを開けている。
夏木を見ていると、とても嬉しそうにプレゼントを開けているではないか。なんだか、幼少期の時、俺と一緒にクリスマスプレゼント等を開けた時を思い出す。
しかし、夏木が持っている白のワンピース……
絶対にどこかのブランド物で、値段も高いやつだろう。
あれは一体、いくらするのだろうか?
お値段が気になるところが、夏木が持つワンピ―ス。
あれは絶対に夏木に似合う服だ。
夏木があの服を着ている所を想像するだけで、たまらなく可愛いのが想像できる。
何というセンスをしているのだろうか!流石、柊さん!夏木の事がよく分かっている!
少し、遠くから夏木を見ていると、夏木が俺に気づいた。
そして、笑顔で手を振る。
俺も手を振り返す。
今の夏木は、まるで手に届かないアイドルのようで、俺は、そのアイドルの推しをしているオタクのようだ。
すると、夏木に声をかけた柊さんが、どこかに夏木を連れて行った。
それと同時くらいに、双葉さんが俺の肩をツンツンと叩いた。
「あの!お兄さん。もう一度、確認なんですけど、ここにある料理は本当に全部ただですよね?」
「まぁ、柊さんがそう言っていたから、そうだと思いますが……」
「そうですよね!」
と机の上に皿を置き、また料理を取りに行く双葉さん。
てんこ盛りに盛られた料理を見るだけで、俺はおなか一杯になりそうだ。
柊さんの家に着く前にお菓子をたいらげ、ここに来た時にも、大量の料理を食べ、良くまぁ、また大量にご飯を食べるもんだ……
ある意味、恐るべし、双葉さん。
「頂きます!」
そんな俺を他所に、双葉さんは美味しそうに料理を食べるのであった。
ーー数分後ーー
柊さんが戻ってきた。
しかし、そこには夏木がいなかった。
柊さんはステージ上に、上がりマイクを取る。
「聞いてください皆さん。この後、着替えを終えた夏木さんが来ます。そこで、皆さんには夏木様にお祝いをしてあげてください」
すると、とてもでかいケーキが運ばれてきた。
まるで、ウエディングケーキだ。
ケーキがこの会場の真ん中に置かれると、ローソクがともされる。
そして、会場は暗くなった。
「もうじき、夏木さんが来ます。皆様、盛大な拍手を」
と会場の扉が開くと、それはそれは、どこかのお姫様みたいな綺麗におめかしをし、カチューシャと、とても綺麗なドレスを着ていた夏木が、スッポトライトを浴びて登場!
夏木は、俺達や、メイドさんたちに祝福されているが、とても恥ずかしそうだ。
まぁ、こんな目立って、色んな人に祝福されるのは、確かに恥ずかしいものだ。
それにしても夏木は知らぬ間に、ずいぶんと大人になったものだ。
つい最近まで小学生くらいの子供のようだと思っていたのに、知らぬ間に綺麗なドレスに似合う大人に……
おにぃ、今にも感激しそうだぞ!
今にも感激で涙を流しそうな俺なんかに気づくわけがない夏木は、バースデーケーキの前に立った。
そして、優しく息を吹きかけろうそくを消すのであった。
「夏木さん。改めてお誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。みんなのお陰で今日はとてもいい日です」
と満面な笑みをこぼした夏木。
その笑顔で、俺達も釣られて笑うのであった。
その後、俺達は、皆で仲良くケーキを食べた。
「う~んケーキ美味しいです~」
てんこ盛りに盛られているケーキを頬張るのは双葉さん。
さっきは、沢山の料理を食べていたが、まだ、ケーキをたらふく食べれるのか!?
一体、どんだけの胃袋をお持ちなのですか!
「ふぅ~たくさん食べた!」
ととても満足にてんこ盛りのケーキを食べきった双葉さん。
そんな双葉さんに呆れる、柊さん。それに対して夏木はにっこり笑うのであった。
「璃子ちゃん、頬っぺたにクリームが沢山ついているよ」
と言い、夏木が、双葉さんの頬っぺたについたクリームを取った。
「よし!私も璃子ちゃんに負けないくらい、ケーキや料理を食べて見せるぞ!」
と言うやる気を見せ、夏木はケーキを沢山食べ始めた。
こうして、楽しい時間も圧倒間にすぎ、夏木のパーティーは閉幕へと……
――閉幕――
「白金様、これを……」
「えっ、流石にこれは受け取れません」
「そのドレス、とてもお似合いなので、白金さんが貰ってください」
「えっ、流石にこのドレスは私に勿体なくて、受け取れないよ!」
「遠慮しないでください。このドレスは夏木さんが着るべきものなんですから」
「いや、そうじゃなくて……」
夏木が言いたいのはこうだろう。
このドレスは、とても高価そうなドレスで、受け取れませんと……
夏木のことはよーく分かる。だけど、柊さんが受け取って良いと、言うのだからお言葉に甘えるべきだ。
「夏木、そのドレスに合っていたぞ。それにそのドレスを貰う事で、いい思い出にもなる」
「おにぃ……」
「白金さんのお兄さんが言う通り、これはいい思い出にもなると思いますよ」
「なら……お言葉に甘えて……」
と夏木は、ドレスを受けて取る事になった。
こうして、沢山の思い出が出来た柊さんの誕生日パーティーは閉幕へと向かった。
そして、明日は俺の番だ。
「明日、楽しみにしていますから……」
と柊さんは、そう言い残し、俺達を見送った。
阿部さんが運転する車の中で、俺は思った。
柊さんよりは、壮大なパーティは開けないだろう。
だが、俺は諦めてはいない。
むしろ闘志が湧いた。
だけど、夏木が「おにぃ」のパーティの方が良かったよと言われるようなパーティを開ける自信はある。
だから、柊さんに負けるつもりはない。
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