29?
これはある日のバイト先でのこと。
「突然呼び出してすまない白金」
「いいえ……」
と言う感じで俺は天野店長から急に呼び出された。
一体なんなんだろう?
と最初は思っていたが、事務室に入ってすぐ、俺が呼び出された理由が分かった。
「白金、お前には悪いのだが、またこの新人の面倒を見て欲しいのだが、お願いできるか?」
「別に構いませんけど……」
「そうかなら、この子を頼む」
と天野店長に任されたが、俺の本音はこうだ。
断りたい!
だが、天野店長のお願いだ。
だから、いつもお世話になっている人のお願いを断るわけにはいかなかった。
多分、これが天野店長じゃなければ、即答で断っていただろう。
と俺が思うにはこう理由がある。
「初めまして私の名前は、高城一葉と申します。これからよろしくお願いします!」
と自己紹介をしたのは、一葉。
どういうことか、一葉とバイトが一緒になってしまった。
運命とは怖いものだ。
どうして一葉とバイトが一緒になってしまうんだ……
と言いたいところだが、一葉は俺がいることを知っていて入ってきたのでは……
という疑惑が俺の中で浮上し、事務所を出た後、一葉を問い詰めた。
だったのだが、本当に偶々だったらしく、一葉も最初俺に会ったときは、顔や態度には出さなかったものの相当驚いたらしい。
という事を最初に聞き、こうして俺は一葉の面倒を見ることとなった。
そして、約一週間後。
一葉は完璧に仕事を覚えるのであった。
と言うのも、一葉は前の高校でもこう言うバイトをしていた経験もあり、レジ打ちや接客は教えることがないほど完璧。
そして、ポテトを揚げたりする裏方作業は、最初はてこずったものの2日目には完璧になり、7日目くらいになると、もう俺を超えてしまっているのでは……と思うほどの裏方も完璧にこなせていた。
――ある日の昼休憩中――
「白金先輩~今から一緒にご飯食べましょう~」
と俺の横に来るなり体を寄せ付け、俺を誘惑してくるのは一葉。
多分、神崎先輩や他の先輩なら簡単に落とせるだろう。
だが、俺は違う。
「一葉、俺のこと馬鹿にしている?」
学校とは違い、一葉の態度はバイトに来ると変わる。
こうやって可愛こぶっては、どさくさにまぎれて俺にベタベタと触ってくる。
その態度や行動が一葉らしくないし、この態度は一葉にとって良くない。
こんな態度が続けば、きっと一葉の事を良く思ってない人が出てくるかもしれない。
そして、一葉が嫌がらせなどされるなんてこともあり得る。
だから今のうちになんとかいつも通りにしなければ!
と言う思いを含みながら、俺は一葉を注意しようと思っていたが……
「馬鹿になんかして無いですよ~」
と俺の耳元に一葉はこう囁く。
「ただ、結城は先輩だから、この時間だけは可愛い後輩キャラを演じさせて。ねぇ白金先輩」
とにっこり笑った一葉。
そんな一葉に俺はもう、呆れるしかなかった……
「あっ、白金先輩、そのお姿素敵ですよ」
と言い残し一葉はバイト先へと戻っていた。
それからのこと一葉は、可愛い後輩キャラを演じ続け、そして挙句のはてに、俺と一葉はバイト帰り一緒に帰ることとなった。
外も暗く、「先輩、私一人じゃあ怖いから一緒に帰って貰います〜?」なんて、神崎や葵先輩などのバイト仲間がいる前で言われたら当然、断れるわけがなかった。
「先輩、今日頑張ったご褒美に私の頭を撫でて貰います?」
これでもし、後藤さんと何かあっても俺は知らない。
絶対に助けない!
と思いながら、俺は一葉に「よしよし、今日はよく頑張った」と言いながら一葉が満足するまで、頭を撫で続けるのであった。
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