30
蒸し暑い日も、日に日に少なくなり、秋が近づいてきた。
そして、新たなイベントが始まろうとしていた。
それが文化祭。各クラス一つの出し物を出し合う行事で、鉄板的な出し物と言えば、お化け屋敷やかぐや姫みたいな劇、後は外に焼きそば屋といった屋台を出すクラスもある。高校入ってからの初めての文化祭。一体、俺達クラスは何になるだろうか?楽しみだな!
そして、一時間の話し合いの結果、俺達クラスは、ちょっと変わった出し物を出すこととなった。
それが、カフェ。ただのカフェではない。
午前はメンズカフェ、午後はメイドカフェに変化する喫茶店だ。
4人ずつの30分交代制で、全員参加できるようになっている。つまり、必ずこのカフェの店員として参加しなければならない。俺みたいな陰キャラも出ないといけない。
当日、出たくないなーわざと、休もうかな……
数日後のロングホームルームにて
このカフェの内容を実行役員から話があった。
そして、俺が聞いたことを説明させて貰うと……
まず店員として立つ順番は役員が決めた順番で行うそうだ。
役員が言うには、バランスが必要だのこと。
俺達が自由で決めたら絶対、陰キャは陰キャで陽キャは陽キャで固まることとなり、陰キャが固まっている時間帯は地獄のカフェと化す。
それを懸念した、役員がそれを阻止するため役員側で決めるらしい。
はい次!
次は、カフェの出し物だ。
どうやら俺達のクラスのある人物の親が、喫茶店を経営しているらしい。
そして、そこからコーヒーメイカーを借りられるそうだ。
そしてパンケーキの材料。
これはクラス全員で出し合うことに
これで、コーヒーや、何種類かのパンケーキを出す予定だそうだ。
ちなみに、パンケーキは役員と何人かの女子を集めて、どういうパンケーキを作るか、近日相談があるらしい。
まぁ、そこには島崎さん達も含まれているから、多分、若い人向けのパンケーキを作るだろう。
とここまでが、俺達がやるカフェの内容であるが、基本的に何もやらなくてもいい生徒が多い。
勿論俺もその一人だ。
やるとしたら、本番の時に借りる教室の掃除や準備を事前にするだけだ。
後、パンケーキの試食があるくらいだ。
と言う感じで時は過ぎ、とうとう本番まで来てしまった。
最初はわざと休もうかと考えたが、一葉が俺の家に来てしまい俺は一葉の手によって強制的に行くことになってしまった。
そして、開店。
俺はしょっぱなから、従業員役をやることとなってしまった。
最初は、面倒なぁと思ったり、お客さんとどう接していいのか戸惑った。
だが、やっているうちに俺は気づいた。
これは、バイトでやっていることをここでも活かせばいいのだと……
それに気づいた俺は、ここでバイトの経験を活かした。
その甲斐もあってか、最初は乗り気ではなかったこの出し物も、意外に楽しいと思えるようになった。
案外、この出し物も悪くない。
と思った矢先。
「すみません~」
とお客に呼ばれた俺はお客さんの方へと向かう。
すると、ニヤニヤしながら俺を見る一葉がいる。
それと末永さんまで!
「ごめんね白金君。ちょっと高橋さんに捕まってしまって」
と謝る末永さん。
一葉ともかく、末永さんがいると緊張してしまうし、なんだか恥ずかしい……
全く、一葉も余計なことを!
と思いながら俺は一葉と末永さんにコーヒーを運ぶ。
「お、お待たせしました」
とコーヒーを持ってきたが、末永さんがいる前で緊張してしまっている。
その結果……
「あっ、ごめんなさい!」
やらかしてしまった。
俺は末永さんにコーヒーを掛けてしまった。
俺は急いで布巾をもってくる。
「すみません!末永さん」
「大丈夫ですよ」
と言う末永さん。
だが、絶対に大丈夫ではない。
末永さんは気づいていないかも知れないが、今、末永さんの制服はコーヒーによってびしょびしょ。
そして、俺はあることに気づいてしまった。
末永さんの濡れた制服から水色の下着が透けている。
神様ありがと!……じゃなかった
これは早めに処理しなければ!
「ちょっと結城、私にも少しかかったんだけど……」
と睨みつける一葉。
今は一葉に構っている場合ではないと思いながら一葉を見る。
だが見る限り、濡れているように見えない。
けれど、思っている事を言えば、余計に一葉の機嫌を悪くさせるだけなので、一応、もう一枚予備で持っていた布巾を渡す。
「ごめん。一葉」
と渡し俺は末永さんの方を見る。
今は一葉に構っている暇はない。
「すみません末永さん。あ、あのクリーニング代しっかり出しますので」
「これくらい大丈夫だよ」
と言う末永さんだが、俺からしてみれば今の末永さんは大丈夫では無い!
けれど、どう言えば良いのだろうか?
「ねぇ!結城!ねぇ、結城てば!」
と一葉が俺を呼ぶため、俺は一葉の方を見る。
「どうした?」
と一葉を見ると不機嫌そうに俺を睨みつける。
そして、俺を手招きし、一葉はこう言った。
「あんた末永さんの下着ばかり見ているんじゃないわよ……」
「もしかして気づいていた?」
「それは丸見えだもの」
と一葉も気づいていたようだ。
なので、俺は一葉に助けを求む。
「一葉!末永さんに言ってあげてくれ!」
「はぁ?!嫌よ!」
と言うが末永さんのため!
ここはやっぱり一葉に言ってもらうべきだ。
「頼む一葉!後でなんでもお願いきいてあげるから!」
「なんでもお願いを聞くんだね?」
これも末永さんのため!
たとえ俺がどうなっても末永さんが恥ずかしい思いをしなければそれで良しだ!
だから、一葉の問いかけは!
「うん、聞く!」
そう言った一葉は「はぁ……」とため息をついた後、末永さんにこう言うのであった。
「末永さん……ちょっと」
そして、一葉は末永さんの耳元に「下着見えてますよ……」と言ってくれたのだろう。
末永さんは、顔を真っ赤にした。
そして、立ち上がったと思えば自分のロッカーに向かい、体育とかで使っていると思われるジャージを出すと、教室を飛び出て行った。
「これでいい?」
「まぁ、良いと思う」
どうあれ、これで末永さんを救うことが出来たからよしとしよう。
まぁ、そもそも俺が飲み物をこぼさなければ良かったのだが……
こうして、俺の出番は終わった。
――その後――
「さぁ、今から回るぞ!」
「お!」と言う元気な掛け声に合わせ俺は一葉と一緒に文化祭を回ることとなった。
一葉は俺を引っ張り色んな所に連れまわす。
お化け屋敷に脱出ゲーム。子供向けだろうと思われるミニゲームを出していた教室にも行った。
後は体育館でやっている劇に外でやっている屋台の方まで隅から隅まで回ったと言ってもいいだろう。
そして、俺と一葉は自分の教室へと戻った。
もうクタクタ!帰りたい!
「結城!ありがとう!私、今から出番だから頑張ってくる!」
「うん、頑張って」
どうやら、この後に一葉の出番らしい……
これでやっと解放される!
と心の中で俺は喜ぶのも束の間
「結城!後でカフェに来てね!」
と言う事で俺は、一葉から解放されることなく、一葉が従業員役をやっているカフェに行くことなった。
一旦、俺はお手洗いを済まし、また教室に向かう。
すると、一葉が教室の外で待っている。
それもさっきまでとは違う服装で
俺は一葉に声を掛けた。
すると、一葉は恥ずかしそうにこう言った。
「どう、似合っているかな?……」
男子の場合は制服だったが、女子は希望者のみメイド服を着用出来る仕組みだったらしく、一葉はメイド服を選んだらしい。
「似合っているよ。その服装」
「ありがとう」
とにこっと笑った一葉。
すると、一葉は俺の手を引っ張りこう言った。
「さぁ!入って!」
と一葉に引っ張られる形で俺は教室へと入った。
「おかえりなさえませご主人様」
と一葉に引っ張られる形で迎えられた俺はこう思う。
俺は今、楽園にでも来ているのだろうか?
周りを見渡せば、綺麗な女子生徒ばかり。
コーヒーの匂いと共に微かに匂う、女子生徒のいい香り。
俺は一葉に案内されたところに座る。
「お待たせいたしました。ご主人様」
と俺にコーヒーを渡してきてくれたのは、末永さん。
末永さんは今、メイド服を着ている。
その姿がめちゃくちゃ可愛い!
「どうかな?白金君……」
「それはもう、似合ってます!」
「あ、ありがとう」
と言うと、末永さんは顔を真っ赤し、静かに俺のそばから離れていった。
「お待たせ致しましたご主人様」
と一葉の声がしたと思えば俺の机にオムライスが置かれた。
だが、こんなメニュはなかったはずだが……
「一葉、こんなメニューなかったよね……」
「いいえ、ご主人様。これはメイドカフェ限定商品でございます。ご主人様は知らなかったと思いますが、これはお客様を驚かせるため私達、女子生徒が考えたサプライズ商品でございます。そして、私達が異性に告白するチャンスでもありますのよ……」
と言うと、一葉はケチャップを取り出す。
そして、「愛している」と書き、一葉はこう言った。
「ねぇ、結城。もし良かったら私と付き合ってくれませんか?」
と一葉はしゃがみ込み俺の手を優しく握った。
俺は今、一葉から告白を受けた。
俺には勿体なすぎる美少女。
正直、俺なんかと釣り合わないほどの美少女。
だが、俺は告白を断る!
だって、彼女と彼氏の関係とかなんだか、めんどくさい。
それに一葉とはこの関係でいたい。
と思っているのだが、やばいかもしれない。
裏方の方に目を向けると、女子達が盛り上げっているのが見える。
て言う事はだ。
もし、そんな状況下で「ごめんなさい。無理です」なんて言ったら、このサプライズも台無し、おまけに女子生徒には反感を買う可能性もありえる。
そんな中、一葉がにっこり笑う。
なんだか、その笑顔から嫌な予感がする。
まるで、「もう拒否権はないよ」と言わんばかり見られているような気がする。
まだ確信ではないが、これは一葉が仕掛けた罠かも知れない。
あまりにも、一葉にとって好都合な状況下だ。
「そろそろ返事くれないかな?」
と俺を見つめる一葉。
もう、考えている時間はない。
だが、俺の予感が的中しているならば、一葉の思うつぼだ。
なんとかして、打開しなければ!
とこの短時間のうちに打開策を考える俺だが、何も思いつくはずがなかった。
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