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今日は期末テスト二日目。
そして、最終日だ。
午前中の科目も順調に終わり、残すは英語だけとなった。
いつもは賑やかな教室も、今は緊張感に包まれている。
それだけ、みんなが真剣なのだと伝わってきた。
「それでは、答案用紙を裏返して。始め!」
先生の号令とともに、最後の試験が始まった。
俺はひたすら問題と向き合う。
昨日、原田さんと一緒に勉強したおかげか、驚くほどすらすらと答えが浮かんだ。
手が止まる問題は一つもない。
そう言い切れるほどの手応えがあった。
これも、昨日の勉強があったからだ。
あの時間がなければ、ここまで自信を持って問題を解くことはできなかっただろう。
すべての問題を解き終えると、残りの時間を使って隅々まで見直した。
記入漏れもない。
間違えていると思う箇所もなかった。
これなら、完璧だろう。
あとは、いい結果を待つだけだ……。
やがて終了を告げるチャイムが鳴った。
こうして俺は、確かな手応えを残して二日間の期末テストを終えた。
――帰りのホームルーム前――
最後の試験が終わったことで、教室はいつもの賑やかさを取り戻していた。
今日は午前中で下校となり、部活も休みだ。
そのため、あちこちから午後の予定を相談する声が聞こえてくる。
友達同士で遊びに行く約束をしている生徒も多い。
まぁ、俺みたいなぼっちには縁のない話だ。
俺はいつもどおり、ラノベを開いた。
今日は学園を舞台にした恋愛ものだ。
俺もラノベの主人公みたいに、一度くらい恋をしてみたい。
そんなことを思いながら読み進める。
だが、いまいち内容が頭に入ってこない。
近くにいる島崎さんと小林さんが、テストの答えを巡って騒いでいるからだ。
「だから、あそこは三番だって!」
「えー、絶対に四番でしょ!」
あまりの騒がしさに、俺は本から顔を上げた。
島崎さんと小林さんが騒いでいるのは、いつものことだ。
だが、今日は一つだけ違っていた。
普段なら二人の輪にいる原田さんが、そこにいない。
気になって斜め左後ろへ視線を向けると、原田さんは自分の席で机に突っ伏していた。
一体、どうしたのだろう。
俺はトイレへ行くついでに席を立ち、さりげなく原田さんの様子をうかがった。
けれど、原田さんは顔を伏せたまま、まったく動こうとしない。
原田さんは英語が苦手だと言っていた。
もしかして、テストの手応えがなかったのだろうか。
昨日、天野店長に教わりながら、あれだけ真剣に英語と向き合っていた。
それを知っているからこそ、余計に気になった。
それに、俺がここまで手応えを感じられたのも、原田さんと一緒に勉強したおかげだ。
声をかけようか迷っていると、島崎さんが原田さんのそばまで近づいた。
だが、原田さんが伏せたまま小さく首を横に振ると、島崎さんは伸ばしかけていた手を止めた。
小林さんと顔を見合わせ、そのまま二人とも自分たちの場所へ戻っていく。
友達である二人がそっとしているのなら、俺が割って入るのも違う気がする。
俺なんかが声をかければ、かえって原田さんを困らせてしまうかもしれない。
そう思い、今はそっとしておくことにした。
それでも、やはり原田さんのことが気になった。
俺は本を読んでいるふりをしながら、何度も斜め左後ろを盗み見る。
けれど、原田さんは休み時間が終わるまで、ずっと机に伏せていた。
帰りのホームルームが始まる直前になって、ようやく原田さんは顔を上げた。
だが、斜め後ろからでは、その表情まではよく見えなかった。
そして、帰りのホームルームが終わると、島崎さんと小林さんが原田さんのもとへ向かった。
三人は短く言葉を交わし、そのまま教室を出ていく。
結局、声をかけることはできなかった。
一体、さっきの原田さんはどうしたのだろう。
まぁ、もう教室にいない以上、今は聞くこともできない。
次に会ったときに聞いてみよう。
そう決め、俺も教室を出た。
今日はバイトもないため、午後は暇だ。
真っすぐ家に帰って、録りためたアニメを見る。
キンキンに冷えた炭酸飲料と、お菓子を片手に……。
期末テスト終了を祝う、一人打ち上げだ。
そんな計画を立てながら校門を出た俺は、途中でスーパーに寄り、いろいろなお菓子や炭酸飲料を買って家へ向かった。
――自宅――
家に帰ると、俺は買ってきたお菓子を机いっぱいに広げ、録りためたアニメを再生した。
一本、二本と続けて見たあとは、今日のために取っておいた新作ゲームを起動する。
「よし、やるか」
俺はコントローラーを握り、ゲームを始めた。
だが、ふとした瞬間、机に伏せていた原田さんの姿が頭をよぎる。
何でもなければいいけど……。
気にはなったが、今の俺にはどうすることもできない。
俺は再びゲームの画面へ意識を戻した。
それから何時間プレイしていただろう。
気がつけば、窓の外は夕暮れに染まっていた。
今日は夏木の帰りが遅い。
たまには俺が夕飯を作って、ほかの家事もやっておこう。
そう思ったのだが、その前に少しだけ寝ることにした。
一時間後にアラームを設定し、俺はベッドへ横になる。
期末テストへの不安から解放された反動なのだろう。
急にまぶたが重くなり、俺はあっという間に眠りへ落ちていった。
「おにぃ、起きて。ねえ、おにぃってば」
聞き慣れた声とともに、誰かが俺の肩を揺らしている。
重たいまぶたを開けると、頬を膨らませた夏木が立っていた。
「……夏木?」
「やっと起きた! それより、これ。いい加減片づけてくれる?」
夏木が指さした先には、お菓子の空き袋やペットボトルで散らかった机があった。
「ごめん、夏木。今から片づけるよ」
「分かればよろしい!」
そう言うと、夏木は部屋を出て、キッチンへ向かった。
やがて、冷蔵庫を開けて食材を取り出す音が聞こえてくる。
結局、俺が夕飯を作るより先に、夏木に台所へ立たれてしまった。
俺は急いで机の上を片づけると、せめて夕飯の支度くらいは手伝おうと、夏木の後を追った。
「そういえば、おにぃ。期末テストはどうだったの?」
「今回は、かなりよかったと思う」
「本当? じゃあ、赤点は回避できそう?」
「たぶんな」
「その『たぶん』が一番怪しいんだけど」
「大丈夫だって」
今日の手応えなら、きっと大丈夫だ。
赤点を回避して、夏木と夏休みにいい思い出を作ってみせる。
待っていろよ、夏木!
そう意気込んだ俺だったが、机に伏せていた原田さんの姿だけは、夜になっても頭の片隅から消えなかった。
読んでくれてありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!




