Lesson4.パーティー
貞男は冒険者登録を終えてギルドカードを貰った。
レナーは
「ステータスは攻撃力、防御力、スピードなどが普通の新人よりかは上ですね……何か鍛えられていたんですか?」
と聞かれて貞男は照れながら
「あ、はい」
と言うとレナーは
「そうですか、魔力の方が少し少ないですね……まあ適正はあるみたいですので頑張って訓練すれば戦いの幅も増えますよ?」
と笑顔で言った。
ギルドカードには魔法は土属性の適正あると書かれていた。
そして、貞男は
「えっと……誰か魔法に詳しい方って紹介して貰えたりしますか?」
と聞くとレナーは
「それは自分で探してくださいね、コミュニケーションも大切ですよ? それでは私はこれで……」
と言ってレナーは自分の仕事に戻った。
貞男は
(なるほど……甘かった……自分の事は自分でか……自由職の冒険者らしい)
と納得した。
そして、肉を食べているエールと酒を再び飲んでいるミールの元へと戻った。
ミールは
「どうだった?」
と先程と違いあまり酔っていなかった。
貞男は
「あれ? さっき酔っていなかったっけ?」
と聞くとミールは
「ああ……解毒薬草をつまみにしてる!」
と笑いながら言った。
エールは
「お前なア……それも金が掛かるっていうのに……」
と呆れていた。
ミールは
「自分で稼いだお金なんだもん! 良いじゃん!」
と言いながら解毒薬草を食べた。
貞男は
「それってつまみとして美味しいの?」
と聞くとミールは
「うん、意外と美味しいよ?」
と解毒薬草をムシャムシャ食べながら言った。
エールは
「こいつは肉も好きだがハーフエルフの血もあるから野菜も好きなんだよなあ……」
と言うと貞男は
「念のために聞くんですけど……そういうのって中毒とか大丈夫ですか?」
と聞くとエールは
「まあ異世界人だから仕方ないかもしれないが……そんなことで中毒になったら頻繁に使うクエスト受けたら皆中毒ってことになるぞ……」
と顎を手に乗せて肘を机に乗せながら言った。
貞男は
「そっそうですね……すみません」
と言うとエールは
「で? どうだったんだ? お前のステータスは?」
と興味津々に聞いた。
そして、貞男は
「ああ……これです」
と言ってギルドカードをエールに渡した。
エールは
「おいおい、自分のギルドカードを人に渡すなよ……個人情報が載ってんだぞ? そのまま勝手に奪われて借金作られたら困るのはそっちだぞ?」
と注意をした。
それを聞いて貞男は少し真っ青になって
「ごっごめんなさい……てかそんなことが実際にあったんですか? ……」
と震えながら聞いた。
ミールは
「うん、あったよ……その人は今どこで何をしてるんだろうねえ……確か新人でクエストを受けようとするときに怖い人達が現れてそのまま連れていかれて」
「止めてええ!! 聞きたくない!」
と少し震えながら言った。
そしてエールは
「まあお前のステータスはもう見たし俺はそんなしょうもない事しねえよ……そんな屑行為したら女にモテねえじゃねえか」
と手に合ったギルドカードを貞男に返した。
貞男は
「こっこれからは気を付けます、すみません」
と謝り、懐にしまった。
エールはそれを聞いて
「いや、お前の事なんだから別に俺に謝らんでいいよ……誤って欲しいわけじゃねえし……只の先輩として危ない目にあるかもしれないから気を付けろって意味だよ……だからそこは謝るんじゃなくて分かったで良いんだぞお」
とアドバイスした。
貞男は
「はい……分かりました」
と言って頷く。
貞男は
(確かに今のは自分の不注意だ……普通に考えれば分かる事なのに……俺ってこんなに馬鹿だったっけ……)
とさすがに落ち込んだ。
エールはそれを見て
「まあ変に落ち込むな……テンション上がって前が見えなくなるのは分かるしな……取り敢えずお前も冒険者になった訳だしパーティーはどうするんだ?」
と尻を掻きながら聞いた。
貞男は
「えっと……取り敢えずは色んな人に声を掛けてみて入れて貰おうかと……そこぐらいは自分で頑張ってみたいと思っています」
と真剣に言った。
それを聞いてエールはニヤッとしながら
「そうか! 分かった! 行ってこい!」
と言いながら送り出す。
貞男は
「はい!」
と言ってそのままパーティを組む為に、ギルドを回り始めた。
ミールは
「さてと、上手くいくと思う? お父さん?」
とほくそ笑みながら言うとエールは
「うーん……どうだろうなあ、まあ一度経験すれば分かるだろ」
と顎を触りながら笑っていた。
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貞男は
(取り敢えず……あのパーティーはどうだろうか……新人パーティーの集まり感がある……貫禄のある人達と何か違う新人感が)
と少し安そうな防具と使い古したような剣を持っている者、コテコテの魔法使い感のある服装と僧侶であろう者がいた。
そして、貞男は
(うおおお、緊張するなア……だが! いつまでもジッとはしてられない! 行くぞ! 今行くぞ! さあ! 行くぞ!!)
と緊張して動こうとしなかった足を持ち上げてそのパーティーに向かった。
そして
「あ、あのお!」
「?」
「あ……転生者」
「チート君」
と貞男の方を見て3人は反応した。
貞男は
(チート君って……まあいいや)
と少し引っ掛かる言い方をされたが気にせずに
「あのお……僕を皆さんのパーティーに入れてください!」
と頭を下げた。
(さすがにここで俺って言えば生意気だと思われるか偉そうだと悪印象を与えるかもしれない……只でさえ転生者ってこの世界ではあまり良い評判はなさそうだし……)
と考えながらお願いした。
すると3人はお互いに見合って
「あのお……何と言いますか」
「申し訳ないんですが」
「ちょっと……無理ですかね……」
と断られた。
それを聞いて貞男は
「えっと……もう一人ぐらい剣士は入れて貰えたりも出来ないですかああ……」
とさすがに言いにくそうに頼んだ。
すると剣士の少年は
「すっすまない……俺もその……チートに手柄を取られてしまうのは……」
と目を逸らしながら言った。
貞男は
「いやいや! さすがにそんなことは!」
と慌てながら手を振ったが剣士は
「お前はそう思っても他の奴らはそう思わないんだよ……転生者ってだけで……ほら実績は凄いわけだし……それで国の人も皆どうせこのパーティーは転生者のお陰で成り上ったんだろうなあだとか当たり引いただけじゃねえかだとか人任せで恥ずかしくないのかだとか言われてしまうんだよ……本当……すまないが」
「でも! 俺別に魔剣は使うつもりは! そう証言すれば!」
と何とか入れて貰おうとするが、
「いや……魔法使いの私が言うのもなんだけど……話を合わせただとか私達が無理矢理そうさせただとか悪い噂を……」
と魔法使いの少女も目を逸らして言った。
それを聞いて貞男は
(うあああ……ヤベえ……これはしつこくするとなんか……)
と考えて
「あの……すみません……ご迷惑を掛けて」
「いや」
「こっちこそ……」
「せっかく声を掛けて貰ったのに……」
と3人と貞男は気まずそうに頭を下げて謝りあった。
貞男は
「い……今のはさすがに新人過ぎる人達だったから駄目だったのかな……まあ確かに転生者だと力があるっていうイメージがあるだろうし……少し強そうなパーティーに……行けるかな……」
と独り言を言いながら次は貫禄のあるパーティーに声を掛ける。
「あのおお……」
「あ」
「転生者」
「チート持ち」
と複数人の体の大きい男達がいるパーティーに声を掛けた。
人数は6人ぐらいであった。
貞男は
「すみません! 僕をパーティーに入れて貰えませんか!」
と頭を下げる。
すると
「悪い」
「無理だ」
「手柄を横取りされる」
「転生者はちょっとなあ」
「後から入った奴にチームワークを崩されるのは」
「俺らもう十分強いし」
と色々な理由を言われて
「……すみません」
と今度は謝る事しか出来なかった。
貞男は
「つ……次は……」
と真っ青になりながら目に着いたパーティーに
「ぼっぼくをおお……パーティーに
とフラフラしながらお願いすると
「あのお……僕らにはもう声掛けてますよ……」
と先程の新人パーティーにまた声を掛けてしまっていた。
「ごめんなさい」
と言って謝った。
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そして
「どうして……なんでえ……パーティーが決まらない……もうワンマンプレイするしかないのかあ……」
とエール達の元へと戻り机に項垂れていた。
それを見て
「お前……まだ2パーティーに頼んだだけだけど……もういいのか?」
と気まずそうに聞くと
「まさか……断られることがこんなにも苦痛とは……日頃の人見知りが……人とのコミュニケーションを怠ってきた分が今ここで発揮されて……」
と目を逸らしながら疲れたように言った。
それを見てミールは
「うおおお……何かこっちまで申し訳ない気分だ」
とさすがに申し訳なさそうに言った。
エールは
「まあ俺等も止めなかったしな……」
と貞男の頭を撫でながら言った。
「まあ転生者でワンマンプレイをする人間が多いからな……そりゃ武器だったり能力がかなり強いと他のチームとバランスが悪くなってチームワークというメリットが活かされない……その部分を不安に思うのは正直分かる……まあお前の場合は魔剣だからそれを使わなければ何の問題もないんだけどな」
と言った。
貞男は
「後……何か手柄を立てても転生者から奪った者扱いされるって本当ですか?」
と聞くとエールは
「ああ本当だ、貴族達にとって転生者は兵器なんだよ……だって普通は倒せないモンスターの進行なども止めれるしどんな驚異的な化け物の誕生も一発で倒すことが出来るし、ドラゴンだって瞬殺だ……そんな実績を残してしまったら他のパーティーには入れないだろうなあ……それにもうすでに信頼関係のある場所に入ろうとするとそれは邪魔でしかない」
と説明した。
貞男は
「確かに……俺のいた世界でも部活動で途中で入ると輪を乱すことになるしなあ……」
と自分がいた世界を事も合わさって現実的に難しいと分かった。
ミールは
「確かに……後……ハーレムとか考えてない?」
と見透かされたように言った。
それを聞いて貞男は
「そっそんなことは……」
と戸惑いながらも答える。
ミールは
「考えてたな」
と鼻で笑いながら言った。
そして
「これを」
と言って一つの本を出した。
貞男は
「えっとこれは……」
と聞くとミールは
「どうせ転生時に文字も読めるようにされてるでしょ? 読んでみたら分かるよ……タイトルだけでも」
と言うので貞男はその本の大きく書かれた文字を読んだ。
『転生者のハーレムに入って私の人生は狂わされた』
とそこには書かれていた。
そのタイトルを読んだだけでも貞男は物凄く嫌な予感がした。
しかし、気になるので時間を掛けて読んだ。
とそこには彼女は最初に出会った町や戦い、そして王国で結婚するところなど最初は幸せな物語が進んでいた。
結婚の後も幸せそうなハーレム達と転生者とのラノベでも良く読む和気藹々とした素晴らしい新婚生活を読んだところで一変した。
彼女は突然夜伽の相手にされなくなったと書かれていた。
そして、転生者は自分の嫁だけでは飽き足らず他のところからも女性を連れてきては夜伽を行い妊娠させていた。
一方作者は一向に夜伽の相手にされず、運よく相手にさせて貰っても作業の様に終わらされて自分の不満はたまる一方で会った。
そして、相手にされなくなったのが原因なのかそれとも自分はそもそもそういう体質なのか妊娠する記述は一切なかった。
ドンドンと自分以外のハーレムが子供を持ち出産して幸せそうにする。
他からやって来たハーレム達も自分より先に子供を授かる。
そんな生活に耐えられなくなった作者は暴走して一人の妊娠したハーレムを殺してしまったと書かれていた。
そして、その後彼女は捕縛されて拷問を受けてゴミの様に捨てられて浮浪者同然の様に過ごした。
彼女は復讐を誓ったが勝てず、足の腱を斬ってしまい動けなくなった。
彼女は牢獄に入れられてそこで自分の日記を作成した。
そして、最後にはこう書かれていた。
『嫌だ嫌だ嫌だあああ!! 死にたくない死にたくない死にたくないいい!!! こんな!! こんなはずじゃああ!! 私は特別なの! 圭太に選ばれたの! それなのに!それ何いいいいい!! どうして! どうして! どう……』
そこで物語は終わっており最後にこう書かれていた。
『彼女の日記から解読できるのはここまでです……彼女はどうしてこうなったのでしょうか……どうすれば幸せを掴めたのでしょうか……いったいどうしてこんな悲劇が生まれたのでしょうか……転生者に出会ったのが間違いだったのでしょうか? それともハーレムを容認した国が悪のでしょうか? それとも……』
とその記述を残して本は終わっていた。
それを読んだ頃にはもうすでに日は沈みかけていた。
貞男は
「……ふうう……重」
と一言言った。
それを聞いてミールは
「うん、重いよ」
と真顔で言った。
貞男は
「どれぐらい売れたの?」
「大ヒットして書物ランキング今は……5位くらいかな」
「結構読まれてるんだ……」
「ベストセラーだからね」
とミールの話を聞いて貞男はハーレムは無理だと考えた。
エールは
「残念だったな! 転生者でモテるのは最初の圭太という男だけだ! 他はもうその事件のせいで誰もモテなくなったぞ!」
と現実を突きつけられた。
それを聞いて
「……うわあ……俺はいったいどうすれば……」
と頭を抱えて悩むと
「真っ当に生きればいいんだよ、こいつみたいな生活をしないで運命の人を見つけた人はいるから、女にモテはしないが良い人は見つけている人はいるから……そこを目指して頑張れ」
と励ました。
貞男は
「こんなもの読ませて……まあ分かってないよりかは良いですけど……でもそれを考えるとパーティーどうしよう……このままだろ本当にワンマンプレイするしか……もうチート使わないとか言わないでおこうかなあ……」
と悩んでいるとエールは
「だから! 俺等がお前をパーティーに入れてやるよ!」
と二カッと笑いながら言った。
それを聞いて貞男は
「え?」
とキョトンとした。
貞男は
「えっと……俺と組むと色々と手柄とかが奪われるんじゃあ……嬉しいんですけど……良いんですか……」
と困惑しながら聞いた。
するとエールは
「ああ、大丈夫だぜ! 俺はもうすぐ引退の身だからな~手柄を奪われようが関係ないんだ!」
と問題はないと言った。
ミールは
「私もさア! お父さんが引退したら一人になるんだよねえ、それに私今は冒険者見習いで他の冒険者について行って体験をするっていう形で登録してるんだよねえ……まあ後1年後には晴れて冒険者に慣れるんだけどお父さんの引退に間に合うかどうかが微妙なんだよ」
と苦笑しながら言った。
貞男は
「因みにいつぐらいに引退する予定なんですか?」
と確認するとエールは
「そうだなあ……そこに関してはまだ決まっていないが取り敢えずはもう少し頑張るかなあ」
と悩みながら教えてくれた。
貞男は
「えっと、まだ正確に日が決まっていないってことですか?」
と質問するとエールは
「そうなんだよ……俺はまあ歳だけど実力があるからお願いされることがまだあってだなあ……そう簡単に引退出来ないんだよなあ……まあさすがに2年後には止めたいとは思ってるが……娘の今後の事もあるし娘を安心して預けられるパーティーにお願いしたいとは考えているんだあ……そのパーティーにお前がいてくれたら助かるんだけどなあ……?」
とお願いするように言った。
それを聞いて貞男は
「えっと……俺で良いんですか?」
と照れながら聞いた。
すると
「!! いいに決まってるだろ! ダメだなんて思うか! お前は結構良い奴っていうのは関わってきて分かったしよ! お前に預けれる方が安心だ!」
「やった! 私の将来も安泰だあ!」
と二人は大喜びする。
貞男は
「えっと……じゃあお願いします」
と照れながら頭を下げた。
それを見てミールは
「良し! よろしく!」
と言って握手する。
エールも
「これからもよろしくな! 今日からお前の教育係は俺だからな!」
と言って嬉しそうにする。
それを見て貞男は
「あ……こちらこそ! ありがとうございます!」
と言って嬉しそうにお礼を言った。
エールは
(よし! やったぞ! これでギルド長からの御願いも達成出来る! 自分と同じぐらい活躍出来るパーティーを頼まれたときは困ったが、こいつは見込みがありそうだ!)
と思いミールは
(よし! お父さんの仕事も達成されつつありし! 私もパーティーを組めて安心! 皆幸せだ!)
と考えた。
そして、二人も手を差し出して
「「これからもよろしく!」ね!」
と言って握手した。
貞男は未だに二人の心の奥底までは気づくことは無かった。