Lesson2.ラブハンター証明書
エールは少しほろ酔い気分で
「取り敢えず安い宿屋の場所を案内してやるよ!」
と言って貞男をミールと共に案内してくれた。
貞男は
「ありがとうございます」
と言ってお辞儀する。
ミールは
「まあ後ひゃい君の為だひね! よろおひく!」
と言って酔っぱらいながら千鳥足で歩いていく。
エールは
「おいおい、危ないぞミール……貞男! すまないが肩を貸してやってくれ!」
「え……はい」
と言ってエールに言葉を素直に聞いてミールに肩を貸す
「えへへへ、ありがひょう」
と言って酔っぱらいながら貞男の肩に寄り掛かる。
「大丈夫ですか……って酒臭い!」
酒の匂いが貞男の鼻を刺激する。
そして、
「ここだ! 取り敢えずここに泊れば金も少なく宿泊出来るぜ! 俺が口利きしておくよ!」
と笑いながら言った。
そこは質素だが落ち着く雰囲気の木を材料とした宿屋であった。
貞男は
「なんか……何から何まですみません」
と言って頭を下げてお礼をする。
それを聞いてミールは貞男の貸りながら
「いいってっころひょ!」
と言って涎を貞男の肩に流す。
貞男は
「うわあ」
と言って肩の涎を見て嫌な顔をする。
エールは
「入るぞお」
「いらっしゃい……ってエールじゃねえか! どうしたんだ今日は!」
そこには筋肉質でツルッとした頭で髭の生やして白い服を着ている強面のオッサンがいた。
エールは
「よお! ライドル! 久しぶりだな! 今日はちょっと俺の知り合いをここに泊めたくて口利きに来たぜ!」
と言った。
それを聞いてライドルは
「ほおお、お前が……ってミールちゃん大丈夫か? 水の飲むか?」
「だいひょうぶでええす!」
とべろべろのミールを心配するがミールは手を振りながら笑う。
すると
「うぷ!!! 気持ち悪い!」
「あああ!! っやばいやばい!!」
と貞男は慌てて
「袋! もしくはトイレ!」
と叫ぶとライドルは
「トイレはそこだ!早く行け! ここで吐かれると掃除が大変なんだ!」
と叫ぶ。
貞男は慌ててトイレに入り込んだ。
トイレは年季が入って少しボロい造りにはなっていたが綺麗に掃除されており落ち着く感じがする場所であった。
しかし、それどころでなく、ミールが限界であった為、便器にミールの口を近づけさせて
「おべええええええええええええ!!」
とミールは吐く。
ゲロの匂いが貞男の鼻に漂い
「うう!! 俺も!! なんか!」
と口を手で押さえる。
先程の食べ物と飲み物が胃液によって無理矢理喉まで押し上げられるが
「うううう……うん!」
と何とか胃の中に押し戻した。
そして、ミールは
「ハアハア、ありがとう……」
と顔を真っ青にさせながら話し掛けてくる。
貞男は
「いいから口濯いで! 臭い凄いから!」
と鼻を押さえて臭いを嗅がないようにした。
ミールは
「はい……」
と言って嗽をしてゲロの匂いを落とす。
その後、トイレを出て
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛気持ち悪かった……」
と言って二人で出てきた。
エールは
「全くお前は飲み過ぎだよ」
と言ってミールの頭をポンっと叩く。
ミールは
「へへへ、ごめんなさい」
と言ってミールは苦笑する。
エールは
「まあ取り敢えずあいつの宿泊だが」
「ああ、初めての奴にはいつも割引してるよ、どうせ大抵は金を持ってなかったりするしな」
と呆れながら言った。
ライドルは
「とにかく……その坊主を泊めてやればいいんだろ? おい坊主! お前名前は! どこから来た! 宿帳に書いておくから言え!」
と大声で言った。
貞男は
「童多 貞男です……えっと……転生で今日この世界に降り立ちました」
と言った。
それを聞いてライドルは
「またか! 本当に最近多いな! お前は部屋が汚いとか言って文句言ったりしないよな!」
と少し怒り気味言った。
それを聞いて貞男は
「えっと……部屋の具合によりますけど……まあ安く泊めて頂くのにそこまで失礼なことは言いたくはないと思っています」
とビクつきながら言った。
それを聞いてライドルは
「まあいい! 取り敢えず部屋に案内する」
と言ってライドルは先に歩いていく。
貞男は
「あ! ハイ!」
と言って慌てて階段を上りライドルを追い掛ける。
そして、ライドルはドアを開けると
そこはボロくはあったが、疲れた冒険者を包み込むような安心感のある部屋であった。
部屋には花の絵があり、木の机とフカフカの毛布があるベッド、黒いクローゼットがあった。
まるで実家にでも帰ったような心地い空間であった。
貞男は
「いい部屋ですね……なんか父の実家を思い出します……」
と初めて入った部屋に何故か懐かしさを感じていた。
ライドルは少し驚いたような表情をしてその後笑いながら
「ハハハ、気に入ってくれたありがとさん」
と頭を下げる。
ライドルは
「あんた転生者だから嫌がると思ったけど……なかなか良い目を持っている……最近来る転生者はこの部屋を見るなり文句を言ったりするからな……」
と少し嬉しそうにする。
貞男は
「マジですか……この良さが分からないとは……」
と少し情けなくなる。
ライドルは笑いながら
「まあお前さんは気に入ったんだからいいさ! で! 一つ聞くんだが飯は自分で用意するか? それともこっちが作ったもんを出すか?」
と質問してきた。
貞男は
「え、作ってもらえるんですか?」
と聞くとライドルは
「ここは冒険者の寮も同然に作られた宿屋だからな、金さえ払えばちゃんと用意するぞ!」
と言った。
それを聞いて貞男は嬉しそうに
「お願いします!」
と頼む。
ライドルは力こぶを見せながら
「よっしゃ! 任せておけ! 皆朝の7時に起きて食べるから遅れんようにな! 遅れたら飯は下げるからそこは気を着けろよ!」
と笑いながら言った。
貞男は嬉しそうに
「はい!」
と返事をする。
貞男は高校生の為、大学生の寮生活などにも多少なりとも興味があった。
そして、これから始まる生活に胸を躍らせていた。
そして、宿泊費と食事付きで5000バラードを支払った。
※1バラード=1円の設定である。
そして、エールは
「じゃあこれで宿屋は大丈夫だな! 明日は少し時間あるか?」
と聞いてきた。
貞男は
(おそらく冒険者登録があるとかそういうのかな……いや、武器も買わないとだからそれも付き合ってくれるのか? せっかくの冒険者の先輩からのお誘いだ! 行くべきだろ!)
と考えて嬉しそうに
「大丈夫です!」
と返事をする。
エールは
「そうか! じゃあ明日はしないといけないことがあるから9時に町の大きな銅像の前に集合だ! 遅れるなよ!」
と言われて貞男は
「はい! よろしくお願いします!」
と言って頭を下げる。
ミールは
「じゃ! 明日ね!」
と言って手を振ってエールと共に帰っていった。
貞男は
「俺の異世界転生1日目……少し予定とは違うがだがファンタジーの世界に……俺来たのかあ……」
と異世界転生を噛み締めていた。
ライドルは
「初々しいなあ……あまり無理するなよ」
と言って肩を叩いて
「じゃあ晩飯にするぞ! 食堂に案内する! 着いて来い!」
と言ってドシドシと歩いてく。
貞男は
「はい!」
と言って異世界の食事への期待に胸を膨らませながら一緒に食堂へと向かう。
ライドルは果実水と肉を置いた。
貞男は
「これは何の肉ですか?」
と聞くとライドルは
「ケルベロスの肉だ」
と指を差して言った。
貞男は
「ケルベロス……俺の世界では地獄の門の番犬だとか聞いたことがあるが……さすが異世界」
と言って少し見つけてフォークを刺して口に運んだ。
すると
「うお! 旨!」
と言って口の中に広がる油、何かを飲んで食べたくなる濃厚さ、貞男は果実水を飲んだ。
「うおお! 合う!」
と言って果実の甘酸っぱさがケルベロスの濃厚な油を流して後味をスッキリとさせる。
そして、肉と果実水を交互に食べながら飲む。
見事にマッチしておりいくらでも食べれそうな感覚になった。
「おお! なんかこの組み合わせ良い!」
と言ってお肉を頬張り果実水を飲む。
ライドルは手に持っている物を見せて
「これをかけてみろ!」
と言ってその手にある物を貞男は貰い、肉にかけた。
赤い粉が肉にかかり、貞男は食べてみると
「おお! 辛みがあって味が変わる! ヤベえ! うめえ!!」
と言って一気に食べ切る。
そして
「ふうう、いつの間にかお腹いっぱいだあ……」
と言って満足感へと誘われる。
それを見てライドルは
「良かったよ、料理を作って美味しい美味しいって言われて食べて貰えるなんて何年振りか」
と懐かしそうに言った。
貞男は
「あまり言って貰えないんですか? 美味しいのに」
と聞くとライドルは
「まあ食事なんてもんはずっと食べてれば慣れて来るもんだ……そうなると大抵の者は美味しいと言わずにただ食べるだけになるんだよなあ……まあそれでも残さずに食べてくれるのは嬉しいがな」
と言った。
貞男は
「えっと……俺以外の転生者はどんな感想を言っているんですか?」
と気になった為ライドルに聞いた。
するとライドルは険しい表情で
「美味しいって言わない、まずいとも言わんが」
と言った。
それを聞いて貞男は
「そっそうですか……」
と少し気まずそうにする。
そして、ライドルは
「まあ他にも来るからサッサと風呂に入れ! 早いもん勝ちだぞ!」
と言って貞男は
「はい!」
と言ってすぐにお風呂へと入った。
そこは戦闘と同じような風景でお風呂に浸かり体を洗いスッキリとした体で自分の部屋に戻り布団へと潜った。
貞男は
「いやあああ……ナンパを見つけた時はテンプレ出来ると思ったけど……まあなかなか異世界も悪くないと言った一日だった……ナンパしている奴でも話はした方が良いんだなあ……意外と悪い人でもなさそうだし……この良い宿屋も紹介して貰えて……今日は……疲れ……た…」
と言ってそのまま眠りに着いた。
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次の日
貞男は
「ヤベえ……転生前の目覚ましって本当に便利だったんだなあ……あの音のお陰でなんか目覚めないとと思う部分があるが……それが無いだけでもうすぐ7時なのに……まだ寝ていたい……」
と寝ぼけながら時計を見た。
貞男は朝起きることは苦手ではなかったが、いつも目覚ましのアラームが鳴るまで寝るという癖があった為、いつまでも寝てしまいそうになっていた。
そんな時であった。
カンカンカン!!
と7時になった瞬間金具同士を叩きつける音が鳴る。
そして
「お前等ああ! 飯だ! 飯だぞおお!」
とライドルの声がした。
貞男は
「なるほど……モーニングコールがあるのか……助かる」
と思い何とか立ち上がり着替えて食堂へと向かった。
朝はパンとスクランブルエッグが出てきていた。
貞男は
「この卵って……」
と昨日の異世界の食べ物と思い期待を寄せて聞いた。
ライドルは
「うちで育てている鶏だ」
「なるほど」
全てが全て異世界独特の生物が食材になっているわけではなかった。
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貞男はその後食事を終えてエール達の街場所へと向かった。
貞男は
「大きな銅像……大きな……あれか!」
と呟きながら周りを見ると明らかに目立つ銅像があった。
貞男は
「今頃だけど地図とか貰ってなかったから大丈夫かと思ったけど……あの大きさなら分かるなあ」
と言って両手を上げて立っている王冠を被った男の銅像へと向かった。
そして、数分後
「おお! 貞男! 待たせたな!」
「ヤッホー! 貞男!」
とエールとミールが二人歩いてくる。
貞男は
「いえ、大丈夫です!」
と元気よく返す。
エールは
「いやああ! 二日酔いでこいつがまた吐いたんだよ!」
「お父さん! 止めてよ! また転生者の人にゲロイン認定されるじゃない……」
「それはもう手遅れでは……」
と二人の会話に貞男はついツッコんでしまう。
そして、エールは
「まあこいつがゲロインなのはいつもの事だ! 気にするな! とにかく! 今からある場所へと連れていく!」
と言って手を上げながら
「こっちだ」
と言ってエールは手招きをする。
貞男は
「はい!」
と言って後ろをついて行く。
ミールは
「ちょっと! 私はゲロインじゃないよおお! こんなきゃわいいハーフエルフを前に何言ってるの!」
と言って追いかける。
そして、数分間街を見ながら歩いていると人るの大きな建物があった。
そこには異世界語で何か書かれていた。
貞男は
「すげえ……異世界後が読める……」
と初めて異世界の言葉を読むことに少し感動した。
そこにはこう書かれていた。
『ラブハンター申請所』
「……ラブハンター……申請所」
「付いて来い」
「ちょ!」
とすたすたと歩いていくエールに貞男は慌てながらついて行く。
そして、エールは迷いなくそのラブハンター申請所へと入っていった。
そこには
「いらっしゃいませ、ってエールさん! 今日はどうされました? 総会はまだ日にちがありますが?」
と一人の事務員の女性がいた。
その女性は金髪の長い髪に丸眼鏡を掛けて明らかに事務員だと分かるような制服を着ていた。
そして、エールはその事務員の女性に
「いや、総会でなく新しいラブハンター新人を連れてきた」
とキョトンとする貞男を置いてけぼりにして勝手に話を進める。
事務員は
「そうですか、ではこの用紙にお名前と生年月日と住所を記載してください」
と言って書類を渡される。
貞男は
「あの……エールさん……これは……」
と聞くとエールは
「何って……ラブハンター証明書の申請書だよ」
と言った。
貞男は
「いや! 何でラブハンターの証明書! 何それ! てかラブハンターの証明書って何!」
と怒りながら聞いた。
エールは
「なんだよ……やかましいな……まさかこの街で好き勝手にナンパが出来ると思うのか? そんなことをしたらラブハンターの治安が悪くなるだろ……ナンパがしたいならまずここで登録をだな」
「いや! 登録をだなって当然のように言ってるけど! そもそも別にナンパがしたくて俺異世界に来たんじゃないんだけど!」
とエールの説明を遮ってツッコんだ。
それを聞いてミールは
「え? じゃあ女の事付き合ったりしたいとは思わないってこと?」
と聞いてきた。
貞男は
「いや……別にそういう意味じゃないけど……」
と言うがミールは呆れて
「まさか冒険してたら自然に彼女が出来ると思ってるの? そんな訳ないじゃん、自分から声を掛けなければ彼女なんて出来ないよ? それに女の子とパーティーを組む事もナンパの一環だからこの証明書が必要になるんだけど?」
と自分のラブハンター証明書を見せてきた。
それを見て貞男は
「パーティー組むだけでもそれ必要になるの……」
と少し面倒くさそうに言った。
それを聞いてエールは真顔で
「おいおい、まさか女の子が男のパーティーに当然のように入ってくれるとでも思っているのか? そんなことがあるわけないだろ……男のパーティーに女の子が入っているのは口説き落とすか身内ぐらいだぞ……それに身内なら余所の男が入ることに敏感でかなり厳しいチェックが入った上で入れるかだ! 入ったとしても女の子との距離はもはやパーティーに入っている意味あると思えるぐらい距離が開いた状態がずっと続いて寧ろしんどいぞ?」
と言った。
それを聞いて貞男は
「えっと……つまり女の子とパーティーに入れるには女の子をナンパなり何なりして口説き落とす方法ぐらいしか距離を縮められないってこと?」
とキョトンとして聞いた。
エールは
「ああ、そうだぞ、それにこの証明書が無いとパーティーに女の子を入れることも出来ない……理由はそれで揉め事が起こるからなんだ……それを防ぐためにこの証明書と守って貰いたい事項を守るんだ、女を口説いてもし他のパーティーに入っている場合はすぐその子を諦める事とか先にナンパしている人がいれば横取りしないとかそういう大切な事項を守ってこの街の男や女はナンパをしているんだ」
と言った。
それを聞いて貞男は
「女もラブハンターするんだ……」
と言うとエールは呆れて
「当たり前だろ? あいつ等だって別に興味が無いわけではないんだ……良い男を見つければ同じ事項を守ってナンパしたりするんだよ! 逆ナンだよ! 逆ナン!」
と言った。
ミールは
「そう! これがラブハンター証明書! これがあれば自分の身分証明書にもなるよ! エロ本も買えるよ!」
と笑いながら言った。
その言葉に貞男は顔を赤くして
「いや……別に興味ないし」
と強がるがエールは
「いや……普通にそれはあり得んだろ……その年でそれに興味ないとかもはや狂気だぞ……まさか! お前ムッツリだな!」
と笑いながら言った。
それを聞いて貞男は
「いや! それは! その……」
否定が出来ず顔を赤くして醜態を晒していた。
ミールは
「別に恥ずかしがることないですよ~! だって! そういう年頃の男の子ってそういうものですし~!」
と言ってニマニマしながら貞男の頬を突っつく。
貞男は
「いやその! だからちが!」
「はいはい、そんなことはいいから早く書類の記載事項埋めてくださいね」
と言って事務員はあたふたしている貞男に書類を渡した。
貞男は
「いや! だから」
と言い訳をしようとすると
「ああ!」
と鋭い眼光で事務員は睨み着ける。
貞男は
「いえ……何でもありません」
と涙目になりながら書類を受け取った。
エールは
「あいつは怒らせるな、結構怖いから」
とコソっと耳打ちすると
「何か言いました? エールさん?」
と同じように鋭い眼光をエールに飛ばす。
エールはビクッと一瞬して
「いえ……何でもありません」
と一言答えた。
そして、貞男は
「終わりましたあ」
と言って書類を事務員に渡した。
事務員は書類に目を通して
「はい、確かに……転生者のラブハンター証明書は初めてですね、奴ら許可も取らずに他のラブハンターの獲物を横取りして苦情が殺到しているんですよ……はあ」
と少しストレスを感じているのか頭を抱えて溜息を付いた。
それを見て貞男は
「あの……なんかすみません」
と謝罪する。
事務員は
「! あ! いえ! すみません! 貴方はちゃんと登録してくれたのに! こちらこそ! すみません! ……それではこの書類を渡しますのでこの事項はちゃんと守ってくださいね」
と言って封筒に入れられた書類を貞男は受け取る。
そして、封は開いているのでその場で書類の内容を確認した。
するとそこのはこう書かれていた。
『事項
ナンパをするさえに守って欲しい規則があります。
①ナンパをする際は相手が彼氏持ちもしくは彼女持ちかを確認しましょう。
②ナンパをした際は法律に背かない限り好きな方法をお取りください。
③自分の彼女もしくは彼氏がナンパをされている際は相手を刺激しないように話し合いで解決しましょう。
④自分の彼女もしくは彼氏でなく狙っていた子がナンパされている場合は止めることは控えましょう、横取りなどの違反行為もしくは、相手との喧嘩はしないようにお願いします。
⑤お酒を飲んでいる場合でのナンパは禁止です。相手を酔わしてナンパするのも禁止にします。
⑥犯罪などの行為をナンパの際に起こすと証明書の利用を剥奪させられます、なので冷静にナンパしましょう。
以上の点を踏まえてラブハンターライフを謳歌してください。
と書かれていた。
それを見て貞男は
「へえ、ナンパでもルールを設けてるんだなあ、でもここまで徹底されていると寧ろ安心なのかあ」
と少し感心していた。
それを聞いてエールは
「まあそれを知らない転生者共はお前の様に邪魔してくるけどな……そして、横取りしてくるから結構反感を買ってるぞ」
と注意してくる。
ミールは
「そうそう、ラブハンター証明書を持っていることで冒険者達からもうこいつは安心だと思わせるようにしないとギルドであまり良い目で見られることは無いよ?」
と肩を叩いて言った。
それを聞いて貞男は
「あの……その……ありがとうございます」
と言って照れる。
エールは
「良し! ラブハンター証明書も発行できたし! 次行ってみよう!」
と言って首に手を回して貞男を引っ張って歩き出す。
ミールも
「いやあ! 楽しみだ!」
と言って笑ってついて行く。
貞男は
(こういう冒険者も……なんか悪くないかも……)
と少し嬉しく思いながら歩いて行った。
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「さ! ナンパして来い!」
とエールは笑いながら凄く綺麗な女性に指を差して貞男に言った。
それを見て貞男は
「待て……どうしてそうなる」
と顔を引き攣らせながら言った。
ミールは
「そりゃナンパするからでしょ?」
と言ってキョトンとする。
貞男は
「いや! ちょっと待て! 普通に考えると次は冒険者ギルドでの登録だろ! それなのに何でここに来てナンパ! 意味が分かんねえよ!」
と顔を赤くしながらツッコむ。
それを聞いてエールは呆れるように
「あのなあ……確かにお前はまだナンパに慣れていないだろうけど……だからこそ好機なんだよ」
と話す。
ミールは
「そうそう、ビギナーズラックって言葉知ってる?」
と聞くと貞男は
「初心者が持つ幸運だっけ?」
と聞くとエールは
「そうだ! それに幸運だけでなく今の弱々しさを使ったナンパだってある!」
と言った。
ミールは
「ええ! お父さん本当! 知りたいなああ! ねえ知りたいよねえ!」
とあからさまな演技で貞男に同意を求める。
貞男は
「いや俺は……」
と言って冷汗を掻きながら断ろうとするが
「ええ! 何だって! とっても知りたいだってえええ!」
とミールに勝手に言葉を変えられてしまう。
エールも
「そうだよな! お前も男だものな! 知りたいよなああ!」
ともう何を言っても勝手に語りだす雰囲気を出していた。
それを聞いて貞男は
「ああ……はいはい……知りたいですよお」
と呆れるように言った。
エールとミールは嬉しそうに
「そうかそうか! 知りたいかあ!」
「仕方ないなああ!」
と言って話し出す。
「まず! 女の人にナンパするだろ!」
「いやあん!」
と二人は勝手に演劇もどきを始めた。
明らかに大根役者だった。
「彼女お! 俺と一緒に遊ぼうよお!」
「ええ! 私強い人とじゃないと付き合いたくないのお! 貴方見るからに弱そうだし声も震えてるんだけどおお?」
「えええ! 震えてないよおお!」
「なあ、それまさか俺のマネですか? エールさん……馬鹿にしてます?」
とエールは自分のマネをしているのか、その演技にかなりイラっと来たがエールは
「まあまあ、取り敢えずは見ておけよ」
と言って笑って誤魔化す。
そして、エールとミールの演劇は再び始まる。
「じゃあ強くなるよおお!」
「へえ……あんたが? 出来る者ならやってみればいいんじゃない?」
と言って二人は少し距離を開ける。
そして
「聞いてくれ! 俺! 冒険者になったよ!」
「えええ……本当になったのお……馬鹿ねエ」
と言って再び二人は距離を開けて、
ミールはエールの方を見て
「へえ、ちょっとは強くなったじゃない……どんだけ私こと好きなのよ……馬鹿……好き!」
と言って抱きしめる。
そして、エールとミールはドヤ顔で
「「分かったか!」」
と貞男に向かって言い切った。
貞男は
「うん、全然」
とはっきり答えた。
エールは
「おい何でだよおお! 何で分かんねえんだよ!」
と文句を言って
「そうだそうだ! 普通今ので分かるだろ!」
とミールはブーブー文句を言った。
貞男ははっきり
「いや! 今ので何を分かれと! 結局何が言いたいの! 弱いまま話してそして次に会ったとき強くなったったことを見せるってこと? でもそれって冒険者になってからでも遅くないだろ!」
と的確に文句を言った。
するとエールは
「やれやれ、違うんだなあこれが」
と呆れながら言った。
ミールは
「全く、これだから経験ないものは」
と言って首を振る。
貞男は
「めちゃくちゃ言いやがって」
とイライラしながら話を聞く。
するとエールとミールは
「いいか? 女っていうのはな! 男が自分の為に一生懸命になっている姿にキュンってくるんだよ!」
「そうそう! だから冒険者になる理由もその人に釣り合う為に頑張る姿を見たいんだよ! 女の子っていう者は! 自分だけを特別扱いしてくれる男性にキュンて来るの!」
と貞男に説明する。
貞男は
「うーん……そうなの……そうなのかなあ……」
と唸りながら返事をする。
エールは
「そういうものなの!」
と言って貞男は
「まあ確かにそういう話は聞いたことあるけど……そんなに上手くいくものなのかなあ……」
と不安がった。
ミールは
「全く! 男ならもうガツンって行こうよ!」
と言って貞男を押す・
貞男は
「分かったって! 押すなよ! 行くよ行けばいいんでしょ!」
と言って取り敢えず納得する。
そして、丁度良く綺麗な女性が歩いてきた。
エールは
「チャンスだ! 行けえ!」
と言って肩を
バンバン
と叩く。
貞男は
「痛! 分かったって叩くなよ!」
と言って取り敢えず女性の方へと歩いていく。
そして、貞男は震えをぐっとこらえて女性の前に立つと
「きっきみいい……お茶でもどおおお……」
とたどたどしく話し掛ける。
すると女性はフッと笑いながら
「ごめんなさい……私彼氏いるので」
と言ってその場を立ち去った。
ルールにのっとり彼氏がいる場合はその場で諦めなければいけないという事項を書いた書類が役に立った。
貞男は
「あ……はい……すみませんでしたあ……」
と言ってその場を後にしてエール達のところに戻る。
そして
「惜しかったな」
「後ちょっとだったのに!! 悔しいい!」
と二人は悔しがる。
貞男は
「いや……何がちょっとですか……明らかに失敗でしょ」
と言うとエールは
「まあまあ! 次行ってみよう! そのうち度胸が着くって! そしたら今より上手くいくから! まずは数を熟すんだよ!」
と言った。
それを聞いて貞男は
「もう止めたいんですが……」
と言うがミールは
「馬鹿野郎! 今始めたばかりだろ! 男が一度の失敗でくよくよするな!」
と言ってナンパを強行させられた。
そして
「ごめん、彼氏いるので」
「私結婚しています」
「子供もいるのでそれはちょっと……」
結果は散々だった。
貞男はすっかり塞ぎ込んだ。
そしてエールとミールは
「ヤバいなあ……やらさせ過ぎた。」
「どうするお父さん……この人……」
と言うとエールは
「放って置くのもあれだろ、慰めるぞ」
と言って二人は
「ほらほら大丈夫だよおお! 大丈夫! 次があるって!」
「そうだよ! 女は世の中にいっぱいいるよおお!」
と言った。
貞男は
「分かってるよ! もお!」
と言って怒りながら立ち上がる。
そして
「さっさと冒険者登録しましょうよ! もういいでしょ! 疲れました!」
と言うとエールとミールは気まずそうに
「そっそうだな!」
「登録登録! 大切!」
と言って一緒にギルドへと向かった。
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そして、ギルドの大きな建物に到着した。
建物は古いレンガだがかなりいい造りにあっていた。
豪勢な扉から沢山の筋肉質な男性や筋肉質な女性、エルフにドワーフに獣人等などが笑いながら入り口に入ったり出たりと行き来していた。
そして、中に入ると食事処で食べたり飲んだりしている者達や依頼板を見つめている者達がいた。
貞男はそれを見て
「おおおお! スゲええ! ファンタジー!」
と興奮していた。
エールは
「さっきより興奮してない?」
と笑いながら言うと
「本当だね、塞ぎ込んでいたのもどこかへ飛んだみたいだあ~」
ミールも笑いながら言った。
すると
「おや、エール殿!」
「おお! ギルド長! 今日はこいつを入れたくてな!」
と言って貞男を紹介する。
ギルド長は
「ほう、この坊主が……良い筋肉をしているが……実践をした事のあるような体つきではないがな」
と顎を摩りながら貞男を見ながら言った。
貞男は
「あ……はい……確かにそういう事はしたことは無いです」
と気まずそうに言った。
それを聞いて
ギルド長は
「まあそうだろうな……目を見る限り人を殺すなんてしたこともないだろうな……まずは他の冒険者とついて行って慣れるところから始めることを進めるぜ!」
と笑いながら言った。
そして、エールは
「まあ、それはそのうちな! まずは登録からだ!」
と言ってギルド長に話す。
ギルド長は
「分かった! 俺の名前はベルグガだ! これから頑張ってくれよ!」
と言って
「おーーーい! 登録する者がいる! 後はよろしくなああ!」
と言って受付の方を見て言った。
そして、一人の受付嬢は明らかな営業スマイルで
「はああい!!」
と言って歩いてくる。
すると
「あ」
「あ」
「……」
と受付嬢と貞男は固まった。
エールはやっちまったという表情をした。
ミールは笑顔を張り付ける。
すると
「ああああ! 貴方! 私にナンパした人!」
「ああ! 私もされたああ!」
「私もおおおお!」
とギルドにあった食事処にいたウエイトレスが数人叫んだ。
受付嬢も
「私もされました」
と言った。
するとベルグガが貞男を睨みながら
「どういうことかね……これは?」
とドスの効かせた声で言った。
貞男は
「いや……その……」
と動揺しているのでエールはすまなそうに
「あのおお……すみません……俺がやれといいました」
と顔を引き攣りながら言った。
ミールも
「あははは! 私も言っちゃった! ごめええん!」
とへらへら笑いながら言った。
それを聞いてベルグガは一瞬で理解したような表情で
「はあ……あんた達なあ……後輩になる冒険者にそういう事をやらせるなよ……全く……どうせいつもの様に無茶振りしたんだろお……」
と頭を掻きながら呆れていた。
そして、
「なあ、こいつらが絡んでいることみたいだしあまり気にしないでやってくれないか」
「あの……本当にごめんなさい」
と貞男は真っ青になりながら謝った。
それを見てナンパをされた女性たちは
「あ……はい」
「えっと……分かりました」
「まあその別に……この人達のいつもの悪ふざけですし」
「気にする必要ないですよ……こちらもすみません」
と言って物凄く気まずい雰囲気になった。