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第三話

~前回までのあらすじ~

墓守の初仕事を終え、[ジャックオーランタン]への第一歩を踏み出す。

更に初の転生をしたり、輩に絡まれたりと、バラエティに富んだ体験もした。

 昼飯を済ませDIYを再開する。

 ログインし、マサに連絡を取り数分後に合流する事になった。

 ログアウト前、大金が手に入ったので勿論Lv上げに費やし、Lvを51に上げ、食事を取り万全の状態に、残金は約700円と寂しくなった。

 後はマサを待つだけ…、と待機してたらマサから数分遅れるから待っててくれと連絡が来たので、OKと返し、ギルドで依頼を物色中に声を掛けられた。

「あのぉ…少しよろしいですか?」

 声の主に視線を向けると、其処には魔法使いの格好をしたプレイヤーが居た。

 声質から見た目通り女性プレイヤーなのだろう。とりあえず話を聞くことに。

「自分に聞いてるのかな?なんでしょう」

「私はユキっていいます。宜しければパーティーを組んで頂けませんか?」

 おっと、パーティーのお誘いか、まあマサも断る事は無いだろうし、事後承諾させれば良いか。

「もう一人男が来るが構わないかな?良いならこちらからもお願いしよう」

「あ、はい、大丈夫です。よろしくお願いします」

 ユキさんの了承も得たので、俺も名乗り、パーティーを組み、マサが来るまでお互いの基本戦法を伝えようとしたらマサが到着したので、()()まとめて自己紹介する事にした。

「お待たせ、一人連れが居るが良いよな…ってそっちにも連れが居たか」

 聞くとマサも準備中に声を掛けられ、俺と全く同じ流れで今に至る様だ。

「初めまして、アコです、よろしくお願いします」

 改めて俺とマサが名乗り、ユキ(呼び捨てで良いというので)も名乗る。

「今は見えないが、俺は使い魔を主軸としたデコイを担当するよ」

 まあ数に物言わせた柔軟性がウリだが、前衛や支援も違うからそういう事にした。

「次は俺だな、見た目と違って中衛後衛が主なポジションだ」

 女性陣が二人とも首をかしげるが、こればっかりは見た方が早いのでそう言っっておく。

「私はキャスターです。使える魔法は二種類しかありませんが、手数と火力はそれなりに有ります」

 まあ見た目から魔法使い然した格好だもんな、何気に本格的な火力職と御一緒するのは初めて…では無いな、ルーカスなんか超火力に手数も凄かったしな。

「私はアーチャーよ、移動速度もウリだから射線確保も容易だし援護は任せてね」

 アーチャー。銃が普通に登場するこのゲームにおいて、弱いのかというとそうでは無く、弓は飛び道具の火力最高峰らしく、銃より影響を受けるパラーメータやスキルが多いのが要因なのだとか。

 それぞれ出来る事出来ない事を申告し、陣形を決めた。

 基本俺が敵を釘付けにし、マサがそれを引き剥がし、ユキがデカいのを決める。アコ(呼び捨てで良いと言ったので)は露払いや止めを担当する事に。

 陣形も決まったとこで改めて二人のアバターを見る。

 ユキは黒髪ショートのローブを纏った魔女風、アコはライトレザーを付けた軽装で、緑髪の狩人といった感じの出で立ちだ。

 所詮アバターとは言え、二人とも中々の美人で、冴えない野郎とゴツイ見た目の野郎アバター二人組に花が添えられた形で、気分が良いな。

「さてと、何処に行こうか?希望はあるかな?」

 三人がせーので出したのが森だったので、森に向かった。


「なるほど二人とも前衛系と組みたかったから声をかけて来たのか」

「ええ、やっぱアーチャーは敵と距離があってなんぼだからね、通りかかったマサ君に声を掛けたのよ」

「私も同じね、近づかれると無力なので抑え役が欲しかったの」

 道中そもそも何で、声を掛けて来たのかを訪ねて、帰って来た答えがコレだ。

「本来は壁役じゃないんだけどね、まあ何とかするよ」

 そんなこんなで、森の深層に到着した。

「マサ、深層って確か熊が出たよな?」

「ああ出るぜ、それに最深部付近に行くと遭遇頻度も増えてヤバいぞ」

「そうか、噂ではヤバいとは聞いてたが…具体的な注意点は?」

「無い、強い堅い見た目より早い、と三拍子揃った強敵だ」

「それは厳しいわね、テツ君任せたわよ?」

「私も熊と戦った事ないから、その時は二人共お願いね」

 浅層を移動中、遂に奴に遭遇した。

「ゴブリンだ‼」

 体色は緑で鷲鼻、背も低いステレオタイプなゴブリンだ。

「これがゴブリンか…俺初めて見るよ」

 そんな俺の呟きに、マサから驚きの一言が。

「まあゴブリンは非常にレアだからな、従魔に出来れば強いし、狩られまくってるのも少ない要因だろうな」

 このゲームのゴブリンは非常に賢く、それでいて単体でも結構強いらしく、森の最深部を根城に複数の群れが存在する様だ。

 滅多に遭遇しないのは、侵略者である人を恐れて、なるべく姿を晒さない様にしているからだという。一応遭遇すれば死に物狂いで戦いを挑んでくるので、漸く出会った挙句に逃げられる、といった事には滅多にならないそうだが。

 今回は単独で行動していた個体で、距離も有ったからか、逃げられてしまった。

「はぐれ〇タルかよ」

「この枚数差だからな、仕方ないさ」

「ゴブリンか~、あまり可愛くはないけど、仲間に出来たら心強いわね」

「その代わりお金も際限なく溶けるらしいけどね」

 ペットや従魔等の、仲間を強化するのにもお金が掛かり、極めつけはコストまで食うという仕様が、おいそれと手を出せない敷居の高さを維持しているのだ。

 それでも、ユキやアコは敵を受け止める前衛が、居るか居ないかで活躍具合が劇的に変わるので、機会が有れば、ゴブリンの核入手に挑戦したいと言っていた。


 ゴブリンに逃げられて以降、道中これといって起こらずに深層に到着した。

 深層に踏み込んで数分。前回も戦った大蟷螂と鎧蜘蛛に襲われたが、難なく撃破、以前とは比較にならない程強くなった使い魔を突破できない時点で、勝ちを確信したね。

「あの…ちょっといいかしら?」

「うん?」

 ユキがおずおずと尋ねて来る。

「テツ君ってLv幾つ?チョット使い魔が尋常じゃない位強いんだけど?」

「そうね、私の知る限り見た事ない位強い使い魔よね」

 マサも言っていたが、使い魔はビルドに依っては死にスキル化してるようだし、二人の反応もおかしくは無いのかな?

「Lv?51だけど?」

「フフッ」

 俺が聞かれた通りに答える。笑うマサ。

「本当に?なんかもっとLvが高い人の使い魔が、次々にやられるのを最近見たんだけど」

「Lvは51だぞ?因子は二つ持ってるけどな」

「!?って事は転生済み?通りで使い魔が異様に強い訳だわ。…いやそれでもやっぱ堅すぎるわよ、もしかして因子のお陰かしら?」

「ああ、[獣人]を重ね取りしたからな、LPも679有るから堅いのは当然さ」

「「679!?」」

「おおう、いつの間にか随分とタフになったな」

 二人に加え、マサも驚いている。

「成程、転生済みな上に[獣人]重複か…そこまですれば使い魔もあそこまで化けるのね」

「金さえ稼げばLv含めてすべて賄えるからな、ホントに好き勝手遊んでも其処さえ意識すれば周りと差が付きにくい良いデザインだよな」

 しかも、強くなったからと言って、クエスト報酬が極端に上がる事も無く、物流の方も以前話した制限のお陰で全ての素材の全てのランクに需要が有り、格差が出にくいのも新規が稼ぎやすい要因にもなっていて、本当にいいバランスだ。

「まあテツは他を犠牲にしてるからな、見ろよこの貧弱な装備、初期装備だぞ初期装備、寧ろLvでゴリ押さなけりゃ如何にもならんて」

「そこは縛ってるわけじゃあないんだけどな、今の所は装備よりLvを上げて、転生の特典を重ねた方が強くなれるから、そうしてるだけだ」

 これは紛れもない本音だ。今の所は一回の活動で得れる資金で、毎回最低でもLv1は上げれるから上げてるだけで、無理なら装備に投資したり、消耗品を買い溜めたりと、別の使い道が生まれてくるはずだ。

「色々と犠牲にしてるのね…そう考えると使い魔ってやっぱり微妙?」

 …そこは人それぞれという事で、まあ実際使い魔に特化したせいで、俺自身の戦闘力やその他の能力は実に中途半端だ。

 先程瞬殺した蟷螂と蜘蛛だって、俺は塞き止めただけで、マサは勿論ユキにアコも一人で討伐出来る程、他の三人はプレイヤー自身のスペックが高く、転生してるからこそ俺の優位性が保ててるわけだ。

 マサはリーチの長い通常攻撃が、強力なノックバックを伴い、火力もそこそこと、前衛の崩壊を防ぐには最高の中衛だ。

 ユキは見た目通り、ザ・魔法使いで、二種類しか使えないと言った魔法だが、両方共使い勝手の良い魔法で、前線組にはこの二種類だけで良い派と、手札を増やして汎用性を上げた方が良い派に別れる位、基本にして頂点共言える魔法なのだ。

 話が少し逸れるが続けよう。ユキが使った二種類の魔法は、因子[魔導士]の専用魔法、<ファイアーオーブ>と<アイススピア>で、因子の専用魔法故に、重複させればコスパの良さが段違いに良くなっていくのが、評価が高いポイントだ。

 ちなみに<ファイアーオーブ>は火球を飛ばし、着弾地点にマグマのダメージゾーンを発生させる魔法、<アイススピア>は氷柱を複数敵に飛ばす魔法だ。

 まあそれでも、連射は出来ないのか、杖を使ったスキルなのかCAなのか、衝撃波を飛ばしたりと合間合間に別の行動を挟んでたりしていた。 

 話を戻して、アコは、アーチャーだが、本人の申告通り、移動速度が非常に速く、常に敵への射線を自身の足で確保し、加えて放たれる矢の威力もマサの一撃に匹敵する位高く、もし敵対したら駆逐艦の様な脅威に感じるだろう。

 とまあ、ビルドで、能力も戦い方もまるで違うが、それぞれ長所が有るのが分かるだろう。当然それぞれに弱点も存在するが。


「む、いよいよ御出ましか」

 あれから何度か戦闘を重ね、四人での行動も慣れてきた頃、奴が来た。

「グルルルル…グオーー‼」

 2.5mを優に超えるんじゃないかと思える程の、巨大な熊が茂みから強襲を掛けてきた。

 直ぐに使い魔が反応し、熊に肉薄。…良し、十分足止め出来てるぞ。

「どうやら足止めは問題無い様だな、後は任せた」

 一応[筋力]が100を超えているので、この無強化ナイフでも少しはダメージを与えられそうだが、危険なので自重、適材適所他に任せましょ。

「ナイス足止め‼フンッ‼」

 マサの一振りで熊が僅かに怯み後ずさる。やはり相手が巨体だと衝撃も幾分か殺されるのか。しかし大物相手に怯みやノックバックが機能するなら、役目を十二分に果たしてると言えるだろう。

「時間稼ぎ感謝します。<ファイアーオーブ>‼」

 ユキの魔法が発動。見事直撃し、そのダメージも中々だが、二次効果で延焼が発生し、ダメージゾーンと合わさりダメージは加速する。

「させないわ、そこ‼」

 アコの鋭くも正確な射撃が、熊の反撃を妨害、使い魔の消耗は抑えられ、熊を追い詰める。

「これで止めよ、<アイススピア>‼」

 既に満身創痍な熊に、氷柱が突き刺さり、これが止めとなり熊は消滅した。


「お疲れ様。一体だけなら熊が来ようとこのメンツなら問題無いな」

「そうだな、もう少し人手が有れば最深部も探索できそうだな」

「最深部ってどんな感じなの?」

「少なくともこのメンバーと実力でも厳しいのよね?」

「あくまで聞いた話だが、熊はそのまま巨大な猪や大蛇が、ダース単位で頻繁に襲ってくるとは聞いたな、本当かどうかは知らんが」

 …何それ怖い。

「さらに、ファイターやメイジタイプのゴブリンも居て、運が悪ければそいつらの群れに遭遇、なんてこともある様だ」

「それは現状では無理そうだな」

「そうでもない、此処に本職のタンクとヒーラーに、それこそテツがもう一人か、サモナーやテイマーみたいな、ユニット数を稼げる奴が居れば十分イケるだろう」

「そうね、最初に頭数が大きく劣って無ければ、多少の枚数差は覆せそうね」

「枚数差もそうだけど、タンクが居れば、囲まれにくいってのも大きなポイントね、囲まれちゃったら私やユキ何て何も出来ないもの」

 頭数と位置取りか、なんかシミュレーションゲームの話みたいだな。

「まあどの道今回はこれ以上先には行かないんだろう?この話は攻略の目途が立った時にでも続きをしようぜ」

 現状俺には、だが。これと言って伝手も無いし、マサはどうか知らんが、そんな伝手が有ればユキとアコは態々俺達に声なんてて掛けないだろうしな。

 その後も最深部へは近寄らずに、深層で素材集めと狩りを平行し、十分に稼げたところで帰路に就いた。


「お疲れ様。楽しかったよ、またやろう」

「お疲れ、またな」

「お疲れ様、またよろしくお願いします」

「お疲れ様、今日はありがとう」

 こうして素材の売却金や報酬を四等分して、パーティーを解散した。

(そういや日課を忘れてたな、昨日やって無いのも消化しなきゃ)

 このゲームには、社会人救済措置なのか、デイリークエストを一週間分ストックする事が出来、土日しか出来ない週末プレイヤーは、休日返上すれば、ある程度は後れを取り返せるので、今回の自分みたいにうっかり忘れてた場合にも有難い措置だ。

 夕飯までにストック分を消化し、先程の収入と合わせ、所持金は8000円となった。

 夕食を済ませ、ゲームを再開、Lvを58に上げ、残金は400円程になった。

「さて、時間はたっぷりと有るし、何をしようかな」

 先程の冒険でチェストに仕舞っておいたランタンを再び装備した。

 現在総コストが116で、スキルが46、装備が10.5で残コストが59.5も有り、ポイントは70も余っているので、新しくスキルを取る事にした。

 悩んだ結果、[速度]の専用スキル、<移動上昇>を取得し、Lv20まで上げた。

 これで[速度]値と合わせて、元の速度の1.3倍は速くなったことになる。

 試しに、ホーム内の探検も兼ねて、歩き回ってみたが、劇的に速くなっていて、この快適さを知ったらもう元には戻れないな、と思える位効果が実感できた。

 残コストは39.5に減り、ポイントも50になったが、それだけの価値が有るスキルだと今なら確信を持って言える。その位快適なのだ。

 さて、残コスト39.5…この数字は薬草等の軽い素材を運ぶには十分過ぎるが、生物の素材や鉄鉱石や木材となると、微妙なラインと、これ以上スキルを取るか迷う。

 少し悩んだが、悩む時間で、少しでも金を稼いでLvを上げた方が、遥かに有意義なので、スキル取得は一旦保留にし、森で薬草を集める事にした。


 早速現地に赴き作業を開始。やはり移動速度が上がった恩恵はデカく、距離の関係で敬遠してた箇所のシンボルも、ルートに加えられた事で、浅層と中層での収穫が大幅に増え、時間当たりの収入向上と資源回復までの時間的ロスの軽減が見込まれ、自然と笑みが零れてしまった。

 寄って来る敵も、浅層中層ならば、使い魔の敵じゃないし、ランタンのデバフと、[筋力]116のマッチョナイフで瞬殺出来るので、障害もほぼ無かったと言えよう。

 かくして実に短時間で、大量の素材を持ち帰り、ギルドで納品したり換金したり保管したりして、1500円もの収入を得る事が出来た。これは日課の依頼二つと時間当たりの稼ぎが同等なので、移動速度様様である。

 結局寝るまで、様々な納品依頼をこなし、チェストも肥えたしLvも68まで上げる事が出来た。財布の中身は大分寂しくなったが。


 翌朝早朝。

「さて、今日もやっていくかね」

 前回ログアウトした教会前からスタートする。

 今更だが、このゲームは何処でもログアウト出来るが、ログインする時は、全く同じ座標からの再開なので、ログアウト場所は慎重に選ぶ必要が有る。

 別にログアウトしても、暫くは自キャラが残るとかそういうことは無いが、ログインしてから動けるようになるまでは、タイムラグが有り、その間無防備で晒される羽目に遭うから、どの道安全な場所しか選択肢は無い。

 まあそんな感じで、比較的安全だと思われるホームでログアウトするのが、殆どのプレイヤーのセオリーとなっている。

 ギルドで依頼でも探そう、と行動を開始した直後、見回りのアラートが鳴ったので、そちらを優先する事にした。


 墓地に到着すると、既に何人か集まっていてた。

「おう、テツか」

 俺の姿を見つけたミーチャが声を掛けて来る。

「どうも、今日はウィル親子は居ないんですね」

「偶には家族水入らずも必要よ」

 成程、のんびりと休暇を満喫してるのね。

「おし!募集を締め切るぞ、班を二つ作って回るぞ、新人は俺の所に来い」

 人影で見えなかったが、カイルが号令を掛け、仕事が始まった。

「テツはプロだから俺とペアで回るから頼むぞ」

 俺はミーチャと、ライセンス未所持者はカイルとルーカスが引率する様だ。

 二手に別れ、見回りを開始する中、先程の注意喚起を思い出す。

「最近遺体がアンデッドかするのが早いし、頻度も増えてきやがった。これはこの惑星も魔素汚染が進んできた事を現す、現在この惑星に車両を配備する為に、道路の敷設と大気浄化塔建設のプロジェクトが立案され、近々発表される筈だ。つまり…」

 なんだか難しい事を言ってるので、隣のミーチャに聞く。

「魔素汚染って具体的に何が起こるんですか?」

 なんとなく、汚染が酷くなるとアンデッドが発生しやすくなるのは理解したが。

「汚染が広まると惑星に魔物が増えるのさ、魔素だけじゃねえ、車両を配備すれば、様々な汚染物質をばら撒くからな、そう言ったモノの悪影響で、生物が変異すると、最悪怪物に成って襲って来る」

 つまり、今は魔物らしい魔物って、ゴブリンとかオーク、普段の生活で魔素に少しづつ汚染されてた、入植者の遺体が主だったのが、今後はそこらでよく見る、兎や犬などの野生動物や、虫共も魔物化、最悪怪物化して襲ってくるわけか。

「これまではそれなりに綺麗な環境を保ってたからな、でも今は…、一応大気浄化塔を設置すれば、かなり汚染を抑える事が出来るが、その建造には結局重機が必要だからな…、どうしても最初は星を汚す事になる。そしてその報いは俺達自身が受けるのさ、それが文明を発展させるという事の代償なのさ…」


 二人で見回りをしてるが、確かにアンデッドとの遭遇が増えている事が実感できる。やはりさっきの話の通り、入植でこの惑星に害のある異物が流入しているのだろう。そして持ち込んだ者すら蝕みながら。

 ただこの汚染は、あくまで重度の汚染にならなければ、クリニック等で、浄化は出来るし、気の遠くなるほどの異種族との交配と進化で、ある程度は免疫力で対処出来るので、いきなり人類が魔物に、という事にはならないらしい(まあ、主にゲーム的都合なんだろうが)。

 しかし、こう言っちゃあなんだが、アンデッドが多く発生するなら俺的には良い面も有るんだよな、何しろライセンスを上級に上げるには、より多くのアンデッドを浄化する必要が有るからな、まあきちんと成仏させてやるから恨まんといてや。

 ちなみに今回俺は、ランタン二刀流で、見回りに臨んでいるので、戦闘は基本ミーチャに任せきりだ。勿論使い魔を嗾けたり、デバフを掛ける為の位置取りは意識しているけどね。

 どんな些細な異変も見逃すまい、と気を張りながら見回りを続け、アンデッドを何回か浄化したが、またしても謎の素材[昇華された骨]を入手した。

 希少素材と教えられたが、使い道が謎な以上謎の素材以上でも以下でもないしな、まあ言われた通り保管しておけばいい事が有るだろう。

 今までの見回り以上に、じっくりと練り歩き、アンデッドを浄化していった結果、[昇華された骨]を更に二個入手し、以前も有ったランタンに魂が吸収される現象が再び起きた。

「いや~、俺も長年この仕事をしてるがこんな現象は初めて見るな」

 ギルやルーカス同様に、ミーチャも初見の怪現象のようだ。

「まあ考えても分からんし、害がないなら気にすんな」

 結局如何にもならんから、忘れる事にした。

 まあ、そんな具合で、野郎二人での見回りも開始地点に戻って来た事で終了。ミーチャ曰く、このペースなら俺の上級試験解放も遠くはないかもな、と言われた。

「全員無事だな、証書は各員に転送しておいた。今日はご苦労さん、では解散」

 俺達に少し遅れ、カイルとルーカスの新人引率組も合流し、解散となった。

 帰り際に、カイルとルーカスから、「上級試験解放まであと少しって聞いたぞ、頑張れよ‼お前なら出来る」との有難い言葉を頂いた。

 お前なら出来るの根拠は分からんが、激励っていいもんだな、それが例えAIであり、ゲームのキャラからであってもだ。


 ホームに戻り、報酬を受け取り荷物を整理。

 今回は敵との遭遇う頻度が高かった事も有り、素材も潤沢で、必要の無いものを売っ払った結果、資金が約4000円になった。

 更に、日課の依頼を受け…ようと思ったら、治験の依頼はテストが終わったため、新薬の実験許可が出るまで受けれないとの事で、当然充填の方にも影響が出てしまった。

 それでも、[魔力]が素で136も有るので、そこそこの収入には成ってくれ、資金は4700円になった。

「残念だけど、今なら薬草集めで同じ位稼げるしなぁ…森以外のロケーションで採取に勤しむには頃合いだろうな」

 って事で、有り金叩いて、Lvを71まで上げ、ホームの南門から外に出る。

「墓所の見回り以外で、南門から出るのは初めてか」

 横目に墓所を見つつ、相変わらずだだっ広いフィールドを南下して行く。

 今回ランタンは置いてきて、コストもかつてない程の余裕を有している。

 道中は、森周辺程ではないにしろ、植物系の資源も有り、建築で使える砂や砂利が取れるシンボルが散見された。

 しかし建築かぁ…、前にギルドの職員がやってた、バリケードやトーチカの設置に、塹壕を掘ったり土嚢を積むのも建築関連だったな。

 興味も有るし手を出したいが、リソースが確保出来ない以上は諦めるしかない、けど何時かは触れてみたい要素の一つだよな。

 折角タイトルにDIYなんてついてるくらいだから、環境そのものをホームセンターや大型スーパーに見立てて、そこで手に入れた物で好きな物をクラフト…、楽しいだろうな。

 そんな事を考えている内に、漸く目的地に到着した。


「ここが南に広がる大砂漠との境界に成ってる山か」

 目の前には、プレイヤーや、多種多様な姿のNPCが多く行きかう、山道の入り口が見えており、麓である現在地はちょっとしたバザーの様な雰囲気を醸し出していた。

 折角なので、山に入る前に、バザーで掘り出し物が無いか見てみる事にした。

「いらっしゃい」「どうだい?安くするよ」「ほらほら寄ってきなよ」、と寄ってらっしゃい見てらっしゃいなフレーズ飛び交う実に賑やかな場所だ。

 なかでも俺の興味を惹いたのは、地面に布を敷いた簡素な店構えの、宝石店だ。

「いらっしゃい、どうですか?良い物ばかりでしょう?」

「ああ、確かに良い物ばかりだ、悪いが俺には高くて買えないがな」

 そう。並んでいる物は確かに良い物ばかりで、特に良いのが[生命]を上昇させるオプションが付いた各種アクセサリだ。

「高いですか?お値段に見合ってると自負しておりますが」

「ああ、別に文句をつける気は無い、只これ等を買える程の金も無いし、今後も貯める事は無いだろうからな、運よく一獲千金でも果たしたら検討するがね」

 性能的には欲しくて堪らないが、[生命]を10%上昇させるOP(オプション)が付いた指輪何て10万もするからな、とてもじゃないが買えないよ。

「そうですか、でしたら素材の持ち込みでもしてくれたら、それに応じて割引もしくは無料で差し上げる事も出来ますが?どうですか?、ああ遅くなりましたが私はパミルと申します」

 パミルと名乗る、ターバンを被ったアラブ風の出で立ちの男の提案、売っている物からして信用は置けるので、話を聞くことに。

「俺はテツ、具体的にどういう素材が有れば良いんだ?」

「第一に宝石ですね、次に貴金属、後はその時に気に入った物が有れば、引き取って応じた額割り引くか商品を差し上げます」

「成程、ちなみにパミルの希望に応えるには推奨Lvはどんなもんだ?」

 先ず前提としてこれを満たせないと話にならんからな。素材を金で集める位なら、端から完成品を買った方が安いだろうし、本末転倒だ。

「そうですね…Lv80も有ればイケると思います。勿論転生前のLvで、ですけどね」

「ああ、そんなもんなのね、じゃあ素材の入手場所は?」

「そんなもんって…、初日参戦した人の平均Lvが、今5~60位って話ですから、相当な高Lvですよ?まあ良いか。素材はこの山で一通り揃うので、其処等でつるはしでも買って自力で掘るか、採掘に同行して分けて貰うのもお勧めですよ」

 成程、お手伝いで参加して分け前を貰うのも良いな。

「分かった、直ぐには無理だが一応意識しておくよ、色々ありがとう」

「いえいえ、もし宜しければフレンドでもどうですか?」

 勿論即OKした。これだけのアクセサリを作れるプレイヤーとフレに成れたのは幸運だ。これは意識して宝石貴金属も集め始めるか。


 さて、此処南山での目的も見出せたし、行動を起こそう。

 早速周囲の声に耳を澄ませ、勧誘などを探すと。

「これからギルド主導で、不足しがちな鉱物資源を採取しに行きます。まもなく締め切りますが飛び入りで参加したい者は名乗り出て下さい」

 すんっごい既視感の有る募集文句だ。多分面倒が起こるのでこれはスルー。

 それから数分間、採掘グループを探してみたけど、俺の様なイマイチ評判の良くないビルドは、需要がなさそうなので、諦めてソロで採取する事にした。

 現在このDIYオンラインにおいて、様々なビルドが考案確立されており、お馴染みの壁役(タンク)回復役(ヒーラー)術師(キャスター)や、現地に戦略的も若しくは、効率的に作業をする為に、拠点や防御陣地を建築敷設する、建築士(ビルダー)、大量の荷物を代わりに運ぶ運送業(キャリー)等様々だ。

 そんな中テツのビルドは、後に発生装置(ジェネレーター)と呼ばれる、使い魔を途切れなく前線に送り続けるビルドだ。だが現在の発生装置の評価は、適切ではないパラメータ構成と、そもそもの数値の低さで、期待して取ってしまったが故に、外せない上に貧弱でトロい使い魔が、勝手に突っ込んで自滅し、スタミナをバカ食いし足を引っ張るという、最悪な結果を方々で招き、使い魔と言う存在の評価は地に堕ちている。

 そうした、状況から、使い魔をメインに据えたテツは、パーティーを組むのを敬遠され、今回のような連れが居ない場合は、ソロを余儀なくされるのだ。とはいえ元々ソロを想定してビルドを組んでいるテツには然程問題のない話ではあるが。


「すみません、つるはしを見せて下さい」

 仕方なく、現地で道具を売ってる露店に相談して、俺に合った物を見繕って貰い、コストが重い分丈夫な[重鉄のつるはし]を500円で購入した。

 つるはしのコストは10と矢鱈と重いが、それなりに丈夫な上に、スキルが無くても有る程度の鉱石までは採掘出来るようなので、満足な一品だ。

 取り敢えず準備は整ったので、周りに合わせて登山する事にした。

「そろそろ良いかな?」

 パーティーを組んでると思しき連中は尚も高い場所を目指してるが、ソロでとぼとぼと登って来た俺は、中腹よりは下だが、それなりに標高が高いここ等で採掘を始める。

「フッ‼ホッ‼良し、鉄鉱石と銀行石だ」

 安物だがコストが重い分、中々の性能なつるはしと、142もある[筋力]、そして[幸運]のお陰か、なんで今まで手を出さなかったのかと、後悔したくなるほど順調に資源を得る事が出来ている。

 敵もサソリや蜥蜴に蛇などの、毒満載な連中だが、使い魔で十分対処可能な上に、ARMで防ぎきれるから大した脅威にもならない、一度毒を喰らって状態異常になったが、ポーションを使うまでも無い程度しかダメージを受けなかったから、温存出来た。

 パミル曰く推奨Lv80以上との事なので、きっとこの辺りはまだまだ序の口なのだろう。今回は下見の意味が強いから、もっと上や砂漠地方寄りに出向く場合は、何か考えなくてはな。

 光るシンボルを探して移動しつつ採取を続け、コストも一杯になりつつあったので下山、パミルがまだ居たから雑談をと声を掛ける。

「やっほ~、中腹以下でだけどそこそこ採掘できたよ」

 今回の成果をパミルに見せると、俺の予想に反して驚いていた。

「こんなに取れたんですか!?ってか持ち運べるんですか、この量を」

「まあ装備はつるはしだけだしな、スキル以外でコストは殆ど使わないし」

 寧ろ、そうしないと効率よく金なんか稼げないしな。

「いや~量も良いですけど、素材の種類とランクが幅広いのも良い」

「そうなんだ、ランクはある程度揃ってた方が良いかと思ったんだが」

「それはまあ、手元に在庫が無い人はそうですが、ある程度素材のストックがある人は、仕入れ先の素材のランクに幅が有る方が選択肢が増えますので」

 捨てるには惜しいけど、使い道のない素材を手放せないって人はそうか。

「参考までにこれ全部でどの程度の割引になるかな?」

「そうですね…これなら10万の商品なら原価換算で1万は割り引けますよ」

 おお~、中々の価値でらっしゃる。

「つまり、同じ量を後9回持って来れば、10万の商品を一個くれるって事か?」

「構いませんよ?これの十倍もの量の素材が有れば、ハズレ効果のアクセばっかでも、元が取れる程度には商品を作れますので」

「そうか、ちなみにコレを現金で買い取るなら幾らで買ってくれるか?」

「友情価格でも4000円ですかね、どうします?」

「じゃあ頼もうかな、流石にこれの十倍は一度に運べないしキープ出来ないよ、だったら金にして強くなった方が近道だしね」

 ちなみにパミルはスキルで、宝石や金属類の重量を軽減してるらしい。

「じゃあ、その内都合が付いたら譲って貰うとするよ、バイバイ」

「またのお越しを~」


 パミルと別れホームに戻ってきた後に、ログアウトし休憩。

 ゲームを再開し、インフォメーションに目を通す。

「公式の告知にも情報が出て来たか」

 そこには、見回りの朝礼で聞いた車両の配備と、その準備として浄化塔の建築、道路の敷設に関するクエストの紹介が乗っていて、ユーザーが積極参加すれば、それだけ速く進行する旨と、クエストが完了すれば、いよいよユーザーが車両を作ったり所持が可能となる事がデカデカと書かれていた。

 車両の所持か…、車庫とかどうすんだよって思ったが、一応有料で借りる事が出来、今後はその辺りもアップデートで拡張するらしいので、期待してくれとさ。

 俺にはそこまで影響のある話じゃないが、今後環境汚染が拡大すれば、魔物や怪物が頻繁に出現する様になるみたいだし、今後はフィールドを歩くにも注意が必要になるな。

 インフォメーションに一通り目を通し、ログインする。

 装備の修繕と食事を済ませ、Lv上げを行い、Lv73になった。

「さて、今度は北の渓谷でも目指してみるか」

 南の山は勿論、西門傍の森だって、まだ資源が十分回復していないだろう。

 今回は北を散策し、次に東を散策した頃には、森の資源も回復してるだろうから、今後はローテーションしていこうと思っている。

「思い立ったが吉日だ。早速動くか」

 北の渓谷に向けて歩いたり走ったりし、建築中のベースを横切る。

「そういえば、始めたばっかの頃に、一回手伝ったっきりだな。気が向いたらまた参加してみるか、今なら犬如きにしゃぶられるなんて事にもならないだろうし」

 道中犬や狼に煽られながら、取れる資源を確認。砂や炭に加工出来る木材等を調達しながら、漸く目的地に到着した。

 南の山が、登って降りる境界なら、こっちは降って登る境界だな。

 遠目にもハッキリ判る位、横一線に割かれた大地。余りにも幅が広すぎる故に橋も掛けれないのだろう、崖沿いに足場を組んで緩やかなスロープが築かれていた。

 例によって周辺には露店が多く並んでおり、バザー会場が如く活気に満ちていて、積極的にパーティーの募集が行われている。

 取り敢えず、聞き込みをと思い、露店を冷やかしていくが、前回の様な出会いも無く、無難な情報ばかりが手に入った。

 手に入った情報は、此処大渓谷で採れる素材や敵についてで、素材は美味しい川魚等の川の幸、清流によって削られた高級な砂利、断壁から採れる粘土等が主で、敵は熊や猪、鷹に隼が要注意生物とされていた。

 今回狙う主な資源は粘土、これを採掘するにはシャベルが要るので、露店で購入。奮発して1000円の物を買った。

 シャベルの性能はつるはしと然程変わらないが、こちらの方が咄嗟に武器としても扱えるという事で、丈夫な物は割高らしい。名前は「鋼鉄のシャベル」となっている。コストは10だった。

 準備も万端なので、シャベル片手にスロープを降り、谷底の渓流に到着。

「うーん、良い空気だ。釣りやバーベキューでもしたら最高だな」

 対岸まで軽く数キロは有ろう渓谷だ。人が多く行きかっていようと、距離が離れていて疎らに感じるから、開放感が大きく安らぐ。

 ホームからそこそこ離れているから、難易度もそれなりで、熊を筆頭に襲撃が頻発しているが、今の所俺に累が及ぶほど時間も掛からず処理されている。

 敵と戦いたかったら為るべく人の輪の外側へ、安全に採取したけりゃ内側に居れば良い感じのようだ。

 戦闘もこのゲームの醍醐味の一つとは思うが、資源の採取も引けを足らないと思っている。だから今回は戦闘は人に任せて採取に勤しむのだ。

 幾つものシンボルを渡り歩き、順調に砂利を集める中、ある物を見つけた。

「お、これは…砂金だな」

 川底に光るヶ所をシャベルで穿り、砂利を採取してたら、運よく砂金に当たり、同じシンボルからもう一回砂金を取る事が出来た。

 これが現実なら、砂金二粒なんて価値も無いが、そこは流石ゲームだ。手に入れた途端に、何故か一握り程度の量が入った、小袋状態の見た目に変わり、そのせいかコストが5と矢鱈重かった。

 その後も[幸運]のお陰か砂金がそこそこ見つかり、これ以上荷物が持てない状態になってしまい、谷底から上がる。

 残念ながら現地での買取を行っているプレイヤーやNPCが居なかったので、そのままホームに帰還した。

 ギルドで依頼を見ると、建材の納品で、砂利を求める依頼を受け、即納品。

 砂金以外の使い道の無い素材は、競売に掛け金に換えた。


 次は西の樹海に向かってみる事にした。

 荷物も必要最小限、ナイフとポーションを数個だけ持って出発する。

 道中はこれまでと変わらず、犬系がメインで、割愛する。

 現地に到着し、お馴染みのバザーで情報収集を行う。

「…いらっしゃいです」

 ふと興味を惹かれ、覗いた露店は、初期装備であるシャツやズボンを始めとした、アパレル系を扱っている露店で、店主は少女風なアバターのプレイヤーだ。

 こんなところで、態々シャツやズボンを売る位だから、気になって見てみたが、これが中々すごかった。なんせ初期装備のシャツとズボンは、コストが0の代わりに一切の防御力も無く、OPも付いていない見た目だけの装備だ。見た目だけゆえに耐久力も無く損耗しないのも特徴だ。だが此処にあるのはコストは0、防御力も相変わらず無いがOPが付いていて、耐久力は存在しないという、どんなプレイヤーにも嬉しい特性を持っていた。

 ただ薄々感じていたが、いざ値段を見ると、パミルのアクセサリ以上に高く、生半可な財力じゃ購入など夢のまた夢。そんな価格設定をしている。

「一つ相談なんだが、素材の持ち込みで、割引もしくは交換は可能かな?」

「…素材次第ですけど…できますです」

 おお‼、パミルとのやり取りが生きたな。

「どういった素材が良いのかな?」

「樹海で採れる植物の繊維、動物の皮、鳥類の羽、色々です」

 糸や革、布に加工出来る物なら何でもって感じか。

「あとは金や銀も持ち込んでくれたら嬉しいです」

 聞くと、金糸や銀糸等の、金属線を編み込む事で、かなり強力なアパレルを作れるから、是非欲しいらしい。

「俺はテツと言う、また来たら宜しく」

「…シルクです…素材待ってます」

 シルクから素材と敵の情報も聞けたので、早速樹海へ突入した。

 素材は森でも取れた物を中心に、種類が増えているようだ。

 敵に関しては、サルや猫科が追加された森って教えられた。

 まあ、本人曰く戦闘はメインに据えていないから、そこまで詳しくないと言われたので、ある程度は曖昧なのも仕方あるまい。

「うわぁ…マジで樹海だな、結構明るいのにマジで先が見えん」

 踏み込んだ先は一面緑と茶色の迷彩柄で、何処に何が潜んでいるか分からない程鬱蒼としており、片時も油断できない危険地帯だと嫌でも分からせられる。

「しか~し、俺には使い魔ちゃん達が居る。簡単に奇襲できると思うなよ」

 意味も無く独り言を呟きながら、探索を開始する。

 樹海に踏み込んで、まだそれほど時間が経っていないにも関わらず、既に3回もの襲撃を受け、僅かだがLPにダメージを受けてしまった。

 いやはや、猫は猫でも虎やジャガーが相手は流石にビックリしたね。

 音も無く樹上から降って来るからね、ARMが一発は耐えれたお陰で、奇襲のディスアドバンテージを帳消しに出来たのが大きく、即袋叩きで仏にしてやった。

 サルはサルで気性が激しく、投擲で距離を取って攻撃してくるのが最高に温まる。幸い弾切れの概念が有ったのか、接近戦を仕掛けてくれたお陰で、倒すこと自体は出来た。

 そして、油断して数歩歩いたらまた樹上から虎ですよ。勘弁して。

 いやー、ここにきて使い魔が死にスキル扱いは、納得だわ。決して死にスキルではないが、この隠密に対して無反応なのは頂けない。キャスターが壁として採用したら泣きを見るのが関の山だ。

 だからこそ、ビルドとしては希少価値が生まれて楽しいんだけどね。

 敵の猛攻に晒されつつも、その豊富な資源のお陰で素材がざっくざくと集まり、来た甲斐があったってものだ。

 猫科の奇襲にも慣れ、サルの煽りにも耐性が出来たので、戦闘も安定した。

 けれども調子に乗って奥に行けば、質も数も頻度も上がった襲撃に晒されるのは明白、此処は堅実にこの成果を持ち帰るのが先決だ。

 ってなわけで撤収。シルクに素材の品評をお願いする。

「…ってな具合で、これが戦利品だ」

「悪くないですね、買取なら3000、割引ならシャツとズボンなら3割引き、と言ったところですね。どうするですか?」

 これで3000円かぁ…、割引具合はそこそこだけど、買取はやや足元見られてる感じかね。仕方ない、今後も関わる可能性が有るから多少は売っておくか。

「そうか、じゃあ1500円分だけ売る事にするよ、それで良いか?」

「分かったです。ではこちらをどうぞ」

 素材を渡し、代金を受け取り、その場を後にした。

 パミルと違い、どうもフレンド申請を躊躇ってしまうな。…まあそもそも向こうがこちらに関心が無ければ意味の無い話なので、二度目が有ったらその時に考えれば良いか。

 ギルドに戻り、先程売らなかった残りの素材を、総額2000円で競売に掛けてみたところ瞬殺だった。やっぱ足元を見られてたのか、ランクがバラバラだから纏め売りでも安く見繕うものなのか、判断に困るな。

(端からウザがられてたか、初対面だから見極め期間だったか、どちらにせよ早まってフレンド申請しなくて正解だったな)

 たかがゲームで大袈裟と思われるかもしれないが、フレンド登録をしたからには、誠意ある交流が俺のモットーだ。誘われればなるべく付き合うし、こちらから誘う場合は無理強いはしないを心掛ける。だからある程度相手の事を知ってから申請を送る、又は受理する。お陰でこれまでオンラインゲームでの対人トラブルは、平均よりずっと少ないと思う、緩く楽しくの為にこれからも大事にしていく俺ルールだ。


 夕飯後に再びログイン、先ずはLv上げだ。

(やっぱ、このLvまで来ると大分上がり難いな)

 お金は3500円あったが、Lv73から75にしか上げれなかった。

 まあなんにせよ金だ、金を稼いでこそよりゲームを満喫出来るのだ。現実でも一緒だ。趣味に金を掛けたければ仕事を頑張るしかない。

 てなわけでゲームの中でもお仕事だ。頃合いだろうと森に向かい見渡すと、思った通り資源が回復しているので、採取を開始した。

 そういえば、最近資源の回復が、僅かずつ遅くなってる気がする、最悪枯渇状態が長引いたりするのだろうか?、まあそういった事態を見越して、採取場所の確保に、効率を上げる為に移動速度を上げてるのだ。そうなったらそうなったらで、またその時に考えよう。

 現在の残コストは84.5、薬草に換算して約420枚分、肉や皮なら160~80は持ち運べるから、一往復でも相当に稼げ、移動速度も上がってるので時間効率も非常に良い。

 このLvなら、たとえ装備が貧弱極まりなくとも、中層までならソロでも苦戦する要素も無く、採取に集中できる。深層も油断こそ禁物だが、十分安全マージンを取って行動できる範疇なので、荒稼ぎしたいと思います。

 これと言って何事も無く入り口周辺、浅層の資源を取り尽くし、中層も出来るだけローラーしながら採取、この時点で荷物が一杯になり帰還し、納品売却と金に変換する。

 流石にコスト80分ともなれば、単価の安い素材でも収入は大きく、6000円もの大金を手に入れ、ホクホク状態だ。

 最も時間も掛かったし、Lvを79に上げたから、素寒貧に即戻りだ。

 再び森向かい、深層へ…は行かず、ホームから反対側に位置する浅層中層で採取を行う。

 森はそこそこの規模を誇るが、歩いて一時間程度で一周できると聞いたので、敢えて危険な深層に挑まずとも、少し遠出をすれば安全な浅層中層で採取が出来るならそれに越した事はない。

 いつも森に入る入り口をスルーし、ホームの西門が見えなくなった頃にはシンボルが目に入り、採取を開始した。

 やはり、初めて来る場所だと、シンボルの位置も把握出来ていないから、探す手間と順序も滅茶苦茶な為、先程と打って変わって非常に効率が悪い。

(やっぱ、慣れって大事だな、手順が確立されてないとこんだけ面倒だとは)

 キャラも育ち、通いなれた場所ではあれほど効率が良かったのに、シンボルの場所が未知だと心底面倒だ。それにここ等は雑草狩りの手が及んでいないのも、手間が掛かる要因だな、まあ此処は前向きに初心に帰れたと思うようにしよう。

 そんなこんなで、マッピング重視に思考を切り替え、兎に角シンボルの位置を覚える事に専念し、この日の内に森外周の半分位のマッピングを完了した。


 翌日も仕事から帰宅したら、マッピング向かう。

 順調にマップの穴埋めをし、情報が充実しいくのを見ながら、就寝時間までに外周のマッピングを済ませる事が出来た。

 それから更に三日掛け、浅層のマッピング完了。更に休日を費やして中層も制覇して、マップに移るシンボルの位置情報は飛躍的に増え、採取の効率は飛躍的に向上した。

 頑張った甲斐が有り、この一週間で稼いだ金額は3万5千円と、かなりの額で、Lvも99とカンスト目前まで来たが、残金は僅か40円になってしまった。

 勿論マッピングと採取だけをしていたわけではなく、見回りの方もタイミングが合えば、参加して上級試験への道のりも進めていた。

 その間相変わらず謎現象である、ランタンの吸魂が2回あり、希少素材の骨が3本ドロップしたが、相変わらず意味も使い道も分からないままだ。

 まあ上級試験はもう目前だと、周りが言うので、カンストしても、試験を突破するまでは、換金用素材をタンマリと貯め込んで、転生に備えておくことにする。

 他にはそうだな…、そうそう!例の谷底で採れた砂金、アレをパミルに見せたら、「これを十個持ってきたらそちらの欲しがってた物と交換しますよ」と言われ、意識はしているが、最初に二個手に入れて以来それっきりなんだよな~。

 後はアパレル職人のシルク。彼女ともフレンド登録をした。

 なんのことは無い、俺と同じである程度見知った相手か、余程気が合う相手としかフレにしかならないだけで、躊躇いつつも二回目に話し掛けた時は、態度が軟化した気がするし、その後はこれと言って壁を感じる事も無かったので、素材を何度か流してたら向こうから申請してきたんだよな。

 パミルと違って買取品目の種類は少ないが、そこそこの値を付けてくれるので、収入の微増には貢献してくれて有難い事には違いなく、いずれはOP付きのアパレルが欲しいので、友誼を結べただけでも上出来だ。

 まあこの一週間の出来事を搔い摘むとこんな感じかな?。

 さて、今日も今日とて金稼ぎを…と思ったが、やや食傷気味だったので、公共事業のお手伝いでもしようと、ギルドで依頼を物色。

 候補は三つで、大気浄化塔の建設補助、ベース建築補助、道路敷設補助で、それぞれの依頼が密接にかかわっている。

 大気浄化塔は、車両や大型の工業機械を稼働させると、発生する有害物質による公害を予防する目的で、これが無いと道路が完成したところで、車両運用の許可は下りないだろう。

 サービス稼働初日からある、常設依頼のベース建築は、入植地の安全圏拡大には不可欠な事業であり、強固な中間拠点の有無は、物流の安全や道路の敷設時の、外敵からの脅威に対して要となる施設だ。

 道路敷設は、安全で効率的な移動には欠かせないインフラ整備で、先に道路が完成しても、車両が使えないというだけで無駄にはならず、他の事業の進捗に好影響を及ぼすので、これもまた優先したい事業だ。

 浄化塔は、拠点内での輸送が主な仕事で、俺のビルドなら輸送を熟しつつ、簡単な補助も出来そうだが、少々退屈かもしれない。

 道路敷設とベース建築は、共に危険区域に野晒しにされるので、戦闘も発生する中弛みし難い依頼なのだが、以前俺には合わないと思ったんだよな~。

 結局総合的に考えて、これが一番マシだし、今のLvとステータスなら、稼ぎも悪くなさそうだから、ベース建築を手伝う事にし、現地へ向かう。

 まだゲームを始めたばかりの頃に、集団の怖さを分からせられた因縁の依頼だ。要はリベンジ戦ってなわけだ。今の俺はあの頃とは一味も二味も違うのを、犬コロどもをしゃぶる事で証明してみせよう。


現地に到着すると、そこでは人がごった返しており、かなり賑やかだった。

「ワーオ、流石公式推奨依頼だ、凄い人だかりだ」

「だな、やっぱ車両は男の夢が詰まってるからな、積極的にもなるさ」

「そうだな…ってうわっ!?、マサかびっくりしたぞ」

 いつの間にか真横に居たマサが、相槌を打っている事に驚く俺氏。

「いやフィールドで見かけたもんで、声を掛けようと思ったら、目的地が一緒みたいだからさ、後を着けて機会を伺っていたのさ」

 何の為だよとは思ったが、こういうノリも嫌いじゃないぜ。

「まあいいか、態々後を着けてまで声を掛けて来たんだ、パーティーを組むって事で良いんだよな?」

「おう、この依頼の犬どもには酷い目に合わされたからな…この盛り上がって今がリベンジには丁度良いだろうしな」

 マサとパーティーを組み、紫水晶を受け取り出発、他の参加者の合間に入り、隙間を埋めローラー作戦風に行くとこにした。

 ちなみに久しぶりに訪れたベースは、みすぼらしい柵はコンクリート製に代わり、周囲には塹壕やトーチカ、土嚢に櫓と堅牢な要塞へと変貌していた。

 まだまだ内部はスカスカで、迎撃用の兵器の設置もされていないので、見せかけでしかないが、その外観は如何なる侵攻をも、跳ね返すと思える程迫力に満ちている。

 そんなベースを背後に、俺とマサは北西に歩を進める。

「そういえばマサは斧取のライセンスを取ったんだっけな」

「ああ、他にこれと言って相性が良さげなものも無かったしな、無難に選んだが悪くないぞ?もう少しで上級試験も受けれそうだし楽しみだ」

 聞くと、斧取…『斧槌類取扱管理者』の効果は、プロで、斧のコストが半減、上級で免除になるようで、俺の感想は「地味だなぁ…」だったが。

 マサ曰く「いや、斧槌限定だが際限なく強化していっても、デメリットが無いから、時間が経てば経つ程優位性が際立つから、評価は上がり続けるだろう」との事だ。

 確かにこのゲームの装備や消耗品も含め、強い物程コストが嵩み、それでいてコストでインフレ対策をしていることもあってか、作ったり強化したりする手間こそ、加速度的に増していくが、今の所強化の終着点がまるで見えない程、青天井で強くなっていくらしい、コストもだが。

 噂ではコストが100を超える短剣も既に存在するらしく、その攻撃力は生半可な大剣など及びもつかず、OPの数も軽く5個は超えているらしい。

 そんな装備をノーコストで装備できる事を考慮すれば、強力なライセンスといえるのかな?、正直コスト100の短剣とか次元が違い過ぎて意味分らんぞ。俺の短剣なんて0.5だぞ。

 寄って来る兎や烏を蹴散らしながら、廃人ってスゲーな的な事を考える。

 今回は以前とは比較にならない程能力も上がっているし、ランタンも装備。

 更にスキルを強化し、<守護霊>以外の使い魔スキルをLv10まで上げた。これで装備や消耗品込みで、残コストが47.5と、物資と空き容量のバランスは過去最高の状態だ。

 残りポイントはまだ78も有るが、来る上級試験に向けて温存しておく。

 それに今はマサが居るからな。大群を塞き止めるのが得意な俺と、大群を薙ぎ払うのが得意なマサ。相性は最高に良いから、とことんやってやろうじゃないか。


 ベースからある程度離れたのを境に、本戦の開始とばかりに敵の数質頻度が跳ね上がり、危険度が急上昇。明らかに以前参加した時とは難易度が違う事に戸惑う。

「おい、なんかあからさまに厳しくなっているんだが!?」

「多分人数補正が掛かってるんじゃないかと…なんかそんな注意書きがあったような?」

 マサには思い当たる節があったようで、そんなことを呟く。

「どれどれ」

 乱戦の中、スクリーンを開き依頼内容を確認すると、こんな記述を発見。

『なお当依頼は参加者が増える程、誘因装置が相乗効果により強化され、不必要に敵性生物を呼び寄せてしまう場合が御座います』何てことを、隅っこにこれでもかと小さい文字で但し書きされていた。

「通販じゃねえんだからさ…」

「ボヤいてもしょうがない、出来る限り間引いて引き返そう」

 マサの提案に乗り、なるべく数を減らす方向にシフトする。

 現在襲って来てる生物は、ライオンやサイ等の、サバンナ系の動物がメインで、こいつ等がフルコース宜しく。次々に襲ってくる。

「右を向いても左を向いても、敵敵敵」

「森の最深部クラスだこりゃあ」

 敵の攻撃はそりゃあもう激しく、今の俺達のLvだと集中砲火を浴びればひとたまりも無いだろう。ちなみにマサのLvは転生済みの56と聞いた。

 作戦開始時に、他の参加者の合間を縫ったのが功を奏し、先ず右手に展開していた連中が合流してきて、一緒にこの局面を乗り越えようと言って来た。

「無理を承知で頼む!少しだけ立て直す時間をくれ!」

 俺達に合流してきたのは、三人パーティーのプレイヤーで、盾剣の前衛タイプで、手早く回復を済ますと使い魔の隙間を埋め、強固な前衛を担ってくれた。

 更に左手に居たパーティーも合流し、更に安定感が増した。

 このパーティーはNPCで、キャスター三人のパーティーと、少々バランスが悪かったが、合流した事で、俺達の総合火力は飛躍的に向上。彼らは回復もこなせたので、少しだけ後退し、その場で粘る事にした。

 俺の使い魔が突っ込み、盾剣三人組が防ぎ、マサが引き剥がし、キャスター三人組が火力と回復を担当し、少しずつだが枚数差が埋まった。かと思えば他のパーティーが崩壊したしわ寄せか、また差が開いたりと、戦局は一進一退の消耗戦に突入した。

 しかし、それも僅かな時間の話で、時間経過と共に側は同じ見た目の生物が、最初は徐々に、だが時間が経つと同時に、その強さを増していき、暫くすると猛獣の姿は消え、最初の兎や犬などが、信じられない強さになって襲って来た。

「い゛!?、ヤバい!こいつ等ライオン並みに強いぞ‼」

 前衛を抜けてきた兎のタックルを受けると、200近いARMが一撃で消し飛び、HPも僅かばかり消耗している。

 掲示板や噂話で聞いた、鍛えた小動物のペットが強いというのも納得だ。こんな小さな当たり判定でスペック自体はライオン級とか洒落にならん。おまけに数も多いから始末に負えん。

 そうして猛獣タイムが、小動物タイムになった事で、いよいよ敗走の時が近づいてきたと、感じている最中、援軍が現れた。

 ピスピスと音が聞こえ、横から飛び掛かって来た兎が吹っ飛ぶ。

「これより援護を開始する、そのままこちらに向かって下がってくれ」

 そう言ったのは、筋骨隆々の二丁拳銃のケンタウロスで、名はロベルトと言うそうで、その傍らには上半身は女性の身体で、下半身は巨蜘蛛のアラクネがキッカと名乗り、二人で援護してくれるようだ。

 ロベルトは、二丁拳銃の使い手で、その逞しい体と四足による強固な踏ん張りで、特注らしき銃身が異常に長い大型の拳銃を速射し、弾が切れると背中に積んだ装置から脇腹に突き出た部分に、マガジン部分を押し込むと瞬時にリロードが成されるようで、高速移動と切れ目ない弾幕で、俺達に襲い来る生物をけん制する。

 キッカは松葉杖の様な…、と言うか松葉杖を使い、機敏に動き、時には八本の足と片方の杖をアンカーにし、もう片方の杖を目にも止まらぬ速さで突き、有る時は二本の杖と六本の足を支えに前二本足で、獲物を踏み突き刺すなど、特殊な戦い方をしている。

 そんな二人だが、間違いなく強い事は分かる。なんとなく俺の中の二種族の戦い方とは違うが、これも一つの極致と思わせる洗礼された動きだと思う。

 そんな援軍のお陰でベースからの射線を確保しつつ、隙を見て逃げ込める位置まで退避が完了。程なくしてベースの外壁から援護射撃が雨あられと降り注ぎ、どうにか乗り切る事が出来た。


「いや~、何とかなったな」

 戦利品こそがっぽがっぽだが、ポーションは底を尽き、ギリギリだった。

「今回は助かりました。また縁が有ったら宜しきお願いします」

 プレイヤー三人組の代表、ラークが感謝を述べて離脱。

「此度は助かりました。我々もお暇します」

 NPC3人組も、ケインが代表で感謝を述べて喧騒に溶け込んでいった。

「こうして戻って来れたのも先の六人と、お二方のお陰だ。ありがとう。我々もこれで失礼します」

「なに、我々は手助けしたまで。見事な戦いぶりだった」

 俺が代表でロベルトとキッカに礼を言い、その場を辞した。

「疲れたな」

「全くだ」

「こりゃ相当参加者が居たんだろうな」

「まあゲーム的には正しいよな、数が増えれば補正で難しくなるって」

 お陰でとんでもない苦戦を強いられたが、過ぎた事を言っても仕方がない。今後はそういう事態も想定して遊び方を考えればいいや。

「なんにせよ疲れた、俺は落ちるよ、お疲れ~」

 マサが落ちるので解散して、お開きとなった。

「ハア…俺も落ちるか」

 緩く狩りでもと思ったら、予想を上回る事態に振り回され、脳が休めと信号を発信するので、それに従いログアウト。

 おやすみなさい。

次も2週間程で

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