第一話
初投稿なんで、暗中模索状態です。
某年某月。
待ちに待ったVRMMOの新作。DIYオンラインのサービス開始日だ。
事前に調べた情報だと、兎に角自由度が高い事がウリらしく、タイトルの通りDIYな物弄りに没頭するも良し、冒険を楽しむのも良し、商売を始めるのも良し、と言った感じの触れ込みだった。
時間が来たので早速ログイン、アカウントは事前に作成しておいた。
ログインすると、定番のキャラクターメイキングが始まる。
「先ずは名前か…」
俺の名前は鈴木哲也。まあ何処にでもいるサラリーマンだ。
変に凝ってもと思い、シンプルにテツにした。
名前を決めた後は因子なる物を選択する様だ。
どれどれと見てみると。所謂職業や種族的なモノのようで、剣士や騎士といったものや、獣人やケンタウロスのような、ファンタジーでおなじみの種族の名前も沢山あった。
色々と見て、[獣人]を選択する事にした。[獣人]はLvアップ時に、[生命]を5上昇させるという効果で、専用のスキルを2つ持っている。
スキルのついては後述するとして、先にパラメータについての説明を。
パラメータは[生命][持久][積載]が有り、[生命]は数値がそのままキャラクターのライフポイント(以後LP)の値になり、0になると戦闘不能になる。
[持久]はスタミナで様々な行動で消費する、[持久]の値がそのままスタミナになる。素の状態だとスタミナがどれだけ高くても一律10秒で全快し、スタミナ消費行動の全てが割合消費なので、[持久]が上がっても行動量が増える事は無い、その代わりに、消費したスタミナの量に比例して行動に補正が掛かるので、[持久]を上げる恩恵は決して小さくは無いようだ。
[積載]はそのままコストの値になり、所持品、装備、スキルとあらゆるものにコストが設定されていて、[積載]以上の総コストを搭載する事は出来ない為、終始悩まされるパラメータになりそうだ。
「次はパラメータの選択か」
因子の次は前述の3つとは別に、パラメータを七つ選択するという。つまり計十項目のパラーメータでビルドを構成していくわけだ。
そして因子でも軽く触れたが、パラメータでも重要な要素になるのがスキルだ。
まあ正確にはスキルだけじゃなく、因子には専用のスキル、魔法、コンバットアーツ(以下CA)が計二つ、パラメータには専用のスキルが四つ用意されている。
似たような因子やパラメータでも、専用のスキル魔法CAによって、ビルドが別物になるのがこのゲームのウリらしい。
ちなみに魔法やCAもスタミナ消費で発動なので、実質使い放題だ。
後、一応触れておくが、スキルにはそれぞれ、アクティブ、オート、パッシブと3種類存在し、それぞれ違う特徴を備えている。
アクティブは、任意に使用するタイプで、イメージとしては必殺技の様な物だが、スタミナを大きく消費するのが特徴。
オートは、条件を満たしている場合に、自動で発動するタイプだ。限定的な分、スタミナ消費が少ない、そもそも無かったりする上に、強力なものが多く、窮地を脱する為の保険的な側面が強いのが特徴だ。
パッシブは、取得した時点で効果を発揮するタイプで、効果は三種の中で一番小さいが、常時発動していて、キャラクターの能力を底上げするものが多いのも、パッシブの特徴だ。
まあ俺が取得するのは、基本パッシブのスキルが殆どだろうから、その他についてはその時その時に触れれば良いか。さて話が逸れてしまったので、本筋に戻そう。
以上を踏まえて、自分の希望プレイスタイルと照らし合わせて選んだのが。
[体力]LPのダメージを肩代わりするHPを追加する。防御力の影響を一切受けない代わりに、LPを回復する効果を受けた場合、その二倍の効果を得る。
[装甲]LPのダメージを肩代わりするARMを追加する。防御力の影響を一切受けない。常に回復し続け10秒で全快する。
[魔力]魔法の攻撃力に影響。魔力が高い程能力が上がる装備も存在する。
[速度]移動速度に影響。一部行動は移動速度の影響を受ける。
[幸運]アイテムドロップ率とランクが上がる。
[信仰]祝福を受けれるようになり、祝福の効果が上がる。
[魔素]魔法のスタミナ消費を肩代わりするMPを追加する。常に回復し続け10秒で全快する。
以上の七つが俺の選択したパラメータとして、ステータスに反映される。
それぞれの選択理由だが、[体力]と[装甲]は防御力を捨てつつ生存率を上げるのが目当てだ。何しろ防御力はLPがダメージを受ける時しか機能しない上に、物理、属性、魔法と最低でも3種類有り、全部をカバーするには枠が足りないので、[体力]と[装甲]で補う事にしたのだ。
[速度]は金を効率よく稼ぐ為だ。このゲームは金が全てを制するゲームで、購入、Lvアップ、装備の強化など、殆どの自己強化方法が金に依存しているので、時間当たりの収入を上げるには、移動時間の短縮は大事だと思ったからだ。戦闘でも足が速ければ有利だしね。
残りの[魔力][幸運][信仰][魔素]は使い魔の為に選択した。
使い魔とは、自分に追従する存在で、やられてもプレイヤーのスタミナや、MP等のスタミナの肩代わりをするゲージを50%消費して、何度でも復活する便利なユニットだ。
他にも野生動物を調教した愛玩生物や、魔石…魔物から採れる核を使って召喚する従魔、ドローンやボットなどの補助機械等が存在する様だが、それは追々、話を戻そう。
使い魔の能力は、プレイヤーのパラメータとその種類で決まるようで、例えば自分のパラメータだと、[生命]はLPに、[体力][装甲]は防御力に、[魔力]は攻撃力に、残りの六つは僅かだがLP、防御、攻撃に影響するようだ。
そして、[魔力]には二つ、[幸運]には四つ、[信仰]には一つ使い魔を追加する専用スキルが用意されてるので、これで計七体の使い魔を従えられる様だ。
[魔素]は使い魔がやられて復活する時、スタミナだけじゃ追い付かないだろうからと思い、MP追加の為に選択した。
さて、なぜこのような構成にしたかと言うと、自分はあまり社交的ではないので、ソロで遊ぶ事が多くなりそうなので、生存率を上げて、頭数を増やし、死なない様に稼げる構成を考えた結果、このような感じになったのだ。
「次はアバターの作成か」
これは特に思い入れとかも無いので、平凡な容姿にした。
「これで終わりかな?、では完了っと」
『キャラクターメイキングを完了しました。DIYオンラインの世界をお楽しみください』
キャラメイクを終え、長いロードに入ったので軽くゲーム内容に触れよう。
さて、このDIYオンライン。タイトルが示す通り、好きに遊べって感じで自由度は高く、プレイヤーが各々の楽しみ方を模索していくゲームだ。
一応バックボーンが有り、プレイヤーは地球人を祖に持つ種族で、地球を人類同士の壮絶な内ゲバの末に、地球をAIに乗っ取られ、地球を取り戻す派と、別の惑星に新天地を求める派に別れ、プレイヤーは新天地派の子孫という設定だ。
新天地派は、暗黒の宇宙を彷徨いながらも、奇跡的に同程度の文明や価値観倫理観を持ち合わせた様々な種族の船団と合流し、一緒にいくつもの未開拓な惑星を開拓しながら発展していき、今また新たな惑星を開拓する為に 派遣されたのが住民兼人足のプレイヤー達だ。
そしてゲーム開始時に派遣される惑星は、大気、植生などが地球に酷似していることから、コードネームを[アース]と言う。
プレイヤーはある程度入植が進んだ段階での派遣という設定で、アースの開拓拠点となるホームを中心に活動し、気ままにスローライフを送るのも良し、危険と魅力に満ちた冒険の身を浸すのも良し、商売に明け暮れるのも良し、開拓に積極的に関与するのも良し、とキャラのビルドやロールプレイのこだわり次第で遊び方は無限大で有る。
それにPVには、プレイヤーが新たな惑星を入植地にする為に、大規模な降下作戦を展開していたり、原生生物と死闘を繰り広げるシーンも有り、遊べるフィールドが今後も増えていくことも示唆されていて、長い事遊べそうなのも嬉しい。
ちなみにキャラメイクの時点で分かるが、このゲームには当然魔法が存在するが、ゲームだからというのは勿論だがそれだけでなく、色々な種族と合流、交配していく過程で、魔法やスキルと言ったゲームでおなじみの能力を得たという設定の様だ。
ロードを終えると、教会の中と思しき祭壇の上に立っていた。
周りには同じようにキャラメイクを終えたと思しきプレイヤーが犇めいており、活気に満ちていた。
此処からはチュートリアルが開始され、ある程度操作に慣れさしてくれる様だ。
そうだ、このゲームの操作方法は、VRヘッドセットについてるマイクと、柔らかいシリコン製のセンサー搭載のマウスのような機器で行う。
左右で一つずつ柔らかいマウスを使う感じだ。にぎにぎ。
「さて、取り敢えず指示に従って進めるか」
そういえば祭壇に出現した時に、Lvが1に上がっていた。それに伴ってパラメータが生命以外が1に、生命が6に成っていて、パラメータを上げたりスキル等を取得するのに使うポイントが1に成っていた。
どうやらLvアップでパラメータとポイントが1上がる様だ。生命は獣人のボーナスで6になったようだ。
その後、洗礼を受けたり住民登録をしたり、講習を受けてチュートリアルを終えると、Lvが6まで上がっていた。
さてチュートリアルを終え、改めて周囲を見渡す。
「公式のスクリーンショットの通り、なんでもありな世界観か」
なんでもアリ。一言で表すならこれに尽きる。その位周囲の景色は異常だった。
なんだろう…王道ファンタジーにSFやスチームパンクを混ぜたような…マジックパンク?お馴染みのエルフやドワーフ、従魔と思しきゴブリンやオークが普通に歩いてると思ったら、変身ヒーロー物のパワードスーツのようなものを纏った者が居たりと、兎に角カオスだ。
建物や道路も金属質の何かで出来ているのかハイテクっぽい感じで、模様も回路の様な見た目で規則正しく点滅していたりする。
まあじきに慣れるだろうから、違和感は無視してギルドへ、先程住民登録したので本日二度目の入場だ。
兎にも角にも金を稼がにゃならんので、薬草などの採取系の依頼を受けて町の外へ、ここホームの西側には森が有るのでそこで採取しながらゲームに慣れる事から始めよう。
「おっと、忘れないうちに祝福とスキルを取んなきゃ」
祝福は、パラメータの[信仰]を選択するなどの条件を満たすと、教会で好きな神の像の前で祈ると、対応したボーナスが得られるというものだ、俺は獣神の像に祈りを捧げ、[生命]に10%のボーナスを得た。
スキルは[信仰]の<守護霊>と[魔力]の<魔導人形>と<ゴーレム使い>を取得した。
スキルを取得しても何も起きないので、騒ぐ前に一応フィールドに出てみると、下半身が無い透明な騎士と、杖を持った人形に手だけの泥のゴーレムがポップした。
では慣らし運転を始めようか。
ホームの外に出て先ず思ったのが「景色が変わり過ぎだろ」と。
さっきまでSFチックなカオスな感じだったのが一変。いきなりだだっ広い平野が目の前に展開されていた。
なんだろ…、昔のRPGのフィールドに街のオブジェクトがぽつんとある感じ…町はしっかり整備されてるのに外は手付かずな感じが何とも。
一応ある程度開拓済みのはずなんだが…まあ原生生物が凶悪で、なかなか勢力圏を広げられないからと解釈しておこう。
そんな違和感も、初日の賑やかさと漸く触れられているという興奮で、直ぐに霧散していた。
周りもプレイヤーやNPCが沢山居て、既にお祭り状態だ。
そんな感じで、団体で少し歩くと、遠目に見えていた森がすぐ目の前にあった。
狩り目的で森に乗り込む者、採取目当てで取り敢えず森の外周で行動する者、皆それぞれの行動を始めたので、俺も採取を始めた。
これだけの人数が居たら、敵も物資も取り合いになるんじゃないかと危惧したが、幸いな事に採取が可能なシンボルは、プレイヤー毎に判定をもってるので、早い者勝ちになる事は無く安心だ。
それにシンボルは場所が固定で、資源がリポップさえすれば、周回して物資を大量に集めるのも不可能ではなさそうだ。もっとも現状[積載]が低すぎて、ホームとの往復の方が時間が長く掛かりそうだが。
それほど時間が経っていないが、既に手持ちが一杯なので一旦ホームに戻り、一部納品し採取を再開。結局依頼を完了するのに二往復する羽目になった。
だがこれでお金が手に入ったので、早速Lv上げをする事に。ちなみに金の単位は円、分かりやすくて実に良い。
教会に向かい、司祭に寄付をしてLvを上げる。
薬草集めの報酬が200円で、Lv7に上げるのに60、7から8に上げるのに70円掛かるので、130円寄付してLv8まで上げて貰った。
これで手持ちが70円になったが、このまま貯めてLvにつぎ込む心算だ。
一応基本方針として、装備には極力金を使わぬようにしたい。なんせありとあらゆるモノにコストが設定されてる以上、装備を強力にした分物資の運搬に支障をきたすからだ。
という事で、にっちもさっちもいかなくなるまで装備には一切金を使わずに、Lvを上げて物資の調達に精を出していこうと思う。ちなみに現在の装備は初期装備のシャツとズボンに、チュートリアルで選んだナイフだ。初期装備はコスト0でナイフは選択肢の中で一番軽いコスト0.5なので選んだ。
ちなみにナイフの性能がこんな感じ。
[ナイフ]一般的な小型の刃物。攻撃力5。コスト0.5。
Lvも上がり[積載]も上がったのでスキルを取得する。
今回取得するのは[幸運]の<大蛇>と<象亀>だ。 スキルはLv1毎にコストが1掛かるので、これでLvアップ分の[積載]はチャラだが、敵に襲われた時の安全度は高まったので良しとしよう。
本日何度目かのギルドに赴き依頼を漁る。色々見た結果、また薬草集めを受ける事に、え?他の依頼は無いのかって?勿論依頼の種類は多岐に渡るが、不履行になると罰則が発生するので冒険はしない主義なのだ。
再び森付近にやって来ると、先程と違い随分と人が散り散りになっていた。
理由は直ぐに判明した。自分が先程採取した植物のシンボルが枯渇したままなので、皆も別のシンボルを探しに周囲に散ってるのだろう。
というわけで自分も森に沿って外周を散策、先程と同じ要領で依頼を達成した。
Lvを上げて薬草集めを継続、[幸運]の<錦鯉>と<甲虫>のスキルを取得し、使い魔が7体の計8ユニットで動けるようになった。
[積載]も1だけ余裕が増えたので、効率も上がる筈だ。
「うーん…流石に近場の資源が無くなって来たな…」
ホームとの往復を考えると、採取するシンボルも近場を優先していたけど、いよいよ見当たらなくなってきており、これ以上外周を進んでも時間が掛かり過ぎて効率が悪そうだ。
「仕方無い、森に入るか」
そうと決めると一旦逆戻りして、ホームに一番近い部分から森に侵入。
同じ考えなのか周囲には再びプレイヤーやNPCが集結していた。
このまま何も起こらず済めば良いと思ったが、そう甘くは無い様だ。
「獣の集団が来たぞー‼」
誰かがそう叫んだ直後、兎と野犬の集団がこちらに突っ込んできた。
「いよいよ初戦闘ってわけか…お前達やっておしまい‼」
俺は一匹の兎と対峙し、使い魔と一緒に囲んでいた。
先ずは俺が、と先制の一撃を叩き込む、だが兎のLPは2割ほどしか削れなかった。
「ちっ、まあいい、お前達やっておしまい‼」
後は使い魔に任せようと思ったが、こいつ等中々行動を起こそうとしない。
「おい!?何やってんだ攻撃し…ぐはっ」
使い魔がぐずぐずしてる内に、兎の体当たりを受け一撃でARMが消し飛んだ。
幸いLPもHPも無傷なので、使い魔を盾に時間を稼ごうと思ってたら、ここで漸く<守護霊>が兎に攻撃、更に数秒後、<魔導人形>と<ゴーレム使い>、その数秒後に[幸運]の使い魔4体の総攻撃で兎が沈んだ。
「マジか…能力的に弱いのは承知してたが行動頻度が此処まで低いなんて想定外だぞ…」
結局俺は被害は出なかったが、そこそこの人数が死に戻りを果たし、俺は俺で兎の戦利品を持ち帰れずに泣く泣く置いてく羽目になるという、散々な結果になった。
「でも使い魔のお陰で乗り切れたのは事実、将来的に戦力に出来るかは兎も角、囮としては優秀なのは間違いないな」
こうして色々な教訓を得て、休憩の為に一旦ログアウトした。
リフレッシュしてから再開、Lvを12に上げ依頼を受ける。
薬草納品と並行して兎の討伐も受ける、兎を最低でも5体倒せば良いので、期限の現実時間の24時間のリミットでも十分間に合うだろう。
森に向かうと早速兎と対面。倒し方は分かってるので使い魔の攻撃まで待ち、使い魔が攻撃を始めたら一緒になってタコ殴りにする。
兎を仕留め、戦利品をゲット。Lvが上がった恩恵で少しの薬草も同時に持ち帰れた。
何度か往復し、薬草を納品し終え、兎も計3体仕留める事が出来た。
所持金が290円なったので、Lvを14に上げる。これで所持金は40円に。
薬草クエストは何度も受けれるクエストなので、非戦闘職には有難い存在だ。
他にも斧を持ってないと出来ない伐採や、つるはしが無いと出来ない採掘など、採取系は沢山あるが、元手が0で出来る薬草摘みはダントツの人気だろう。
俺ももっとLvをあげたら斧やつるはしを買って他の採取もこなしていきたいな。
結局初日である今日は薬草摘みを繰り返し、Lv20まで上げる事が出来た。
翌日、兎の討伐報酬を貰いにギルドへ、計8体仕留めたので400円の報酬を受け取り、所持金が750になった。
その金でLvを23まで上げ、資金が120円になった。
そういえば初心者、低Lv救済と言うか…このゲーム独自のシステムについて説明しておこうと思う。
このゲームは、シンボルから採取出来るアイテムは自分のLvやパラメータやスキルなどの要素で変動し、採取系の因子やスキルが無いと、低ランクの資源が取れなくなっていく。
それで何が困るかと言うと、このゲームで、複数の素材を使用してクラフトを行うには、素材のランクを揃えないと成立しない縛りが有り、折角いい素材をキープしておいても、僅かなランクのズレで無駄になってしまうのだ。
ではLvが上がって低ランクの素材が自力では入手出来なくなったらどうするかと言うと、先ずはNPCの店売りの素材で目当てのランクを探す、競売で検索して買う、採取のスキルを取って、低ランクの素材をシンボルから採れるようにして数をこなす。そして一番確実性が高い錬金だ。
錬金は、複数の素材を合成し、素材のランクを平均化するか合計値化するかを選べ、これにより前述した手段で、キッチリ目当てのランクを手に入れられなくても、合成でどうにかなる可能性が大きくなる。
とはいえ、目当てのランクの為に錬金を行えば、少なくない量の素材を消費する事になる。出来れば錬金には頼らずに、目当てのランクの素材をピンポイントで手に入れたいところだ。
これのお陰で新規のプレイヤーの存在は、システム的にもベテラン的にも保護される存在になるので、気後れもしにくいし、低ランクの素材を高値で買ってもらう事で、新規でも先行組に追い付きやすくなる狙いが有るのだろう。まあこの辺が機能し始めるのはもう少し時間が経ってからだろうけど。
そして何でこんな話をしたかと言うと、どうも[幸運]の効果が採取した資源にも効果が及んでいるみたいで、ランクが高くなるという事は、ただでさえ金をLv上げだけに注いでる俺は平均よりLvが高く、幸運の効果で更にランクが上がり、一番需要のあるボリュームゾーンからランクが遠ざかってしまうので、沢山手に入れても決して高値では売れないという事だ。
まあ捨て値でギルドの競売に掛ければ、それこそランク調整用素材として、高ランクの素材も需要が有るから即売するので、そこまで困る事は無いが、戦利品でぼろ儲けはデザイン的に無理そうだ。
ちなみに競売について補足すると、落札価格を競う形式ではなく、値段は出品時に決めたら固定で早い者勝ちのシステムに成っている。
さて、愚痴も済んだし気持ちを切り替えていくか。
早速依頼を受けにギルドへと行きたいところだが、先ずは腹ごなしを済ませなければ。
このゲームには満腹度と保水度の概念が有り、それぞれが減ってくると見る見るうちに衰弱し、最後は動けなくなってしまうのだ。
それぞれ食べるか飲むで回復出来、出先なら携帯食等やキャンプで、街中なら自炊や外食で済ませられる様だ。
そこまで激しく動いてなかったが、ここにきて大分満腹度と保水度がヤバくなってきたので食堂に向かい食事をした。
100円で生姜焼き定食を食べ、腹も喉も満たされた状態だ。味を感じるという不思議な感覚には驚いたが、美味しく食べれるならこの際どんな理屈でもいいやと思ってしまった。
さて、改めてギルドに向かい、依頼を見ると。[生命]が120以上の被験者募集という怪しい依頼と、[魔力]が豊富な者を募集の2つの依頼が目に入った。
内容を確認し、面白そうなので受けてみる事に、二つともホーム内での依頼で、拘束時間も短いので乗ってみる事にした。
最初に向かったのはハイテク感満載な診療所兼研究所で、受付の姉ちゃんに要件を伝え、中に通されるといかにもマッドサイエンティストな、メガネを掛けた痩せ型の中年科学者が待ち構えて居た。
如何にも嫌な予感を感じながらも、依頼の件を伝えるや否や医療ポッドに入るように指示され、それに従う。
ポッド内が薬品で満たされ、溺れるかと思ったがそうはならずに済んで一安心…では無く、薬の効果で俺の[生命]が38まで下がっていて、[魔力]が123まで上がっていた。なんちゅうもん投与してんだと抗議したい、依頼内容には此処まで強力とは書いてなかったぞ。
今回投与された薬は、[生命]を[魔力]に変換する薬物で、想定外の副作用が出ないかを調べたい様だ。投与が済み発信機を渡され、アラームが鳴ったら来るように言われ追い出された。
次に向かったのは研究所の様な施設で、受付に声を掛けたら奥に案内された。
「あなたが依頼を受けてくれた方ですね、では早速ですがこれを只管漕いで魔力を充填してください」
そう言われて俺が乗ったのが、自転車型の何かで、これを漕ぐと使用者の[魔力]がバッテリーに充填される様だ。「何故漕ぐ必要が?」と聞くと、漕いで発電した電気で[魔力]を工業用の属性に変換していると説明してくれた。
この依頼は[魔力]や[魔素]など魔法に影響するパラメータを持っていて、一定数値以上だと受けれるようで、数値が高い程報酬が上がる様だ。
そう、最初に受けた依頼の薬品の効果を存分に生かす為にこの二つを同時にうけたのだ。
この依頼はある程度魔力を貯めれば自分のタイミングで切り上げれるので、アラームが鳴るまでずっと続ける。
そうして暫くしてアラームが鳴ったので、切り上げて達成のサインを貰い研究所を後にする。余程良かったのかまた来てくれと熱心に頼まれたので、気分も悪くない。
AIが非常に高度なのか、世界観が非現実的でなければ、普通に人と話してる様にしか思えない程度には、会話に違和感を感じない出来だ。
診療所に着き、発信機を返却し軽く問診を済ませ、サインを貰いそそくさと退却した。なんかモルモットを見るような視線が居心地が悪いんだよな~。
ギルドで報酬を貰ってビックリ。計1500円もの大金を手に入れた。
しょぼく見えるかもしれないけど、薬草摘みを4回するより短い時間でほぼ倍の収入は破格だ。その分薬品と運動の影響か満腹度と保水度が随分と減っていたが、100円で済む問題なので、純利益は相当なものだ。
「1日に一回しか受けれないのが惜しい」
この二つの依頼は日に一度しか受けれないデイリークエストなので、明日にならなければ再受注出来ないのがもどかしい。
「まあ薬草集めも並行すれば良いか」
それはそれとて大金が手に入ったんだ、Lvを上げて稼ぎを加速させるぞ。
教会に出向き、Lvを28まで上げる。これで資金が320円に、食堂で魚フライ定食を食べ残金は220円まで減ってしまった。
「そろそろスキルを取るか」
Lvが上がり、装備コストとスキルコストを差し引いても、残コストが20.5と余裕が出来たので、ここ等で守りを強化しようか。
そうして今回選んだスキルは[装甲]の<アーマー上昇>だ。
<アーマー上昇>の効果はスキルLv毎に[装甲]を4上昇させる効果で、現在のスキルLvの最大値の10まで一気に強化した。これで俺の[装甲]の値は68となった。
「これでちっとやそっとじゃやられないタフさになったな」
これでポイントは11になり、残コストは10.5まで減ったが、問題ないだろう。
ギルドで依頼を受け向かった先は、いつもの森ではなく、みすぼらしい柵で囲われたキャンプのような建設現場だった。
「ギルドで依頼を受けてきました」
キャンプ中央に構えられたテントを訪ね、責任者に声を掛ける。
「おお、なら早速仕事に移って貰おうか、概要は分かっているな?」
この問いに頷くと、責任者から紫色に発光する水晶を渡された。
「そいつは魔物を含めあらゆる生物を引き寄せる道具だ。そいつを持って平原を逃げ回り此処に敵性生物が近寄るのを少しでも防いで欲しい」
アイテムの説明を受け水晶を受け取りキャンプの外に出る。
このキャンプは現在建設中のベースの基礎部分で、敵の襲撃が頻発してるせいでなかなか進展していない様だ。
そこで依頼を受けた者が、自身の裁量内で平原を逃げ回り、ベース予定地から敵を遠ざけるのが目的となっている。報酬は出来高制なので、なるべく粘りたいところだ。
そうそう、このゲームは死ぬと持ってる所持金とアイテムを全部落とす仕様で、それでいて銀行などの金融機関が無いという鬼畜仕様、一応アイテムを保管できるチェストが有るので、換金しやすい物に変えてから外に出るのが一番安全だ。
ちなみに今回は、有り金をポーションに変え、背水の陣で挑んでいる。
取り敢えず当ても無いので真っ直ぐ進む事に、ベースはホームから見て北に位置し、そこから西に向かっているので、いつもの森の北側を進んでいる事になる。
少しして兎が数匹現れ襲ってきた。
「どれ、どれだけ堅くなったかお前達で試してやろう」
使い魔と共に前に出て、兎と揉みくちゃになりながら戦闘を開始した。
攻撃系のパラメータが[魔力]しかないので、俺の攻撃力はLv1の頃からなにも変わってないので、持久が上がった分しかダメージも変わらないので、ナイフの切り付けで3割程しか削れなかった。
最弱の敵相手でこれですよ…、ダメージが通る分まだマシだが、この先は俺が囮で使い魔が火力担当になりそうだな。
俺の攻撃で怯んだ兎ともう一体がすぐさま体当たりを仕掛けてきたが、此方のARMゲージは3割程しか削られず、秒間10%回復するので兎相手なら2体同時に相手しても、ARMが削りきられる前に倒せるだろう…てか倒した。
使い魔もトロいが数の暴力で兎を圧殺、そりゃ3vs7なら勝てるよな。
ちなみに使い魔のスキルのLvを上げると、行動頻度と能力が上がると説明にあるので、ポイントやコストに余裕が出来たらそれぞれスキルLvを10まで上げたいところだ。
兎との団体戦に快勝を果たし、少し進んだところで今度は犬の群れに絡まれた。
犬の群れは先程と同様5匹、数ではコチラが勝っている、ここは奇をてらわずに乱戦に持ち込もうと接近、先制のナイフの一撃は犬のLPを10%位削るに止まり、犬の反撃で俺のARMは1/4程削られてしまった。
「流石に兎とは比較にならん強さだな…」
これは苦戦必至と思ったが、使い魔の方は犬の攻撃にも耐え、佇んでいた。
どうやら防御力を持たない俺と違い、使い魔は犬の攻撃を激減出来る程度には防御力を持っているようだ。
これ幸いと使い魔を盾にしつつ、陰から執拗に犬にちょっかいを掛け続け、時間は掛かったが損耗も無く群れを殲滅する事が出来た。
犬との戦闘の感触から、これ以上進むのは危険と判断し、先には進まずにベースとの一定の距離を保ってウロウロする事にした。
それでも時間の経過と共に群れの規模が大きくなり、複数の群れが連携して襲ってくることも珍しくは無くなっていた。
「敵が連帯組んで襲って来るとか勘弁してくれ」
犬20匹以上にしゃぶられながら、何とかベースからの援護射撃圏内に到達。暫く粘っていると実弾やエネルギー光が飛んできて、なんとか生き残る事が出来た。
ベースに生還した時点でポーションは底を着いていて、時間帯も夜に成っていた。
夜は、視界も悪化し危険な生物が活性化するので、外出は控える様にとチュートリアルで聞いていたが、油断のせいで帰還のタイミングを誤ってしまった。
報告の際に、責任者にも無茶は推奨しないと小言を頂いたので、今後は時間帯の管理も気を付けないとイカンな。
ホームに戻り、ギルドで報酬を受け取る。800円の収入になった。
逃げ回れば良いので、ビルドに依っては非常に稼げる依頼だろうけど、俺には合っていないな、まあ楽しかったから良いとしよう。
休憩を済ませ、再ログイン。
先程の収入を使いLvを30に上げ、食事を取る。これで残金は150円だ。
折角なので、さっき取った素材とチェストに死蔵している素材を全て競売に掛け処分、直ぐに捌けて430円の収入成り。
これでLvを31に上げ、残金は280円になった。
ギルドに向かい、依頼を物色してると、需要の増えた薬草を集める為に、護衛と採取で隊を組み森に向かうという緊急依頼が目に入った。
丁度締め切り間近で、10人以上集まっていたので飛び入り参加。護衛と採取どちらか聞かれたので、採取組に入った。薬草のランクは問わないというので其方に飛びついた。
開始二日目にして既に、Lvと[幸運]のせいで俺の採取する薬草は完全にボリュームゾーンから離れていて、競売でも低ランクよりも安い価格にしないと売れない事態になっている。依頼なら数さえ満たせば報酬が貰えるので有難い話だ。
団体で森に向かい、作業を開始した。
「護衛は周囲を警戒、採取班は付近で薬草が取れなくなったら私のとこに戻ってきてください」
ギルド職員のお姉さんが、なにやら端末を操作しながら指示を出す。
時間経過か依頼の影響か、枯渇していた資源が復活してシンボルが光っている。目に入る範囲の薬草を集めてると周囲が騒がしくなった、かと思うと静かになったり、どうやら襲撃を受けているようだ。
今の所は護衛組がきちっと処理してるのか、此方に敵が向かって来ることは無いが、油断は禁物。俺もいつでも戦えるように身構えておかないとな。
森の外周である程度採取すると、職員が手配していたのか回収者が薬草を持って行った。これでコストに空きが出たので、いよいよ森の中に足を踏み入れる。
森の浅層部に侵入した途端犬の襲撃を受け、護衛組が迎え撃つ。
難なく勝利すると、職員が先程と同様の指示を出し、採取を開始した。
一帯の資源を粗方取り終えた頃、護衛の一人が大声を上げた。
「狼の群れが来たぞ‼」
その声を聞き職員が素早く指示を出す。
「採取班は直ぐに集合‼、護衛は皆を守れ‼退却するぞ‼」
直ぐに職員を中心に採取班が集まり、その周りを護衛が固める。そうこうしてる内に狼が犬を従え姿を現した。
「グルル…ガウー‼」
リーダーらしき個体が雄たけびを上げると、配下が一斉に攻撃を仕掛けてきて戦闘に発展、狼と犬の数は多く、護衛の二倍以上は軽く居る様だ。
「誰か戦える者はいないか!?、この危機を乗り越えたら追加の報酬を出そう」
職員の言葉に乗ったのは俺だけだった。
「囮程度なら出来る。それでよろしいか?」
「前に出てくれるのだな!?構わない、無茶だけはしないで欲しい」
こうして俺も戦線に加わり、退却を開始した。
こういう時使い魔と言うのは非常に便利だ。召喚魔法で呼び出す従魔と違い、命令を出せない代わりに捕捉した敵に勝手に突っ込んでくれ、やられてもMPやスタミナで即座に復活するので捨て駒に最適だ。
それに俺のパラーメータの影響を受けた使い魔達は、LPと防御力に優れるので、攻撃こそ中々しないがしっかりと敵に纏わりつき時間を稼いでいる。
俺も使い魔の攻撃を活かす為に、ARMで受けれる分は受けて、注意を逸らす。そこに<守護>霊の斬撃が降り、<魔導人形>の魔法が襲い掛かり、<ゴーレム使い>の拳が炸裂。少し遅れて<大蛇>の巻付き、<錦鯉>の水鉄砲、<象亀>の噛み付き、<甲虫>の角が刺さり順調に狼のLPを削る。
俺がゴワゴワしたのとじゃれてる間に、職員が退路を確保しながら採取班を誘導、護衛も倒す事より時間を稼ぐ事を優先して上手く捌いている。
狼側が次々と増援を呼ぶ中、護衛組も順調に敵を倒し、お互いの頭数は戦闘開始時と大差なく推移している。それでも此方は連戦による諸々の消耗で、少しずつ衰弱していくので、早いとこケリを着けなければなるまい。
漸く森を抜け出す頃には狼と犬の数が大分増え、ギルドからの応援も駆けつけ大規模戦へと移行していった。
「採取班と負傷者は速やかに避難を、戦える者は引き続き戦線に留まって欲しい」
消耗の激しい護衛と採取班が避難する中、俺は留まって戦う事にした。
「残ってくれる者には追加の報酬を出そう、それと食料品の物資が届いているから必要な者は食事を済ませておいてくれ」
職員はそう言い残すと、周囲にバリケードなどを設置し始めた。
「お~、ああいう能力もあるのか」
携帯食を食べながら職員のビルディングを見て感心してると横から声が聞こえた。
「な~、このゲームはホント色々出来るし色々起こるからワクワクするな」
横を向くと革製の鎧を身に纏い、斧を担いだ戦士が居た。
「よ、お前さんも残って戦うのか、俺はマサ、さっきも横で戦ってたんだぜ?」
「ああ、俺はテツ。そうか、じゃあ一緒に戦うか?」
という事で、マサとパーティーを組んで戦線に復帰した。
「俺の戦法は斧での範囲攻撃オンリーだ、火力も守りも程々だから前は任せて良いか?」
「範囲攻撃?よくわからんが敵の攻撃がマサに届かなければ良いんだな」
陣形は俺が前衛でマサが後衛という、傍から見ると不自然な構図だが果たして。
俺が疑問に思ってると、狼が3体向かって来たので塞き止める。
此処でマサが不自然な行動に出る。俺の真後ろで斧を振り回すのだ。俺の理解がいよいよ限界を迎えたが、行動の成果は抜群だった。
「ギャインッ!?」
一応パーティーを組んでいれば、プレイヤー同士の攻撃は判定が無くなるのは、そういうシステムだから分かる、だが俺を飛び越えて狼に、しかもしっかり3体に攻撃がヒットしてるのはどういう事だ?
「因子の専用スキルだ、それで斧のリーチが延びる」
俺の困惑にマサが解答を寄越す。
「ああ…そういえば斧に関する因子が幾つかあった気がする…」
興味を惹かれなかったパラメータや因子は読み飛ばしてたので、こういう時に困るな。
疑問も解消され、改めて俺が前衛、マサが後衛でキャンプを守る。
職員の造ったバリケードや塹壕を活用し、常にこちらが数の優位を保てるように位置取り、騒動が収まるまで粘る。
ギルドから追加の人員が到着し、勝敗が決した事で敵が撤退。増援組が追撃に移り、俺とマサは漸く解放された。
「君たちの活躍は記録しておいた、感謝している。報酬はギルドで受け取ってくれ」
職員も事後処理で忙しそうなので、その場を離れギルドへ向かう。
「おお~、大金だ」
「こっちも中々の収入だ」
採取の報酬に、戦闘への飛び入り参加とその後の継戦の報酬で、3000円もの大金を手に入れた。マサも満足のいく額なのかホクホク顔だ。
「テツが前を張ってくれて助かった、フレンドに成ってくれるか?」
「俺もマサのお陰で楽が出来たぜ、此方こそよろしく頼むよ」
こうしてマサとフレンド登録をして、別れた。
マサと別れた後、休憩から戻り再開。早速Lvを上げに向かう。
現在の所持金は3280円、満腹度も保水度も問題ないのでLvに全投だ。だがその前に狼と犬からの戦利品も売っ払い足しにする。全部で300円になり手持ちが3580円になったので、3550円掛けてLv41まで上げる事が出来た。
所持金は僅か30円になったが、ポイントもコストも余裕が生まれた。
「必要以上にコストを余らすのもアレだしスキルでも取るか」
現在取得もしくはLvを上げれるスキルとにらめっこをする事数分。
「そういえば、狼の群れと戦った時、使い魔が何度かやられたっけな」
あの時は地形を利用したり、形勢が不利になる前にマサが狼を仕留めてくれてたから良かったが、今後ソロでああいった状況に陥る事を考えると、使い魔の供給が追い付かなくなる=死だからな…、そこまで考えて選んだスキルが。
「良し、[獣人]の専用スキル<生存本能>を取ろう」
<生存本能>は、Lv毎にスタミナの回復量と回復速度を1%上昇させる効果で、これを一気にLv10まで上げた。これで10秒で回復してたのが、およそ8秒ちょっとまで短縮される。
これで窮地に追い込まれ難くなるし、追い込まれても多少の延命が効くのではないだろうか?まあそもそもソロで遊ぶならそうなる前に対処しろという話でもあるが。
スキルを取り、資源の状況を確認する為にギルドに寄ってから森に向かう。
「やっぱり依頼を受けた場合は資源の判定は別なのか」
先程依頼でごっそりと薬草を採取した場所は、初日に採取して枯渇していた場所だが、先程の依頼時にはキッチリと資源が復活していたが、今来たら資源が復活してるので、資源はおよそ1日で復活し、緊急依頼を受けてる最中は依頼に含まれてる素材のシンボルのみ資源が復活する様だ。
疑問も解決し、資源も復活したしで、取り敢えず目に付く限り薬草を集めてコストが一杯になった時点で帰還した。
「やっぱコストに余裕が有ると効率が良いな」
最初は一回の依頼をこなすのに二往復する羽目になっていたが、今は一往復で依頼三回分の薬草を集める事が出来る様になった。
[速度]も地味に効果を発揮し出し、効率化に一役買ってくれている。
その後もこれと言って良さげな依頼も無かったので、寝るまで薬草を集め、今の自分が安全に動ける範囲の薬草を取り尽くし、ログアウトした。
翌日、憂鬱な気分で起床し、出勤。そして帰宅した。
「ふぅ…やっと触れるぜ、日中は禁断症状で手が震えたぜ」
社畜の辛いとこだが仕方ない。金がなきゃ娯楽もままならんしな。
ログインを済ませ、インフォメーションに目を通す。
そこには悪質な詐欺行為やPK行為に対するペナルティが記載されていた。
このゲームは詐欺もPKもシステム的にはまるで取り締まる気がないくせして、規約にもしっかり書かれる位違反行為として定められている。
この二つに限らず規約に違反したプレイヤーは、普通ならアカウントの利用停止…通称BANの対象になるが、このゲームでは能力の低下や一部システムの利用制限等の、ゲーム内ペナルティで執行される。
そしてそれらのペナルティを解除したい場合、制限を解除するアイテムを課金で手に入れるか、ゲーム内で無償で奉仕活動に従事させられるか、コロシアムで重いハンデを背負って戦うかを選ばなくてはならない。
既に何人ものプレイヤーが検挙されており、ブーブーと文句を垂れてるようだが、規約をしっかり読まず人様に迷惑を掛ける様な輩は害悪でしかないので、運営グッジョブと言わざるを得ない。
それにしても違反行為の代償を課金で支払わせるか、ゲーム内での奉仕で支払わせるというのは面白い。むしろ良く許可が出たなと思うが深く考えないでおこう。
結局どれだけ巧妙に偽装しようと、運営は常に監視を怠らないので、悪事を働くならそれ相応の覚悟を持てという事が、長文で書かれていた。
さて、先ずは治験と魔力充填の依頼を受けるか。
依頼を終え、1600円の報酬を受け取る。Lvが上がった分成果も良かったのだろう。
昨日の依頼や競売の稼ぎと合わせて現在の所持金は3700円、食事は済ませてある。
Lvを49まで上げ、残額は140円になった。
相変わらず資金はLvに全力投入している。なんせ強い装備は高いしコストも重いから、現状は素直にLvを上げるのが一番費用対効果が優れてるのだ。
俺としてはパラメータを上げる付加効果が付いた、軽い防具でもあれば欲しい所だが、今の所そういった便利防具は市場に無いので、暫くは金の使い道はLv上げ一辺倒だろう。
ちなみに、パラメーターやスキル、因子や装備等で換算された能力値を、ステータスと呼ぶ、そしてパラメータを強化するOPと、ステータスを強化するOPでは、ステータスを強化するOP…というか大体のスキルや装備等の効果は、パラメータよりステータスの強化率の方が高い。
これは、パラメータは様々な分野に影響の出る項目で、使い魔もパラメータの数値を参照に強化されるので、恩恵の広いパラメータは、強化率が低くされているようだ。
逆にステータス…、LPやSTAやコスト等は、シナジーが少ない代わりに、スキルやOP等の強化率が高めに設定されているので、単純にスペックでゴリ押しをしたいのなら、[生命]を強化するものより、LPを強化するものを選んだ方が、数値上の強さは上だろう。
話が脱線したので戻そう。
さあLvが上がったので、一番活躍してる使い魔、<守護霊>のスキルをLv10に上げた。
森に向かい、薬草集めがてら兎や犬と戦わせると、直ぐに成果が表れた。
今までは、攻撃まで五秒ほど棒立ちの時間が存在したが、今回はおよそ半分の二秒半に短縮され、犬を一撃で倒せるようになった。
火力に特化したプレイヤーなら初期武器でも、もっと低いLvで狼すら一撃で仕留めるのだろうが、数を備えた上でそこそこの質を持つのも一つの強さと言えるのではないか。
その後も採取と戦闘を繰り返し、今の俺なら森の浅層位ならソロで十分立ち回れる事が判り、明日からは中層にも入ってみようと決めた。
ホームへ帰還後、諸々の生産を終え、ログアウトした。
翌日夜、ログインするとマサからメールが届いていた。
内容は、一緒に森の奥に入ろうぜ、というおあつらえ向きの要件だった。
「ばんわ~、俺は準備万端だ」
了承の返信をしたら、即出向いて来たので先にLvを上げておく。
昨日の稼ぎで所持金が2600円になってたので、Lv54まで上げた。残金は50円なり。
「Lv54…道理で使い魔が異常に強い訳だ」
「ん?マサはLv幾つなんだ?」
「30だ、装備にも金を掛けてるからな、現段階では標準的なLvだと思うが」
まあ、初期装備のハンドアクスであれだけの火力とリーチを出そうとしたら、色々犠牲にしなきゃ無理だろうよ。
「ちなみにLv特化にしてない人の使い魔はどんな感じなんだ?」
個人的には、ローリスクで捨て駒に出来るユニットが、無限湧きする使い魔のスキルは、相当強いと思うが、今の所同業者をそんなに見ないんだよな~。
「プレイヤーのパラメータ依存だからLvが低いと打たれ弱いし、行動もトロいから何も出来ずにやられてスタミナだけバカ食いする…、ハッキリ言って死にスキルに片足突っ込んでるってのが、現在の評価で、絶賛急降下中だ」
あれま、思った以上に低い評価だったのね。しかも現在進行形で、下がり続けていると。もしかしたら今後は、敬遠されて増々ソロが増えるかもしれないな、今の内に覚悟しておこう。
「従魔、ペットの方が強いし賢いから連携も取り易い。それでいてパーティーの枠も使わず、やられても従魔なら再召喚、ペットならホーム等の安全地帯に戻れば再度連れ歩けるからな…使い魔を無理に使う理由がそこまでというのが現状だな」
「まあ今の所は困って無いから良いけど、Lvでのゴリ押し以外に、ソロでも効率よく稼げる方法を考えておいた方が良いかもな」
マサとそんな話をしつつ、森の中層を目指す。
「人が多いな、これならある程度ゆとりをもって探索できそうだ」
ゲームにも慣れ、力を持て余しだしたプレイヤーが、強敵を求めて手頃な場所に集中、と言うのがこの人の多さの理由なのかな?。
「まあ俺はコストに余裕を持たせてるから、採取もやる…と言うかそっちメインだから、敵の取り合いになる様なら俺の護衛を頼む」
てな事で、中層での活動を開始、楽勝ムードは何処へやら。自分らを含め早速中層の洗礼に晒される羽目になった。
「グハッ」「堅すぎる!」「攻撃が痛すぎる‼」
周囲から響いてくるプレイヤーの叫び声。
「これだけ人数が居てもこの様か、エリアのランクが上がるとこうも厳しいとは」
中層で襲って来た敵は浅層に引き続き犬や狼、新顔で鹿、猪と遭遇する様になり、その強さに悶えている状況だ。
「仕方ない。マサ、下がろう」
周囲に比べれば幾ばかりか余裕が有る俺達だが、周りが崩れれば集中砲火を浴びるのも時間の問題だ、余力がある内に浅層に引き上げてしまおう。
俺達の傍が比較的安全だと見抜いた目聡い連中と団子になり、何とか浅層まで引き上げる事に成功、一応敵の個々の強さは大体分かったので、それで良しとしておこう。
俺達に便乗して退避してきた連中は何も言わずに去っていった。まあ礼を強制するのも筋が違うかもしれんが、気分が良いかと言われれば首を横に振らざるを得ないな。
「このまま帰るのは癪だしもう一度トライしよう」
中層との境界線で少し待機し、静かになってから中層に再挑戦した。
先程多くのプレイヤーが敗走したからか、敵の数も疎らで襲撃の頻度も少なく、新顔相手に落ち着いて戦う事が出来た。
狼は犬の上位版で、大きく強く早く堅くとシンプルに強さを増しており、前衛が足りない状態で同数以上で襲われたら厳しいだろう。
鹿は角の突きと蹴りが破壊力抜群で、常に距離を取りコチラから間合いに入ると仕掛けてくるという、非常にいやらしい動きをしてきた。
猪は単純に強い、これに尽きる。なんせ[幸運]の使い魔四種は、猪の突進一撃で倒されてしまい、防御力も堅牢な故に突進をやり過ごしても、直ぐにはケリを着けられないのも困ったものだ。
そんな強敵たちだが、俺やマサがそれぞれソロで動いた場合には脅威に感じるが、俺が前を固めマサが後ろから攻撃できる布陣なら問題なく立ち回れた。
先程の様に、人が多く居るとそれだけ敵を多く引き寄せてしまうらしく、少数で動けば大規模な襲撃は早々起こらない筈だ。
使い魔の数が敵の数に影響を与えないのは確定だろう。お陰で常に数で優位に立てるのが大きく、俺とマサの戦いは常に安定していた。
それから少し戦闘を行った結果、マサのコストが一杯になり、そのまま中層での採取に移行。俺のコストが一杯になるまで粘り、大量の戦利品を持ち帰る事が出来た。
ギルドで条件を即満たせる納品依頼を完遂したり、売り払ったりして現金化、マサと山分けにして収入は2300円となった。
マサとはそこで別れ、寝る前に治験と充填の依頼を受けて一儲け。
明日の朝は早いので、いつもより早くログアウトして就寝した。
日帰り出張から帰りログイン。
そろそろ傷んできたナイフを修復し、食事を取って教会へ向かう。
現在のLvは54、所持金は4000円、Lvを61に上げ所持金は10円に。
コストに余裕が出来、<魔道人形>のスキルLvを10に上げた。
そうそう、最近分かって来た事が有る。[幸運]についてだ。
[幸運]の効果はドロップ品の確立とランクが上がるというのが公式の説明だが、実際にはシンボルから採取した素材のランクにも影響してるんじゃないか?、というのを以前感じたのだが、どうもドロップ率アップも効果が有るんじゃないかと思っている。
何しろ金はLvを上げる為に全投資だから、パラメータが高くなってきた今日。シンボルから採れる素材の量が増えてるのだ、おまけにランクもバラバラだ。推測だが[幸運]の効果が高まり取れる素材が増えた事により、一個辺りのランクが下がっているのではないか?、という予測なのだが…。
ネットでその辺りを調べても、[幸運]を選択したプレイヤーでLvが高い人が少ないか、情報を出さないだけなのか、それらしいものが見当たらないので確証はないが、マサとのやり取りで、[幸運]の効果だろうという推測は出来た。
まあ何が言いたいかと言うと、[幸運]は上げるだけ上げても困らないパラーメータだと分かったって事だ。使い魔を運用する心算でビルドを組むなら金策も捗るし、必須とも言えるパラーメータだろう。
但し、自身のLv帯より下のランクは相変わらず出ないから、生産に手を出すなら専用のスキルを取る事をお勧めする。
そんな感じで、最近は[幸運]の影響でランク幅も量も豊富な素材がチェストに溜まって来たから、その内放出して資金に変えてしまう心算だ。
ギルドで適当に依頼を見繕い森に向かう。
相変わらず大盛況な森だが資源とか大丈夫なのだろうか?。
一応浅層のシンボルからの採取は控え、中層に向かった。
資源の判定がプレイヤー毎にある位だから、大丈夫だと思うけど、気持ち初日に比べたら資源の回復が遅くなったような気がする…、気がするだけだが資源の枯渇で暫く採取できなくなるとかあっても不思議ではないからね、気休め程度には用心しておこう。
中層での活動は順調だ、Lvも上がりスキルも強化したお陰で近づく敵は使い魔が転がし、自身は採取に専念出来ている。
鹿や猪の肉が手に入ると、料理に手を出したくなるがここは我慢。
今の状況だと、素材のランクを揃える為に消費した素材に見合う料理が出来るわけでも無く、作るだけ赤字になってしまうので、料理は勿論生産に手を出すのは当分ないだろうな。
幸い鹿肉も猪肉も出汁や調味料にと需要の高い素材らしく、ランクに関係なく高く売れるのは有難い。
中層は薬草に加え、同じシンボルから毒草やハーブも取れるようになり、料理人の需要にも応えれるようになったのも収入的に大きい進歩だ。
ギルドに戻り清算し、日課の治験と充填を受け依頼を熟し、研究所に戻るとこんな話を持ち掛けられた。
「知り合いの墓守がタフな警備員を欲していてな、君。興味は無いか?」
面白そうなので話だけでもと思い、紹介状を受け取りベース南門から南東に有る墓地に赴き、管理人に紹介状を渡した。
「ほうほう…確かに生命力溢れた体をしておる」
此方をジロジロと観察しながら呟くのは、ウィルと名乗った中年だ。
「早速だが内容の説明に入るぞ?」
ウィルの説明によると、生前高濃度の魔力に汚染された生物の遺骸、又は死後汚染された場合、アンデット…魔物となる可能性が有ると言う。
ちなみに魔物とは、その名の通り。魔力の影響(例外も多数存在するが)で変異した存在を指すもので、規格外の怪物をモンスターとこのゲームでは呼ぶらしい。
話を戻して、アンデッドとは生者に惹かれ、対象の生命力を簒奪して体を維持するとの事で、警備に就く段階で生命力が低い者は弾かれる。
「アンデッドがいかに危険な存在か理解したな?」
そしてここからが重要で、とウィルの言葉の続きがこんな感じ。
「このランタンはアンデッドの活動を鈍らせ、停止、浄化させる効果が有り、それ以外の対象にも倦怠感や疲労を与える便利なマジックアイテムだが、厄介な事に持っている間は非常に虚弱な体に成ってしまい、普通は所持すらままならないんだ」
ほれ、とカボチャ型のランタンを渡されたので装備してみると、402あったLPが202まで下がってしまっていた。
「こ、これは強烈なデメリットだな…」
「只墓荒らしや畜生共から、遺体を守るだけなら、そんな道具を使う必要は無いのだが、此処に埋葬されている遺体はホームの発展に貢献してきた有志達だ、ならば遺体は一定期間埋葬し安全を確認するか、最悪魔物化したら浄化して、葬ってやるのが流儀なのだよ、その為には浄化を補助するランタンが必要なんだ」
確かに、死後魔物になって、討伐されるより、人として荼毘にふされる方が良いよな。
「お主にしてほしい仕事は、獣共や墓荒らしの罰当たり共から、遺体を守りつつ魔物化した遺体を鎮め浄化する事だ。…危険だし割に合うとも言い難いが受けてくれるか?」
これと言って断る理由も無く、先の展開が気になるので受ける事にした。
そうと決まればウィルと手続きをし、アラームで仕事の時間を知らせてくれるとの事なので、この日は説明を受けただけで帰還した。
仕事に備え就寝する為にログアウトし、仕事への鬱とゲームでの高ぶりを抱いたまま眠りに就いた。
2週間後位を目途に、次を投稿出来たらと思います。