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108.「足跡」、「凶器、あるいは狂気」
「足跡」
つけてきた足跡は化石になり
道は立ち上がり壁になる
爪を立てる気力すら奪われたまま
足をすくわれ地べたに伏す
無慈悲なプレートテクトニクスに飲まれそうになり
二本足の蟻のごときみっともなさで
這いずりまわり逃げ続ける
今、何年なのだろう
もう、何千日、過ぎたのだろう
涙を流すことが生きることになった
ーーー
「凶器、あるいは狂気」
温もりは嘘をつく
暖かな血は騙すためにある
抱きしめられて
どんなに拒んでも
冷えきった体を
温かさは蝕んでくる
何も感じないようにする
決して認めないようにする
でなくては自分自身を守れない
体はますます冷えて
おぞましい温もりは
いきり立ち熱となる
呪いの言葉と共に
容赦なく私を穢す




