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106.「発芽」、「平凡」
「発芽」
奪われた自由に対する
憧憬は生への欲で
暗黒の地中から渾身の芽を出す
そのたびに
無関心な神が踏んでいく
アメーバのような絶望は
脳を侵略して鉛と化す
なんのために生きているのだろう
自問は禁句になる
ーーー
「平凡」
平凡を見失う
いつの間にか取り囲まれた
深い霧の中で
晴れることのない霧と知ったからには
霧の民となるより他にない
仕事は三途の川の河原で
石を積むこと
報酬はない
あちらこちらから出現した
悲しい仲間たちと
石を積む
仲間でなければ
通じない無言で
血を吐くような叫びを
受け止めながら