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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

もしも経営者がダンジョンマスターになったら

もしも経営者がダンジョンマスターになったら[短編版]

初めまして!

構想中の長編小説のプロローグに相当する短編小説です

ぜひぜひご一読頂き、感想やアドバイスなど頂けましたら幸いですm(_ _)m

「帝国軍が領内に侵入致しました

兵力は魔導砲10門に銃歩兵隊、騎士隊で構成されたおよそ5千

まもなく戦闘領域に到達します」


城壁に立つ私に、無線を通して隠密部隊長からの報告が入った

彼女の報告はいつも明瞭簡潔だ


「承知しました

魔導師部隊、魔導障壁を展開して下さい」


「分かったわ

しっかし、懲りないわね

人間ってどうしてこんなに戦争が好きなのかしら?」


無線の向こうから苛立った声色で、魔導師部隊長でもある長女が応答する


生まれながらに天賦の才を持つ彼女は、有り余る魔力と魔術の才能に過信し反抗期には大いに手を焼いたが今では立派に部隊を率いている


その美しさを見染めて求婚する者が後を絶たないのだが本人が頑なに首を縦に振らない

もっとも、彼女の本性を知れば皆恐れ慄くことになるだろうが・・・


「この世界の全てを思い通りにしたいのでしょうね〜

それが世界を壊す事になったとしても」


舞台の準備に追われている筈の次女からも、おっとりとした声で無線が入った


次女はおっとりとした性格だが最上位の支援巫女で、時に核心をついた発言で私を驚かせる


そんな次女も、類稀なる才能を持ち攻守の要となった長女に対してコンプレックスを持ったこともあった


ふたりの娘は同じ母から生まれた双子なのだが、どういう訳か性格も得意分野もまるで違っている


暫くすると、戦いの始まりを告げる轟音が鳴り響き、敵の魔導砲が火を噴いた

魔力を凝縮した魔導弾が空を切り裂き城壁へと迫る


アレが直撃すれば、石造りの城壁などひとたまりもないだろう


しかし、城塞を覆った魔導障壁がその行く手を阻み、魔導弾は力なく地面へと墜落し城壁に傷ひとつつけることはない


その後も休むことなく砲撃は続く

どうやら敵軍は物量攻撃を仕掛ける作戦らしい


「魔導障壁活動限界まで、どれくらいですか?」


「2時間ってところね、魔導砲の威力が上がってるから、私はともかくみんなの魔力が持たないわ

ったく、人間ってこういうところは流石ね」


悔しさを滲ませて長女が応答した

彼女の言う通り、人間はより強力な武器を開発することに余念がない

それが経済と文明の進歩に繋がっている事も確かなのだろう


「では、こちらも動くとしましょう

黄機甲師団(キイロ)前へ、支援部隊は付与魔術で援護して下さい」


「リョウカイ」


「は〜い」


全身を鎧で固め、身体を覆う大楯を装備した重装歩兵団が城門から進軍していく


その先頭には一際大きな巨軀を誇る団長の姿がある


彼は、仁王像の様な厳しい顔に筋骨隆々の体躯といった見た目とは裏腹に誰よりも優しく命を慈しむ


しかしながら魔導砲すら単独で跳ね返す防御力を有しており、更に城内の支援部隊からの付与魔術によって増幅された彼はさながら装甲車のようだ


事実、敵の銃歩兵隊からの一斉射撃を歯牙にもかけず正面から敵軍にぶつかった


頼みのアウトレンジ攻撃が効かず、堪らず敵軍も魔導具を装備した騎士隊が迎え撃つ形になった


対して機甲師団は防御力に特化し戦線を押し上げる任務に長けており、俊敏に優れる騎士隊とは相性が悪い


紅強襲師団クレナイ)、出番です」


「承知」


気を発したような短い返答の後、敵軍左翼から全身赤備えの鎧に身を包んだ剣士隊が湧き出てきてその中腹に突撃した


敵軍の進軍を察知して予め配置した伏兵だ


その先頭では真っ赤な髪の涼しげな美男子が焔を滾らせた刀を振るい、放たれた一閃は遮ろうとする者全てを薙ぎ倒す


一体何万、いや、何億回刀を振ればあの境地に達する事ができるのだろうか?


彼は最も古くからいる仲間のひとりで、他の者達と違い出会った当初は最弱の存在であった


しかし、文字通り血の滲む鍛錬の積み重ねと、幾多の死線を生き抜いて彼は剣の頂に到達した


灼熱の焔を纏う修羅が率いる赤備えの一団は一体の荒ぶる獣のように敵軍を蹂躙し、敵兵はたちまち恐慌状態に陥った


「飛空兵団、仕上げと参りましょう」


未だ多くの部隊を温存しているが、私は早くも勝負を決めにいくことにした


-兵は拙速なるを尊ぶ-


戦は短期決戦を優先すべきという事を表した一節だ


「父上、行ってまいります」


私が静かに頷くのを確認して、ワイバーンに跨った長男が隊員達に合図を送り城壁から上空へと飛翔していった


気の弱いところがあった彼も、今や立派な団長へと成長した


混乱した敵軍からの対空攻撃は皆無で、ワイバーン達は我が物顔で大空を駆け抜けあっという間に敵軍上空に到達する


「降下!」


長男の合図で次々と団員達がワイバーンから飛び降りていく


それは落下傘などの無いただの落下運動

両手を広げ、大型の猛禽類が空を舞うように優雅に二度三度と宙返りをして彼らが降り立ったのは敵軍の指揮系統の中枢、即ち敵将がいる場所だ


空から突然の敵兵の襲来に驚愕した敵兵だったが、流石に将を護衛する近衛兵だけあり咄嗟に剣を構えた


飛空兵団は武器を持たない

しかし、皆それぞれが卓越した武闘家たちだ


傍目には超一流のダンサーが舞うように敵の攻撃を躱し、カウンターで放たれる突きや蹴りは一撃で相手の意識を刈り取る


苦もなく近衛兵を制圧して、敵の将軍を捕らえた


黄機甲師団(キイロ)紅強襲師団(クレナイ)の活躍で敵軍が混乱状態になっていたことも大きいだろう


「終わりましたか?」


背後からの声で振り返ると銀髪の美女が優雅な足取りで歩み寄ってくる


彼女は主力部隊のひとつ、緑狙撃部隊(ヒスイ)の隊長だ


「ええ、あの子がやってくれました」


「貴方様の子ですもの、当然ですわ」


「貴女の子でもありますよ」


そして、私の妻の一人でもある


城内での防衛戦に備えていた彼女に防備を解くように伝えた


将を捕らえられた敵兵の多くは蟻の子を散らすように霧散し、捕らえられた敵将が私の前に引き出された


「当方への侵攻を断念するよう本国にお伝え頂けませんか?」


無駄だとは知りながらも一縷の望みに賭けたくなるのは昔の名残りだろう


「調子に乗るな!

幾多の街を制圧し、人々を隷属する魔王めが!帝国は貴様ら魔物になど、絶対に屈する事はない!」


予想通りの反応・・・


「色々と誤解があるようですが、何よりも私は魔王などではありませんよ」


「人類に仇なす魔物が何を言うか!

ならば問おう!貴様は一体何者なのだ!?」


「経営者です」


「は!?」


「私はあなた方からダンジョンと仲間や家族を守るために、経営方針を示し事業戦略を組み立てタスクを明確にして管理してきただけです」


「ちょっと何言ってるかわからんが!?」


この世界でいったい何度その言葉を言われただろうか?










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