#3 もしかしたら……!
隼人は事務所内に誰もいないかを確認するように自席に戻る。
そこからは全く物音が聞こえない。
「よかった……今はみんな外回りで出払っていて……」
どうやら、事務所内には彼とリイサ以外はいないようだ。
隼人は安堵したかのように鞄からタオルを取り出し、流れ出ていた汗を拭きながら彼女がいる備品倉庫に戻り始めようとする。
その時、彼はふと何かを思い出したように「そういえば……」と呟いた。
「おそらく俺が冷や汗をかき始めた段階でリイサに気づかれたかもしれないな……」
隼人はリイサと会話していた場面を思い出す。
これまでの自分の行動を客観的に振り返ってみると意外と彼女に気づかれる場面は多々あったのだ。
そして、リイサには話していないが、確実にバレているであろう例のトイレットペーパーの件も――。
「確実にバレているだろうな……まあ、今は俺自身を疑っても仕方ないよな……今回はリイサに推理を任せるとしよう」
彼は彼女に推理をする権利を与えることにした。
たとえ、リイサが隼人のことが怪しいと感じていたとしても、その答えがすでに分かっていたとしても――。
彼は彼女がどのように推理をしたのかを楽しみにしていた。
2019/04/14 本投稿