表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らのTS冒険記  作者: 灰塵
第二章
36/88

35話 採集クエストと魔道具

 声を潜め、木陰から様子をうかがう。


 眼前に広がるのは直径三〇メートル程の円形の広場。それがマップ上に示された転送ゲートのある場所だ。


「………………、アレがフロアボスか?」


 シロさんの言葉には酷く落胆の色が滲んでいた。

 まぁ、それについてはボクも同意見なんだけどさ……。


 何故って、そこにはレッサーベアと大差の無いモンスターが鎮座していたからだ。状況から見て、間違いなくアレが一層のフロアボスなんだろう……。


 でも、あの時の大熊に比べたら体長だけでも半分以下、体積で言うなら八分の一以下だ。油断は良くないって分かっている。だけど、ボクらにとって『ボス』という言葉から連想するのはやはり大熊なのだ。だから、どうしてもアレと比べてしまう。


 っていうか、アイツ……寝てないか? 広場の中央でうずくまったまま、ちっとも動かないのだ。いや、まさかね……さすがにない……よね?


「ねぇ、アレ。シロさんの初撃で終わるんじゃない?」

「アタシもそう思う」

「OK、今まで通り後衛で先制して、倒しきれなかったらカナとハルで頼むわ」


 そんな風に戦略を決め、ボクらの先制で戦いの火蓋は切られた。……のだけど、何の意外性も無くあっさりと終了してしまった。一本の矢と二種の魔法でアイツはその場から動く事もなく昇天。戦いにすらならなかったのだ。


「有利に戦えるのは良いんだけどさ、これじゃ戦闘の経験値が溜まんねぇな」

「次回はもう少し先の層まで進んでみる?」

「そだね」


 ボスの魔石を回収し終えると、広場の中央に集まった。聞いた話では転移ゲートの起動は実に簡単。


「確か魔方陣に乗って、次の層へ行こうと思えばいいんだよね……」


 独り言のように呟いて魔方陣に踏み入ると、地面が微かに発光し始めた。次の瞬間、視界が白く染まったと思ったら周りの風景が変わっていた。


 変わってはいたんだけど……。そこは目新しい景色という訳ではなく、一層と同様の森林が広がっていた。試しに一度だけ敵と交戦してみたけど、難易度的にも一層との差は感じられなかった。


 ただ、モンスターの構成は変化しているらしく、シロさんの索敵に引っかかったのは全て狼系。以前一層で倒した野犬を少し大きくした程度のモノだった。レッサーベアよりは素早そうだけど、攻撃力は明らかに劣っているので総合力で見たらトントンといったところだろう。


 まぁ、一番の目的である階層移動は体験できた事だし、あとは一層に戻ってクエストを消化してしまおう。



 今日受注したクエストは採集が三種類と狩猟が一種類。少々量が多いけど、これはモニター商品を試す目的も兼ねての事だ。クエストが多く受けられればボクらの利益にも繋がるしね。


 そして採集の一つ目は、ヒーリングリリー。大熊の襲撃現場って事もあり、少しピリピリと警戒してしまったけど、前回もやったクエストなのでコレはあっさりと採集完了。


 そこからワイルドボアの生息する西側へ移動する過程に、全ての採集ポイントがあるので順次収穫していく。



「落とすよ~」

「お~らいっ!」


 枝にぶら下がる黄色い果実をもぎると、カナさんが声を掛けてきた。

 

 ボクらの中で一番身軽なのはシロさんだけど、索敵を疎かには出来ない。なのでこういう場合にはカナさんが率先して動いてくれている。彼はスルスルと木を登ると、熟れた実を下で待つボクらに放っていく。


「よっ……と!」


 ボクは実を傷めないように、両手でしっかりと受け止める。手にしたソレはリーチペアって名前の梨によく似た果実だった。


 直径一二センチ程の大玉。折角なので収集分とは別に二つ程多く収穫してその場で食べてみたけど、育ちすぎて大味になっているという事もなく、凄く瑞々しくて甘かった。


「全く手入れされてないのに、こんなに大きく実るって凄いね」

「それが世界樹の力なのかもな」


 ダンジョンの産物で街の食糧事情が賄えるんだから、世界樹の恩恵って凄いな……。一応街の外には耕作地もあるのだけど、ダンジョンで採れるモノの方が立派なので、そちらはあまり人気が無いのだそうだ。


「そう、そのヘタを切って下さいな――――わわわ、キャッ」


 ベティさんもシルフにお願いして収穫を手伝っていたけど、頭上から落ちてきた果実に驚いて尻餅をついてしまった。だけど、落ちてきたその実は、彼女に当たる直前に風の力でフワリと浮き上がる。


 目を丸くして驚く彼女の周りを、楽しそうに黄緑色の精霊が飛び回っていた。精霊って魔法って言うよりも六人目の仲間みたい。


 実際、彼女は精霊と友達のようにじゃれ合っていたし。そういう関係を築けるのが『精霊使い』としての適性の高さなのかもしれない。


 そうして、全部で一〇個ほど摘み取ると、ボクはどんどん鞄に入れていった。


 そうそう、こういう収穫物は現地で消費する分には問題ないのだけど、ダンジョンから持ち出す場合には、全てゲートで記録する決まりになっている。


 ダンジョン内の植物や生物は、基本的に絶滅することは無い。それでも乱獲しすぎると産出量が激減する事があるのだそうだ。そこでギルドが中心になって収穫量の管理をしているってわけ。



 そして、最後にレタリーフっていうの葉物野菜を収穫したら採集クエストはお終いだ。結球しないレタスって感じで、重量は大したことないのだけど結構かさばる。これも一〇個ほど摘み取って鞄に放り込んだ。


 しかし、本来ならかなりの大荷物なのだけど、全部小さなポーチに収まってしまった。魔道具恐るべし……。


「ホントすげぇな。重さも軽減されるんだろ?」

「うん、何も入ってない状態と全然変わらない」


 ほらっ、と腰からポーチを外してシロさんに渡すと、みんなが順番にポーチを持ち上げて感嘆の声を上げていた。


「この鞄、発売したら絶対売れますね。私も欲しい……」

「でもお高いんでしょう? ってヤツだね」


 本当にお高そう。


 さて、残るは狩猟クエストだ。とはいえ、所詮一層のモンスター、ボクらの敵じゃない。消化試合みたいな物なのでさっさと片付けてしまう。



 「あ……悪ぃ。外した」


 シロさんの矢はワイルドボアの耳をかすめて素通りしてしまった。

 ま……まぁ、こういう事もあるよね。


 『攻撃しすぎて肉質が落ちたら、買い取ってもらえないかも?』


 なんて話題が出たものだから、シロさんの弓だけで仕留めてもらう事になったのだ。それが少しプレッシャーになったみたい。


 ボクは念のため準備しておいた小石に、魔力を込めて撃ち出した。


 ボクが今までに使った攻撃魔法は炎と冷気。それはどちらも肉を著しく劣化させてしまう。そこで覚えたての(つぶて)攻撃というわけ。少しでも怯んでくれれば儲けものだ。


 小石は突進を始めたワイルドボアの眉間に命中し、軽く鮮血が舞ったがその足を止めるまでには至らなかった。額が軽く抉れているし、威力不足と言うほどでは無いと思う。強いて言うなら、ワイルドボアの根性に負けたって感じ。


 奴の牙がボクらに届くにはまだ間がある。シロさんが急いで第二射を番えていると、突然ワイルドボアの前足が跳ね飛んだ!


「おっ!?」

「前足だけなら査定に響きませんわよね?」

「ベティ、ナイス!」


 土煙を上げて転倒したワイルドボアに、ハルちゃんが刃を突き立てとどめを刺した。ボクも【診察】できちんと絶命を確認する。



「それじゃ、ジャマーを打ち込むよ」


 ダンジョン内のモンスターは、放っておくと死後五分ほどで魔石に変わってしまう。ジャマーはその魔石化の作用を阻害し、食材として利用する為の物だ。


 形状は針先に返しの付いたアイスピックという感じ。それを絶命したワイルドボアに打ち込むと、死骸が薄らと発光し弾けるように光が飛び散った。ジャマーは正常に機能していることを示すように、柄の魔石が緑色に発光していた。


 ジャマーには肉の劣化を抑制する効果もあるらしく、解体作業をせずとも鮮度を保ったまま持ち帰る事が可能という優れものだった。


 まぁ、内蔵とか余分な部分まで持ち帰る事になるので、その分重量が増えるけど解体作業なんてボクらは出来ないしその点は我慢するしかない。


「ミッション・コンプリート! んじゃ、帰るか~」

「「「「おー!」」」」


 『無事に帰り着くまでが冒険です』と自分たちに言い聞かせ、ボクらは出口を目指した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ