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第9話 三匹のビッグボア

 今ここに避けられない戦いが起きようとしていた。


 その戦いとはフェンリルとビッグボアの戦いだった。


「くそ。突っ込んできやがった」


 フェンリルの眼前にはビッグボアがいた。


 そのビッグボアは文字通りに猪突猛進してきた。


「さぁ! いつまで避けられるかな」


 どうやらセルジュは避けられることを前提にしているらしかった。


 つまりフェンリルのスタミナが尽きるのを待っていた。


 しかしスタミナが尽きるのはビッグボアも一緒だった。


「くそ。出来ることなら戦いたくねぇ」


 フェンリルの独り言だ。


 悪いのはどう考えてもセルジュだ。


 従魔に罪はない。


 だけどこのままだとスタミナが尽きそうだった。


「くそ。戦うしかないのか」


 フェンリルは避けた後のことを考えていた。


 戦うべきか。戦わないべきか。極限の選択を迫られていた。


 そもそも大蛇と戦ったのは怒りが勝っていたからだ。


 とりあえずフェンリルはビッグボアの猪突猛進を避けることにした。左に跳んで避けた。


「くそ。カウンターがやりづれぇ」


 大蛇の場合は地中からの攻撃で後ろ跳びからのカウンターがしやすかった。


 だけど今回の相手は一直線に突っ込んでくる従魔だ。後ろ跳びは危険だった。


「どうした? 避けるだけでは勝てないよ?」


 セルジュの挑発だ。


「くそ。攻撃が出来ないばかりに」


 ビッグボアが駄目ならセルジュを狙う。確かにその手もあるだろう。


 だけどあのセルジュのことだ。なにを企んでいるかが分からない。


 正直のところでビッグボアは振り向くのに時間が掛かっていた。


 そこを叩けば楽勝だった。だけど今回は怒りもない。虚しさだけが残る。


「ほら! そうこうしている内にまたきたよ!」


 セルジュは楽しんでいた。従魔同士の戦いは実に愉快だった。


「くそ! 避けるしかねぇ!」


 フェンリルは今度は右に飛んで避けた。それがしばらく続いた。


「ふん。中々しぶといな。なら……これはどうかな」


 セルジュがなんと魔法陣を二つも出現させた。


 すると既に契約済みだったので血入らずでビッグボアが二匹増えた。


「くそ! ただでさえカウンターがしづらいのによう!」


 正直のところでフェンリルのスタミナが尽き掛けていた。


 このままではやられるのも時間の問題だろう。


「フハハ。勝てばそれでいいんだよ」


 セルジュは鬼の笑みを浮かべた。


「くそ。負けたくねぇ」


 フェンリルの言葉も空しく三匹のビッグボアが別々のタイミングで突っ込んできた。


「一つ。二つ。みっ……しまった! チェコ!」


 フェンリルは二匹まで避けれた。しかし三匹目を避けようとしたその時だ。


 背中に乗っていたチェコが落ちそうになった。なんとか耐えた。


「ぐふ」


 そのせいでフェンリルは三匹目のビッグボアの攻撃を避けれなかった。


 吹き飛ばされずに済んだが実に嫌な予感がした。


「今だ! やってしまえ! 俺の可愛い従魔達よ!」


 セルジュが総攻撃をしろと命令した。


「ぐふ。ぐは。ぐほ」


 フェンリルは一度体勢を崩しておりそこから立て直すことが出来なかった。


 だからフェンリルは三匹のビックボアの体当たりを全て喰らっていた。しかもチェコを護りながら。


「フハハ。可愛い従魔達よ。よくやった。後は降伏を待つだけだ」


 セルジュは総攻撃をやめさせた。後は降伏待ちだった。


「可愛いだと? ふざけるな。こんなことをさせておいて可愛いだと?」


 フェンリルは怒りに燃えていた。さすがのフェンリルも限界がきたようだ。


「ふん。風前の灯しが。なにを言うかと思えばそんなことか。僕の従魔だ。それになにを言うのかも僕の自由なんだよ」


 セルジュがまるでゴミを見るような感じでいた。


「ゆるさねぇ。どんなに強くても弱き者を挫く行為はゆるさねぇ。俺が……この俺が……成敗してやる」


 フェンリルがどうやら本気になったようだ。


「ふん! 瀕死の状態でなにを言うんだ! まだしつけが足りなかったのか!」


 セルジュが吠えた。


「うるせぇ! お前だけはゆるさねぇ! 俺の怒りに火を点けたな? いくぞ! セルジュ!」


 フェンリルは言い終わると負けじと遠吠えをした。


「ふん! 吠えたところでお前の劣勢に変わりはない! おい! もういい! 本気で奴を仕留めろ!」


 こうして本気になったフェンリルと本気で殺しにくるであろう三匹のビッグボアとの第二戦が始まろうとしていた。

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