第5話 大蛇と再戦
主人を失った従魔は放置するとどんどん凶暴になり最悪の場合は村を襲うこともある。だから黒従魔になる前になんとしてでも元の世界に戻してあげることが重要だ。
「あ! 待て!」
大蛇は威嚇を終えると地中へと後退し始めた。それはまるで今から逃げますよと言っているような感じだった。フェンリルは大蛇が逃げるように感じたから言った。
「うにゃ? 逃げたのか」
チェコは眠たそうだ。本当はこのまま眠りに付きたかった。好きなモフモフと一緒に寝るのが至福の時だった。これはまるでフカフカのベッドで寝ているような感じだった。
「わからねぇ。ここは様子見だ」
フェンリルはいつでも動けるような体勢を取った。と次の瞬間だった。地響きが起きた。これも地震ではない。きっと大蛇の仕業だろう。その証拠に大蛇がいるところが膨れ上がった。
「おっと! 同じ手はくらわねぇ」
フェンリルは地響きを合図に大蛇との距離を算出した。答えが出た瞬間にフェンリルは後ろ跳びをした。見事に計算は当たっており大蛇の攻撃をフェンリルは避けた。
「おお。お見事」
「へへ。どうってことないさ。さてと……ここからが本番だ。いくぜ」
フェンリルはそう言い終わると眼前にいる大蛇に跳びかかっては噛み付いた。見事な脚力で大蛇の首元に喰らい付いた。
「おお。おお。おお」
チェコは一生懸命にフェンリルの背中にしがみ付いた。放さないようにチェコは踏ん張った。
にしても大蛇は首元を噛まれた割には平然と暴れていた。フェンリルを振り払おうと首をブンブン回し始めた。
フェンリルは負けじと顎に力をこれでもかと言わんばかりに入れた。次第に大蛇の皮に喰い込み始めた。
「モフモフ。助けて」
チェコの言葉も空しくフェンリルは大蛇との戦いに集中していた。
ついには大蛇の首を噛み千切るほどにまでなっていた。
大蛇は苦しそうだ。暴れまくるが無駄な抵抗で終わっていた。
フェンリルはこのままいけば倒せると思った。しかし甘かった。
なんと大蛇が頭と上半身を地面に打ち始めた。首元に噛み付いているフェンリルは地面に叩き付けられた。
その瞬間だ。フェンリルが喉から悲鳴をあげたのは。この時のフェンリルは犬みたいだった。
それでもフェンリルは大蛇の首元を噛み続けた。すると大蛇が力尽きた。ゆっくりと図体が地面に流れ落ちてくる。
「やったか」
フェンリルは大蛇が倒れると思い無事に着地していた。
「うう。吐きそう」
チェコは気分を悪くしていた。折角の背中が台無しだ。
「おい! なんとか倒したぜ! あとは……チェコ。お前の番だ。無事に戻してやれよな」
「うう。分かった。任せろ」
「おいおい。大丈夫かよ。足がフラフラじゃねぇか」
チェコはフェンリルから下りた。すると足がフラフラだった。しかも相当に気分が悪いらしい。
「うー。大丈夫。いける」
「本当か。なら大蛇が回復する前に元の世界に戻してやろうぜ。なぁ。チェコ」
「分かった。やる」
チェコはそう言うと大蛇の前までいった。立ち止まるとすかさず両手を地面に当てるようにした。すると一瞬で地面に大蛇を囲むように魔法陣が形成された。
「おお! こりゃあすげぇ魔法陣だ」
「戻れ。かの場所へ」
と次の瞬間。チェコは親指を噛んだ。元の場所に戻す為には血の契りをしなければいけない。やりたくないでは身勝手すぎる。魔法陣の上に血が落ちた。
すると魔法陣が瞬き始めた。次第に瞬きは強くなり気が付けば大蛇が消え掛けていた。どうやら大蛇は無事に元の世界に戻ったようだ。
これで騒動は終わりを告げた。ちなみにチェコがずっと持っていて大蛇の抜け殻の一部は略奪者から借りた物だった。だから返す為に一旦村に帰ることにした。




