第32話 シルヴィアとセルジュ達の加勢
チェコは窮地に立たされていた。
さっきまでは二対一だったのに今は一対二だ。
チェコの方が劣勢になっていた。
「さぁ。降伏するなら今のうちだぞ? 今なら見過ごしてもいい」
チェコは謎の男の言い分を聴くことができなかった。
なぜならここで認めたらフェンリルとの思い出が水の泡になるからだ。
「嫌。だれか。助けて」
チェコはただただ宙を浮遊していた。凄く寂しそうだった。
「ふぅ。仕方がない。僕は君を倒すしかないようだ。だけど僕は君達と違って紳士だ。ここは一人で挑んであげよう。さぁ。いくぞ」
謎の男はそう言いながらフェンリルから離れて無詠唱で束縛魔法をチェコに掛けようとした。
なぜならチェコには結界が張られていないからだ。
「うー。させない」
チェコは解除では間に合わないと思った。だから特定されないように左右上下に動き続けた。チェコは意外に素早い。
「く。ちょこまかと」
謎の男が苦戦しているのを見て赤い鳥は鳴いた。
「駄目だ! 加勢はするな! く! 独り如きに!」
しかしチェコのしている行為は時間稼ぎにしかならない。だがそれだけで十分だった。なぜなら。
「だれが独りだってぇ?」
セルジュが加勢しようと現れた。しかもそこにはセバスチャンとシルヴィアがいた。
「微力ながら加勢致しますぞ」
「私の可愛い友にそれ以上はさせないんだから。覚悟しなさい」
「馬鹿な? これだから他の召喚魔法師は! 信用できない!」
謎の男は苦言を吐いた。さすがの謎の男も何対二になるかも分からない状態では退くしかないだろう。
「仕方がない。ここは」
謎の男が言い終わると口に指を銜えて吹いた。
すると音が鳴り響き赤き鳥も鳴いた。
そして謎の男の元に赤い鳥が飛んできて赤き鳥の足を謎の男が掴んだ。
「逃げるのか!」
セルジュが吠えた。
「当たり前だ! だがな! これは一時的な退却だ! いずれまたここにくることになるだろう! それでは皆さん。失礼する。さらばだ」
謎の男はそう言い終わると赤い鳥と共にどこかに飛んでいった。チェコ達にとっては苦い出来事になった。
「う」
気分を悪くしたチェコは戦いが終わったと思い地面に下り立った。
「あ……モフモフ」
そんなチェコは流れる走馬灯のようにフェンリルとの思い出が一瞬だけ瞬いた。その瞬間にチェコはフェンリルを思い返した。
「フェンリル」
セルジュがフェンリルの傷跡を見て悲しそうな眼をしていた。
「フェンリル殿」
セバスチャンも同様だった。
「フェンリルちゃん」
シルヴィアもだった。
「解除。する」
チェコがフェンリルに触れるくらいまでくるとそう言った。
言い終わるとチェコは両手をフェンリルに当てた。
するとフェンリルの硬直が解け始めた。
「……う」
フェンリルの束縛魔法は完全に解けた。それよりも。
「いってぇー! だれだ! 俺の傷跡を触ってんのは!」
傷跡が痛かった。
「うにゅ。ごめん」
「チェコ! お前かぁ!」
チェコは素直に謝った。なのに。
「おい! もういい! それ以上は触るな! ばい菌が入ったらどうする!?」
「うにゅ。チェコ。ばい菌ない」
「だはぁー! 嘘をつけ! 俺には分かるんだよ! チェコはばい菌だらけだ!」
「うにゅ! ばい菌。ない」
「ないない詐欺か。こんちくしょー! ああ! 折角ナイスバディなお姉ちゃんが俺を誘ってたのによー! 楽しめなかったじゃねぇか!」
「うにゅ! もう一度。掛ける」
「まぁまぁまぁ落ち着いて。フェンリルも落ち着いて。傷口に触るから」
セルジュが会話に入り込んだ。
「そうですぞ。我々がこなかったら今頃どうなってたことか」
セバスチャンが首を振りながら言っていた。
「本当に……。それとどうして黒従魔退治師がここに?」
シルヴィアの言うとおりでどうしてここに黒従魔退治師がいたのだろうか。謎が深まるばかりだ。
「それよりも今日は疲れたぜ。そろそろ戻りたいぜ。家によう」
「そうはいかない。ここで回復魔法を使おう。多分だけど全員の力ならいける筈だ」
セルジュは言った。すると全員が納得したようだ。フェンリルの傷が治るように全員が回復魔法を掛けた。




