第31話 チェコとフェンリルの劣勢
謎の男が勘違いをしながらフェンリルのところに向かった。
謎の男はじつに余裕そうだった。
それにしても謎の男はチェコが従魔を召喚させてわざと野放しにする黒召喚魔法師に見えたようだ。
「そしてその後に黒召喚魔法師である君も処分するよ。ごめんね。僕は悪い奴が許せないんだ」
「うー。うー。うー」
「さぁ。戻ろうか。元の世界に」
謎の男がフェンリルの前で立ち止まるとそう言った。と次の瞬間。
フェンリルが勢いよく起き上がり謎の男に襲い掛かった。
「うお!?」
謎の男は一瞬の出来事に尻餅を付いて仰向けになった。ふと気付くと謎の男の上にフェンリルがいた。
「悪いな。俺は元の世界に戻る気なんてさらさらねぇんだわ」
「全く。往生際が悪い」
「助けにきてくれたチェコの為にも俺は戻る訳にはいかねぇ」
「そうか。それは……残念だよ!」
謎の男はそう言い終わると人差し指をフェンリルに向けた。瞬間。
いや。その一瞬前にフェンリルは辛うじて後ろに跳んで避けた。
「モフモフ! ……助ける」
チェコは本気になった。するとチェコは一気に真下の魔法陣を塗り変えた。消すのではなく。
「く。その手があったか」
謎の男は悔しそうだ。次第にチェコを封じ込めていた結界が消えていった。
「さぁ。どうする? 二対一だぞ」
フェンリルが言った。
「ふ」
謎の男は吹いた。
「うん? なにが可笑しい?」
「ここからが本番と言うことさ」
次の瞬間。地面に二つ目の魔法陣が浮かび上がった。ほんのちょっと経つと赤く大きな鳥が出現した。
「な!? なんだと!?」
フェンリルは驚いた。
なぜならこいつが噂の黒従魔狩りだろうと踏んでいた。
なのに目の前の奴が従魔を出現させた。
「うにゅ。こいつ。手強い」
「さぁ! 赤き鳥よ! そこの少女を仕留めなさい! 僕はフェンリルを相手にする」
従魔は謎の男の指示に従うと言わんばかりに喉を鳴らした。鳴らし終えると赤き鳥はチェコを認識した。
「チェコ! 気をつけろ! 相手も飛んでいるぞ!」
「おや? よそ見している暇があるのかな」
「く。お前には負けねぇ」
「それじゃあいこうか。第二戦目に」
「ああ。こい」
「では」
謎の男はいきなり飛んでいる鳥に向けて永続結界魔法を張った。
これによりチェコの全ての魔法が効かなくなった。
ただし解除は可能である為にお互いに動き回る必要性があった。
とここでフェンリルが急に謎の男目掛けて跳びかかった。
「さらに」
「させるか!」
フェンリルはそう言いながら身の危険を感じ取り鋭い爪で謎の男を切り裂こうとした。
「残念。近付き過ぎだ」
謎の男はそう言い終わるとフェンリルの結界の中にいると判断しフェンリルに束縛魔法を掛けようとした。
「しまった」
「迂闊だな」
「うう。風。嫌い」
一方のチェコはフェンリルを助けたくても赤い鳥の羽ばたく風によって近寄れないでいた。
仕方がないので耐えながらも解除魔法を赤い鳥目掛けて使用した。消えた筈だ。
「赤き鳥よ! フェンリルはやったぞ! 後は黒召喚魔法師だけだ!」
未だに謎の男は勘違いをしていた。
それにしてもフェンリルは切りかかりに失敗し空中で束縛魔法を掛けられた。
動かない物のように地面に落ちた。
謎の男がそう言いながら赤き鳥の方を見ると赤き鳥は両翼を伸ばして吠えた。
その瞬間。チェコは思った。これはまずいと。
謎の男は二対一から一対二に変えた。一方のチェコはこの劣勢に冷や汗を掻いていた。




