第29話 不仲なフェンリルとチェコ
あれから服や外装を片付けていたら気付けば六時になっていた。
そろそろシルヴィアが晩御飯の準備に入る頃だ。
「まぁまぁまぁ。フェンリルちゃん。チェコも反省していることだし。そろそろ許してあげたら?」
「駄目だ。裏切り者にはそれなりの犠牲が必要だ」
「モフモフ。ごめん」
チェコは素直に謝った。悪ふざけが過ぎていたと。
と言ってもあの時のチェコは本気だった。
今はすっかり反省しているようだ。
「あー! どんなに謝っても許してやんねぇー! ふん!」
「ふぅ~。やれやれ。私は料理を作らないといけないから仲良くね」
「できねぇー!」
「できる」
「いや! なに言ってんだよ? できないもんはできねぇーの」
「うにゃ。信じてる」
チェコは無垢な眼差しをフェンリルに向けた。
その眼差しはいかなる強固な物質でさえ溶かしてしまいそうだ。
「う! そんな眼差しで俺を見るなよ」
「うにゅ。信じて」
「だったら言うなよな。だぁー! ちょっと外で走ってくる。ここにいると気が狂うわ」
フェンリルの調子が狂った。
さらに狂うのは嫌とフェンリルはチェコの家から出て行こうとした。
「うにゅ。残念」
「んじゃあな。チェコ」
「うう。バイバイ」
チェコは涙声になるくらいに追い詰められた。
それでもフェンリルは許してくれそうになかった。
全て悪いのは自分だとチェコは思い始めた。
「あ! フェンリルちゃん! 食事前には必ず戻ってくるのよ? 分かった?」
「ああ。分かったよ。その時までにはここに戻ってくるさ」
フェンリルはそう言い残すと家の外を目指した。
「いいの? 一匹にさせて」
「うにゅ。追えない」
チェコは悪ふざけを後悔していた。だから追えないと判断した。
「そう。チェコちゃんが決めたのならそうしなさい」
「うん」
「それじゃあチェコちゃん。もう独り立ちできるように料理を教えてあげるからこっちにきなさい」
「うにゅ? 分かった」
こうしてフェンリルは外にチェコはシルヴィアに料理を教わることになった。
あれから大分時間が経った。
時刻は六時から九時になろうとしていた。
既に料理はできていた。
「遅いわね。フェンリルちゃん。なにかあったのかしら」
「うにゅ。遅い」
「私はここで留守番したおくからチェコちゃんは探してきたら?」
シルヴィアの提案はよかった。
なぜならチェコもフェンリルが心配だった。
「うにゅ。そうする」
「なら決まりね。もしすれ違いになったら今度は私がチェコちゃんを探しにいくわね」
「うん。分かった」
チェコは軽く頷くと椅子を引き下げて立ち上がり家の外で目指し始めた。
「んじゃいってらっしゃい」
「チェコ。いく」
「見つかるといいわね。フェンリルちゃんが」
「うにゅ。見つけたい。んじゃ」
こうしてチェコは戻ってこないフェンリルを探すことにした。
果たしてフェンリルに起きたこととはなんなのか。




