第23話 セルジュの依頼
朝食に無事にありつけたフェンリルは食べ終えるとセルジュに依頼を頼まれた。
なんでもペットが逃げ出したらしい。
「たっくよ。俺は犬じゃねぇっての」
「モフモフ。嗅げ」
チェコはそう言いながらセルジュのペットが愛用していたヨダレだらけの涎掛けを片手で振ってフェンリルの顔に当てた。
「なぁ。チェコ。実際はお前が一番俺を犬扱いしているよな?」
「うにゅ。それがどうした?」
「それがどうしたじゃねぇんだよ! たっくよ! くっそ~。折角の毛並みがヨダレだらけだぜ」
「シャンプー……ある」
「ああ。もう。分かったぜ。チェコ。家に帰ったらまた洗ってくれよな?」
「分かった。任せろ」
「んじゃまずは癪だがこの汚い涎掛けを嗅いで探すか。クンクン」
フェンリルは嫌な気分だったが鞭を打って臭いを嗅いだ。
「クンクン。……こっちか!」
フェンリルは確かな臭いのする方へと歩を進めていった。
フェンリルがセルジュのペットが愛用していた涎掛けを嗅いでからしばらく経った。
歩を進めていると森の中に入り込んでしまった。
「確かにこっちだと思うんだ。臭いもきつくなってきた」
「うにゅ? そうなのか」
「ああ。そうだ。きっと近いぞ」
「セルジュ。喜ぶ」
「ああ。だがな。俺はこの森は初めてだ。下手すりゃ迷子になるぞ」
「うにゃ。任せろ」
「お? 知ってるのか。この森を」
「知ってる」
「それは頼もしい」
「家で見た」
「……うん? なんだって?」
「地図。見た」
「っておい! と言うことはここは初めて入るのか!」
「うん」
「……方角は分かるよな?」
「うにゃ。分からない」
「んじゃ今はどこにいるんだ? 俺達は?」
「分からない」
「もしかして俺達は既に迷子なんじゃ」
「そうなのか」
「そうなのかじゃねぇよ! 迷子になったら見つけても意味がないだろうが!」
「うにゃ。見つけた」
「え? なにを?」
フェンリルはチェコの指差す方を見た。するとそこには首輪を付けた犬がいた。
「だっはぁー! 俺達が探している犬と似てやがるぜ! ここはさっさと捕まえるぞ!」
「うにゅ。任せろ」
そう言い終わるとチェコはさっさと無詠唱で束縛魔法を犬に掛けようとした。
人差し指が犬に向けられた。その瞬間に犬が固まった。
「お? ナイスだ! んじゃ後は俺があの犬を銜えて帰ればいいんだな? だが無事に帰れるかどうかだな。問題は」
フェンリルはそう言い終わると犬のところにいき甘噛みして銜えた。
ちなみに今は完全に迷子だから無事に帰れるとは思えなかった。
「うにゅ。任せた」
「かぁー! 俺頼りかよ!」
「うう。眠い」
「だぁー! こんな時に寝るな!」
「モフモフ。あったかい」
チェコは言いながらフェンリルに抱き付いた。
しかもチェコはド天然なので寝始めた。
「おい! 寝るなって! ……たっくよ。あーもう! こうなったらやけだ! 突っ走ってやる!」
フェンリルはそう言い終わると本当にどこかに向かって走り始めた。
果たしてフェンリルとチェコは無事に依頼を達成できるのだろうか。