第22話 セルジュ宅へ行こう!
チェコはシルヴィアのお陰で朝食が食べれた。
一方のフェンリルは空腹を紛らわそうと美女との遊びを想像していた。
そしてチェコは食事を終えてフェンリルと共に自宅を後にした。
「うにゃ? セルジュ。どこ?」
「俺が案内してやるよ。だから安心しろ」
「分かった。任せた」
「んじゃ空腹を紛らわすからな。これから」
「うにゃ?」
「全速力で走りたい気分なんだよ。それくらいいいだろ?」
「うにゅ。分かった。我慢する」
「ならとばすぜ! ヒャッハー!」
フェンリルはそう言い終わると急に走り始めた。
フェンリルとチェコはセルジュの家まできた。
果たしてセルジュはいるのだろうか。
「いてくれよ。頼むからな。セルジュ」
じゃないと今にも倒れそうだった。
気晴らしに走ったらもっと腹が減った。
「うにゃ。届かない」
フェンリルがドアに対して真正面を向いているからチェコが手を伸ばしてもドアに届かなかった。
チェコはドアを叩きたかった。
「たっくよ。向きを変えればいいんだろ。変えれば」
フェンリルはそう言い終わると向きを真正面から横向きに変えた。フェンリルは学習したようだ。
「うにゅ。届いた」
チェコはそう言い終わるとドアを叩いた。
「いるといいがな」
フェンリルは言う前にドアに対して真正面を向いた。するとほんのちょっと経ってメイドが出てきた。
「おい! 今日はセルジュはいるか!」
「はい。いらっしゃいます」
「うん? あんたは俺が喋って驚かないのか」
「はい。なぜなら喋るフェンリルと友達になったと噂で聞き存じています」
「そうか。なんとも気恥ずかしい限りだな」
「ところで……今日はどのようなご用件で?」
「今日はな。俺のご飯を売っているところを教えに貰いにきた」
「そうですか。では……大接間までご案内しますのでどうか付いてきてくださいませ」
「ああ。そうする」
こうしてフェンリルとチェコは大接間に向かうのだった。
大接間でしばらく待つとようやくドアが開いた。
「おお! 我が友よ! 昨日ぶりだね!」
セルジュが両手を肩よりも広げて入ってきた。
「おう! 昨日ぶりだな! セルジュ!」
「うん。ところでどうやら昨日のお土産は使って貰えたようだね」
「ああ。お陰でさっぱりしたぜ」
「そうか。それはよかった。あれは超高級品でね。中々手に入らないんだよ」
「ほう。そんないい物をくれたのか。それは有り難いな」
「それで? 今日はなんの用件があってきたんだい?」
セルジュが微笑ましそうに言った。
「手短に言うとな」
「うん」
「昨日俺が食った食べ物だがあれはどこで売ってるんだ?」
「ああ。なるほど。そう言うことかい」
「ああ。そう言うことだ。で? どこなんだ?」
「残念だがあれは君達では買えないだろうね」
「え? なんだって?」
「僕が意地悪なんかじゃないんだよ? でもこれはペット協会が決めたことなんだ」
「なんだか。訳ありっぽいな」
「うん。実はね。ここ最近になって貴族のみが買えることになったんだ。と言ってもその中のほんの一握りだけだけどね」
「なんだと!」
「貴族だって上から下まであるんだ。その中で最上流階級の人。もしくは上流階級の人しか買えないんだ」
「おい。俺はどうなるんだ?」
「あ! そういえば言ってなかったね。従魔もペットの対象になってるんだ。だからばれるとペット協会になにをされるか」
「うにゅ。そうなのか」
チェコはどうやら知らなかったらしい。
「そうなのか……じゃねぇよ。だとしたら俺はすぐに元のところに戻った方がいいんじゃないのか」
「……隠蔽したらばれたときに大変な目に遭うだろうね。ただし一つだけ飼える方法がある」
「なに!? なんなんだ! それは!」
「それはね。僕と従属契約を結ぶんだ」
「従属契約?」
「そうさ。エサ代を僕が免除する代わりに飼うことを許可する仕組みさ。一時はこの制度を利用して付き合うことになった貴族もいるくらいだよ」
「セルジュはそんなに金持ちなのか」
「ああ。僕の父さんは銀行屋だからね。頼めばしてくれると思うよ」
「うにゅ。頼もしい」
チェコは初めてセルジュが頼もしく見えた。
「はは。僕だけでは無理だからね。そこを理解してくれないと困る」
「なら早速そこに向かうことはできないのか」
「そうだね。この件は僕が責任を持って水面下で交渉を行っておこう。なんせ後に大親友になるかも知れないからね。君達とは」
「それは助かる!」
「それじゃあこの問題はまた後ほど。さぁ。お待たせしたね。中に入って朝食を食べていきなよ」
「お? そうだった! だはぁー! またあの美味いもんが食えるのかー! セルジュが心変わりしてくれてよかったぜ! 本当に!」
「ハハ。それは君達の助けがあってのことさ。んじゃ入りたまえ」
「んじゃお邪魔しまーす」
フェンリルは遠慮せずにズカズカとセルジュの別荘に入っていった。
こうしてフェンリルは無事に朝食を食べれたのでした。