第20話 散歩中の風当たり
フェンリルが起きた時には既にチェコは普段着になっていた。
しかもいつのまにか背中に乗っていた。
「うん? 朝か」
フェンリルは朝だと思い外の様子を見にいくことにした。
チェコの家を出ると外は朝だった。
「うーん。いい天気だ。こんな日には身震いがしたくなるぜ。と言ってもできないけどな」
フェンリルはチェコに気を遣った。
「でもまぁちょっとの散歩ならいいよな」
フェンリルの独り言だ。
「そうだ。どうせなら走るか。とその前に準備運動だな」
フェンリルはそう言い終わると準備運動をし始めた。
上半身だけを伏せさせて伸ばす運動をした。
「よし! 準備運動はこれくらいでよしっと! んじゃ走るぞぉ!」
フェンリルはそう言い終わると走り始めた。目指す場所なんてない。
ただ単に走りたいから走る。走るに意味なんてない。
「うう。寒い」
「お? 起きたか」
「ここ。どこ?」
「なぁあにここはまだ村の中だぜ」
「村? どこの?」
「お前の家があるところだよ」
「うにゃ?」
「寝惚けてんのか。チェコ」
「モフモフ。あったかい」
チェコは外気に晒されて寒くなっていた。
だからちょっとでも温かいフェンリルの毛皮に抱き付いた。
「たっくよ。俺は絶対に毛皮だけにはならないからな」
「大丈夫。させない」
「それは頼もしい限りだぜ」
「モフモフ? どこ? いく?」
「どこって……ちょっと散歩するだけだよ」
「うう。散歩よりもご飯」
「っておい! 三度の飯より俺が好きじゃねぇのかよ!」
「うにゃ。一度目のご飯は大事」
「……まぁ確かにそうだよな。あーなんだか。突っ走りたい気分だぜ」
「チェコ。付き合う」
「お? そうか。そうか。付き合ってくれるのか。ってチェコは俺の背中から離れないだろうが」
「それでも……付き合う」
「そうか。ならもっと速く走るぜ。俺はよう」
「うん。分かった」
「ならとばすぜ!」
「うおお。寒い」
「風が当たれば気持ちいいだろう? いかにも生きてるって感じだぜ」
「うにゃ。風。嫌い」
「そんなことを言うなよな。風に失礼だろう」
「モフモフ。あったかい。好き」
「たく。それでも緩める気はないからな。昨日の風呂場の言葉をそのまま返すぜ」
「我慢……する」
「ならもっととばすぜ! チェコ!」
「うう。我慢。我慢」
こうしてチェコはフェンリルの全速力の散歩に付き合わされた。
フェンリルは走っているから温かく風が当たっても気持ちよさそうだった。
一方のチェコはかろうじてフェンリルの毛皮の温かさに助けられていた。
フェンリルとチェコは寒いのに無事に散歩を終えて家路に着いたのだった。




