第12話 チェコ&フェンリル
チェコは既にフェンリルに永続結界魔法を掛けていた。
これは解除しない限りは永遠に結界が張られる。優れた魔法だ。
チェコは宙に浮き終わるとデビルゾアに対して無詠唱で束縛魔法を掛けた。
デビルゾアの身動きが取れなくなった。
「ふん! それくらいなら解除してみせる!」
セルジュはそう言い終わるとデビルゾアの束縛を解除した。
そのお陰でデビルゾアは動けるようになった。
「うにゅ。厄介」
チェコは同時に掛けなければと思った。
しかしそれをするにはデビルゾアが余りにもでかすぎた。
セルジュはデビルゾアの後ろに隠れた。
「フン! 今なら降参してもいいんだぞ!」
「う。やばい」
チェコは同じことの繰り返しになることを恐れた。
「さぁ! 今度はこっちの番だ! やれ! デビルゾア!」
セルジュの掛け声と共にデビルゾアが吠えた。
次の瞬間。デビルゾアの両瞼が見開かれた。
「体。動かない」
デビルゾアは両目に魔法陣を浮かびらせてチェコに対して束縛魔法を掛けた。
「フハハ。これで逃げられまい。さて……終わりだ」
セルジュの不敵な笑みが浮かび上がった。
一方のデビルゾアは動きの止まったチェコに殴りに掛かろうとした。
次の瞬間。チェコは詠唱した。幸いなことに口は動いた。
一体なにを詠唱したのかと言えば当然束縛魔法の解除だ。
ちなみに無詠唱魔法は指先を相手に向けて発動することが多かった。
その為に今は詠唱に頼るしかなかった。
解除に成功したチェコはなんとかデビルゾアの攻撃を避けれた。
「詠唱も使えるとはな。君は……本当に何者か」
セルジュがデビルゾアの背中から出てきた。
「うにゅ? さっき言った」
「いや。そう言うことではない。まぁいい。デビルゾアよ。もっと本気を出せ」
セルジュが言い終わればデビルゾアが叫ぶ。
しかし今回のデビルゾアは一味違った。
なんとチェコと同じで人差し指で無詠唱魔法を仕掛けてきた。
「やばい」
チェコはすかさず人差し指でデビルゾアの無詠唱魔法に対抗した。
チェコは無詠唱魔法の打ち消しを行った。
デビルゾアが人差し指でちょんちょんする度に無詠唱魔法が飛んでくる。
チェコは一生懸命に打ち消し続けた。
これでは埒が明かないと思ったのはデビルゾアだ。
なんとデビルゾアは両瞼を見開いた。
「う」
チェコは再び口以外動けなくなった。
その瞬間だ。口すらも動けなくなったのは。
「フハハハハハ。どうやら決着が付いたようだな。うん?」
セルジュが言い終わる前に既にチェコは地面に落ちていた。
どうやら宙に浮く魔法を束縛される前に解除したようだ。
「馬鹿め。そのまま死ぬつもりか」
セルジュは気付いていなかった。チェコには一匹の仲間がいることに。
チェコは願った。モフモフ。助けてと。
「だれが……馬鹿だって?」
なんとフェンリルが言い終わると落ちてきたチェコを背中で受け止めた。
「な! お前は確か……瀕死の筈!」
「フン! そんなのこいつが治してくれたに決まってるじゃないか。なぁ。チェコ」
「ば、馬鹿な! くそ!」
「たっくよ。無茶しやがって。今度は俺が恩返しする番じゃねぇか」
「フン! フェンリル如きにデビルゾアが倒せるものか!」
「だれが……俺だけだって?」
「チェコ。いる」
「はぁ!? お前は確か」
「分かってねぇな。こいつの結界は触れた魔法を解除する効果もあるんだぜ。覚えておきな。B級召喚魔法師さんよう」
「うるさい。うるさい。うるさい。デビルゾアよ。戯れ言が言えなくなるまで叩きのめせ。これは命令だ」
セルジュの命令に従おうと言わんばかりにデビルゾアが雄叫びをあげた。
「デビルゾアさんよう。主人が無能ならお前さんも無能だぜ。生憎。俺のご主人様は賢くてな。こればっかりは譲れねぇんだわ。さぁ。いくぞ。チェコ」
「うん。モフモフ」
チェコとフェンリルのコンビでお送りするデビルゾアとの第二戦が起きようとしていた。
果たしてチェコとフェンリルは勝てるのだろうか。