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The End of The World 〜one years later〜  作者: コロタン
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第17話 信頼関係

  「貴宏君、手伝ってくれてありがとな!右手がこんなんだから、ある程度慣れはしたけど、服を着るのも一苦労でさ・・・」


  僕が誠治の着替えの手伝いをしていると、彼は申し訳なさそうにお礼を言った。

  彼は革のジャケットを着ているが、左腕の袖にあるジッパーを締める時に、かなりやり辛そうにしていたのが気になり手伝いを申し出たのだ。


  「気にしないでください!誠治さんが来てくれたおかげで、この集落の人達は明るくなりました・・・助かる可能性が出来て皆んな喜んでます!この位の事恩返しの内にも入りませんよ!!」


  僕が笑顔で答えると、誠治は優しく僕の頭を撫でてくれた。


  「貴宏君は本当に良い子だな・・・。俺は必ず君達を守る!皆んなで安全な場所に避難して、早く平和な日常を取り戻そうな!」


  「はい、僕も楽しみです!」


  僕と誠治は、父が戻るまでの間雑談を楽しんだ。

  彼は家族や仲間との思い出を面白おかしく話し、終始笑顔だった。

  僕は、改めて彼が家族と仲間を愛し、何より大切にしている男だと思った。

  彼は、家族や仲間の為に精一杯努力し、どんなに過酷な状況でも、希望を捨てずに生き抜いて来た。

  写真に写っていた奥さんが、彼の事を好きになった理由が分かったような気がした。


  「井沢、皆んなを集めたぞ・・・なんだ、やけに楽しそうだな?」


  皆んなを集めた父が戻り、笑っている僕達を見て首を傾げる。


  「誠治さんの思い出話を聞かせてもらってたんだ!面白かったよ!!」


  僕が駆け寄ると、父はしゃがんで頭を撫でてくれた。


  「そうか、それは良かったな!井沢、俺にも今度聞かせてくれよ?」


  「良いですよ!俺と美希の愛の日々を根掘り葉掘り語って聞かせてあげましょう!もちろん18禁の内容ですよ!!」


  「井沢、子供の前で18禁とか言うなよ・・・それに、何が悲しくてお前の情事の話を聞かなきゃならないんだ・・・」


  父はあからさまに肩を落として誠治を睨む。

  誠治はそれを見て笑って謝った。


  「冗談ですよ!まぁ、あっちに着いたら俺の家族や仲間と一緒に飲みましょう!楽しい奴等ですから、先輩もきっと気に入りますよ!!」


  「あぁ、楽しみにしてるよ・・・じゃあ、皆んなの所に行こう。早く説明しないと間に合わなくなるぞ?」


  僕達は父に促され、皆んなの待つ集会所へと向かった。

  






  僕達が集会所に着くと、皆んなが一斉にこちらに注目した。

  流石の誠治も一度に30人近い人達に注目され、一瞬固まっている。


  「すみません、お待たせしました・・・」


  誠治は深呼吸をし、皆んなの前に立って話を始めた。

  騒ついていた皆んなは沈黙し、彼を見つめて耳を傾ける。


  「皆さんご存知かとは思いますが・・・昨日、私がお世話になっている海上自衛隊の護衛艦と連絡を取ることが出来ました。新個体の出現により救出作戦の練り直しを行い、今朝早くに作戦が決まったと連絡がありました」


  「すぐに救助が来るんですか?」


  話を聞いて、咲の父親が誠治に問い掛ける。

  皆んなも口々に同じ事を聞いた。


  「いえ、すぐに救助をする訳にはいきません・・・救助は自衛隊の輸送ヘリで行いますが、ヘリは音が大きく、奴等を引き寄せてしまいます。それではいくらバリケードで守られているとは言え、新個体が多数現れた場合を考えると不安です・・・なので、まずは攻撃ヘリで奴等を運動公園に誘き寄せ、一気に殲滅します。そして、安全が確認出来次第救助活動に移る予定です」


  「それはどの位時間が掛かるんですか?」


  皆んなは不安そうに誠治を見る。


  「それは状況次第ですので何とも言えません・・・新個体以外は足が遅いので、運動公園に誘き寄せるまでに時間が掛かる可能性がありますから、早くて2日遅くとも4日以内だとは思います・・・。運動公園に誘き寄せる事が出来れば、この集落の周辺の奴等は殆どいなくなるので、数日は安全でしょう」


  誠治の言葉を聞き、皆んなから安堵のため息が聞こえてくる。


  「ご心配をお掛けして申し訳ありません・・・私も自衛隊の隊員達も、皆さんを救助するために最善を尽くします、あと少しだけ待っていて頂ければ助かります!」


  「頭を上げてくださいよ井沢さん!貴方が来てくれなければ、ここにいる皆んなは安心して明日を迎える事が出来ない不安な毎日を送っていました・・・貴方が自衛隊の救助活動の事を知らせてくれて、皆んな希望を持つ事が出来ました!もし救助までに何かあったとしても、俺達は貴方に感謝する事は変わらない!だって、俺達の為に愛する家族を残して危険を冒してくれたんだ・・・俺達は貴方を信じるよ!」


  頭を下げる誠治に、咲の父親が駆け寄って声を掛ける。

  皆んなも笑顔で頷いている。


  「皆さん、ありがとうございます・・・。救助活動が行われるまで、私は全力でこの集落を守ります!ただ、私1人では限界があります・・・皆さんの助けが必要になるかも知れません・・・」


  「わかってるよ・・・お前にばかり負担はさせないさ!俺達の住む場所は俺達で守る・・・それは皆んなも同じ気持ちだ!」


  父は誠治の肩を叩き、皆んなを見る。

  皆んなは静かに頷き、決意を新たにする。


  「井沢さん、作戦決行は何時になるんですか?それまでに何かやっておいた方が良い事はありますか?」


  「作戦決行は正午、ヘリが運動公園に向かう前に、ここの周辺を何度か旋回し、奴等を引きつけます・・・その時大音量で音楽を流すので、かなりうるさくなると思います。それだけは覚悟しててください・・・」


  誠治は苦笑しながら答える。


  「何で音楽を流すんです?ヘリの音だけじゃダメなんですか?」


  「奴等はただの音よりも、音楽や人の声の方が反応し易いんです・・・なので、音楽を流して誘き寄せます。いつも通りのやり方なら、先ずは音楽を流しながら奴等を誘き寄せ、広場にスピーカーを降ろして放置します。スピーカーを降ろしたら、ヘリは護衛艦に戻って燃料を補給します。その後、しばらく奴等が集まるのを待ってから広場に戻り、一気に殲滅する・・・これが普段自衛隊が行なっている作戦です。新個体が引っかかってくれるかが気掛かりではありますが、うまくいけば一回で終わります」


  誠治は皆んなを見渡し、皆んなが作戦内容に納得しているのを確認して笑顔になった。


  「作戦決行までもう少しです。救助まではまだ数日ありますが、皆んなで協力して乗り切りましょう!!」


  誠治の言葉を聞き、皆んなは互いを見合い笑顔で頷いた。


  


  

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